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【小説】海上の少年 一巻

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 「海上の少年 一巻」   屑屋 晶


少年はひとりで生きているわけではなかった。

彼にはジョンという飼い犬がいたし、また、庭にはピッケルという名前をつけた鳩も飛んでいた。


そんな彼の生活はこんな風だった。          

雨の日は木の家でシュガー・トーストを焼き、既に甘ったるいそれに、更に上から苺ジャムを塗り付けて食べた。

 少年は甘党であった。
これにホイップクリームも絞ったら、もっと最高だろうなと考えていた。

そんな甘党少年が晴れの日にすることと言ったら、ピクニックが定番だ。

 彼のピクニックは、ただ単にシートを広げて、用意してきた、とっておきのフードを食べる、というだけではない。

彼のピクニック。それは「海上」で行われるものだった。少年はこの「海上のピクニック」で、魚釣りをしたり、航海士の気分になったりすることを楽しむのだ。

 少年の木の家は、崖の上に建っていた。
二階のベッドルームの大窓から(二階建ての小ぶりな家である)、朝日が昇り、夕陽が沈む海を眺むることが出来る。 

 その海に手製の船・・・とはいえ、少年は船の設計の知識などは殆ど持ち合わせていなかったので、取敢えずなんとなくで形にしてみた木の塊に過ぎないが、家の周辺から搔き集めてきた流木の数々を用いて、イカダのようなものを作成した。

 さて、これはもれなく少年のお気に入りの船となった。

ボロいが、素材となる木はきちんと厳選に厳選を重ねたものだし、なにより少年自身の力のみで、右往左往しながら何十にもわたる試行錯誤の末にやっと出来上がった船だからだ。

 少年は誇らしげに汗を拭い、その小船に名前をつけた。

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