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雑感70:日本アニメ史-手塚治虫、宮崎駿、庵野秀明、新海誠らの100年

大正時代に初の国産作品が作られてから、一〇〇年余り。現在、関連産業も好調で、国内のみならず海外でも人気が高い。本書は、日本のアニメの通史である。一九一七年の国産第一作に始まり、テレビでの毎週放送を定着させた『鉄腕アトム』、観客層を拡大させた『宇宙戦艦ヤマト』、監督の作家性をしらしめた『風の谷のナウシカ』、深夜枠作品を増大させた『新世紀エヴァンゲリオン』など、画期となった名作の数々を取り上げ、その歴史と現在を描く。
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日本のアニメ史の教科書のような本。
1900年初頭から現代にいたるまでの100年を年代ごとにいくつかのフェーズに分けて俯瞰している。

ただ単に年代順に出てきた作品を並べる訳ではなく,各時代の核となる作品を章の中心に持っていきながら,時代背景や周辺の作品を交えることで,その時代のムーブメントを丁寧に語っている。

俯瞰して客観的に当時を評しつつも、時折見せる著者の強い批判が印象に残る。手塚治虫が現代に続く低コスト・低賃金の元凶だという説を強く否定したり、エヴァンゲリオン以降はアニメ史に残るような転換点的な作品が不在だというあたり。この辺のたまに見せる著者の意見がいいスパイスになっている。

とまあ、総じて非常に読みやすい。中身もさることながら、よく練られた構成だなあ、とアニメ史とは関係ないところで感心してしまった。

正直なところ『アトム』が出てくるくらいまでは個人的には少し退屈だったのだが,この退屈の感覚は日本史における縄文時代や弥生時代を勉強している時と同じであり,歴史を学ぶ上では避けられないものだということにしよう。

巻末に索引もあり,読み進める中で気になった作品を後で復習できる点もありがたい。読んだ直後は「あれも観よう,これも観よう」と思うのだが,結局観ずに忘れてしまうんだよな。今回はどうなるか。

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