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Open Your Eyes

月曜日、8:02.am

息子:
ね、ねぇ、お母さん、俺じゃ無理だ
コンタクト入れてくれる?

昨日、息子がコンタクトが欲しいと言った
小学校の時から
眼鏡をしなさいと言っていたのに
カッコ悪いから嫌だと言って放置していたのだ

中学に入り、いよいよ見えないことが
ハンディになっていると悟ったのだろう
妹がコンタクトにしたのを機に
俺もしてほしい、と懇願してきたのだ

昨日の日曜日

眼科の看護師:
お母さん、15分かけて
コンタクトレンズをつけられない場合は
次回、また受診となります

そりゃそうだろう
目は、脳神経が集中しているのだから
装着に失敗して、恐怖を体験したら
反射レベルの反応が亢進する
そうなったら、装着はまず無理だろう

眼科の看護師:
いい?いくよ、しっかり目を開けていてね

息子:
う、うん

遠くから、顎を上げた息子と
必死で目玉に
コンタクトレンズを入れようとしている
看護師を眺めていた

右目をこじ開けられると
左目が力いっぱい瞑る
左目をこじ開けられると
右目が力いっぱい瞑る

眼科の看護師:
〇〇君!
白目じゃコンタクトが入らない!
こっち見て(笑)

こ、こりゃ、無理だ
かれこれ15分は過ぎてるだろう

眼科の看護師:
あ!惜しい
どうして左むいちゃうのぉぉぉ

さっきよりも
看護師にこじ開けられている
眼輪筋のシワが深くなっているところを見ると
相当、力比べになっているだろうと予想がつく

息子は、私に似て
極端なほどに、不安症なのだ
そんな息子が
目を触られるなどという行為を
許すはずがない

ものもらいの時
点眼薬を一滴も点せなかったのだ
点眼薬すべて
その眼輪筋のシワを流れていった

息子:
あは、あは、あははは

あげく、チラッとその目に映る
必死になっている看護師を見て
笑いだしてるのだ

点眼薬の時と一緒だ
あの時も、必死になっている母親を
口開けたまま笑っていた

眼科の看護師:
うぉいッ! やった入った
よくやったわ〇〇君

どのくらいオーバーしたのだろう
看護師の努力が実り
何とかコンタクトレンズを
装着するとことができたのだった

その日曜日、8:47.pm

母親(わたし):
ねぇ、明日の朝、忙しい中
コンタクトできないとか嫌だから
寝る前に練習してよ

今後は、自分で装着しなければならない
そりゃそうだ
コンタクトレンズなのだから

だが、息子は目に触れるという
その恐怖から、反対の目を必ず瞑ってしまう
これだと、鏡でコンタクトレンズの位置を
目視できないので
いつまで経っても装着できないらしいのだ

つまり、息子には
コンタクトレンズの適正がないのだ

息子:
俺はぁ、今日はやるべき以上にやったから
これ以上は無理なんだ
明日になれば、できるよお母さん

はじまった

息子の浅すぎる現実対応能力
ゲームで言ったら
攻撃力0というやつだ

わたしは、明日の朝の
息子の奮闘を予想し
気が遠くなるように、眠りについたのだった

月曜日、8:06.am

母親(わたし):
黒目が左に逃げてる!!!

案の定、白目合戦に巻き込まれた
わたしは15分後に
仕事に行かなければならない
朝食の皿を洗ってない
ゴミの始末が残っている
トイレで人知れず
大便もしなければならないのだ

それなのに息子ときたら
バカみたいに口を開けて
無理やりこじ開けられた左の黒目が
限りなく左側の目じりに隠れている


左を見、過、ぎ、だ、ばかやろー

コンタクトレンズをはめる黒目が
1/7しか見えない

母親(わたし):
ねぇ!ちょっと真面目にしてよ

息子:
あは、あはあは、あははは

わたしが真剣になればなるほど
笑い出す、アレだ

息子のアレは、こういう時
心底、腹が立つ

朝の急がしさと
昨日練習しろと言ったのに
平然と無視しやがったその浅はかさに
頭がきてしまい

母親(わたし):
フッ!!!

息子:
痛ッ!
痛いよ、お母さん

わたしは、息子の白目に
思い切り息を吹きかかてしまったのだ
途端、息子が後ろに逃げてしまい
こじれにこじれまくってしまった

これは、もう無理だ
何をしても、反射がおさまるまで
目玉に異物など入れることはできない

母親(わたし):
あぁぁぁぁ、もう無理
今日は、つけないで行きなさい
もう時間ないから、無理なのよ無理

息子:
ええええええええええええええ
つけてよつけてよつけてよー

なんなんだコイツは
恐ろしく、面倒くさい男だ
この軟弱モノめ

どう考えても
大便は無理だと判断したわたしは

なだめてみたり
怒ってみたりして
グズる息子を無理やり登校させて
食器だけはとキッチンに向かったのだった

チキショウめ、息子

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