WAVES OF KUWATA＆YUMING
兄は、桑田佳祐の大ファン
他を認めない
俺は、松任谷由実の大ファン
もちろん、他を認めない
兄の威厳か
松任谷よりも桑田だ
そう言わせたかったんだ
あいつは、そういうヤツだ
音楽のセンスやあやゆるネットワークも
兄は俺に敵わないから
桑田を使って、俺をねじ伏せようとした
3年前、コロナの隙間をぬって
桑田佳祐のライブのチケットを
俺の分まで取って渡してきた
兄の挑戦状だ
それまで、日本各地をまわって
豪華なユーミンのコンサートを堪能していた俺を
訝しんでいたに違いない
ユーミンのコンサートがどれだけ凄いかを
延々と兄に語り続けて
聞き流されたら、DVDを無理やり見せ
どうだと言わんばかりのどや顔で
兄夫婦の家を去ってやった
だから、兄はチケットを俺の分まで取った
間違いない、これは復讐だ
ある年の冬
兄は、松任谷由実がお笑い芸人に提供した曲を
あれはない、と猛烈に批判した
老人が無理やり若さを気取って
あんちょこに作ったものだと言い出したのだ
この時、俺はもの凄い反論をしたかったが
義理の姉に、甥に、姪に、と
兄の車の中で
ひとりアウェイと気づき
まったく反論ができなかった
こいつらに、作曲の抽象度という概念を
うまく説明できなかったのだ
なんという愚行
バカを相手に、両手を上げて降参したのだ
兄も、義理の姉も、甥も、姪も
シドファ#ラ、バカの和音だと気づけず
兄の車にホイホイ乗って
まんまと罠にはまってしまったのだ
そして兄は勝った
あの腐れたスイカみたいな瞼を
全開に見開いて
ルームミラーから俺を見下げたのだ
♫ 影になって by 岡村靖幸 feat.松任谷由実
そもそも
俺に、ユーミンを教えたのは
他ならぬ兄だ
当時、最新のオーディオ機器を持っていた俺に
Delight Slight Light Kissというアルバムを
テープに落とすように命じたのは、兄だ
ばあちゃんのめんこだった俺は
お前みたいにバイトなんかせずに
オーディオコンポをひょいっと買ってもらえた
これは、バカは働けってヤツだと思った
その復讐か
松任谷由実の最新アルバムを
言われた通り借りてきた
借りる時、ジャケットを見て
こんな変なアルバムを聞きたいのか
兄って、心底バカｗ
と思ったくらいだった
だが、家に帰って
コンポにレンタルCDが吸い込まれて
1曲目が音が流れだした時
頭に、稲妻が落ちた
あ、前世でこの曲を聞いたことがある！
と
本気で14歳の子供の脳みそが思ったのだ
あれ以来、狂ったようにユーミンのCDをレンタルし
何度も何度も聞きまくった
あまりの俺の圧に、親は何も言わず
(家に火をつけるとか、恐れたんだと思う)
ユーミンのCDの発売日は
(正確には、発売日の前日にCDは並ぶ)
学校を休んでもよくなった
かつて、病気と仮病以外で
学校に休むと連絡したのは
ユーミンとドラクエとファイナルファンタジーだけだ
(けっこう、理由つけて休んだな)
そして
兄は、俺の最新式オーディオコンポを妬み
聞きたい歌を
テープに落とすよう命令してきた
なんて汚らしいヤツだと思った
その影響か、流行りを聞かず
ちょっとだけ上の世代が聞く音楽に
触れることが多かった
だからか
高校でバンドを組んだ時
サディスティックミカバンドを推して
すごくバカにされてしまった
まわりが、世界で１番暑い夏とか言って
ラブラブなロックで
プリプリプリプリしていた中
Fell Me 君は僕じゃない
とかにいう、訳の分からない
詞の世界に生きてしまった罰だ
君は僕じゃない、当たり前だ
僕は君じゃない、当たり前だ
♫Boys & Girls by サディスティック・ミカ・バンド
さて、時を戻して
2021年、桑田のコンサートに
兄と義理の姉と、俺で行くことになる
医療職の俺は
いっぱい人が集まるところに行った時は
職場に届け出が必要だったから
面倒なので、誰にも言わず、内緒にした
本当は言いまくりたかった
まわりに桑田やサザンのファンは山ほどいたし
どや顔できる数少ないチャンスだったのに
言ったら、PCR検査もせず出勤したと
吊るしあげになるから
一生懸命、内緒にした
コンサートは、めちゃくちゃ良かった
（笑）
桑田は凄かった
本当に凄かった
兄より誰より、めちゃくちゃ盛り上がって
声を出さないでください
なんてアナウンスは無視だ
大声で歌うに決まってるだろ
BAN BAN BAN！だ
コンサートの後
祭りの後
誰よりも興奮した俺を見た
兄と義理の姉が
そらみたことかと俺を見ていた
く、く
悔しい
ゆ
ゆ
ゆ
許せん！
と、兄夫婦は一生許さないと
決めた
♫ YOU by サザンオールスターズ
サザンで1番好きな曲
これいい曲だよね
じゃーねー
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