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レーベルサービス研究:AWAL/Amuse

AWALは、Artist without a labelの略で、Kobalt(世界の主要なデジタルサービスとは直で契約を結んで、今まで間に入ってもらってた現地の著作権管理団体とか通すの、だるくね、という斬新なコンセプトの音楽出版社。世界の音楽著作権をサブパブリッシャーなどを通さずに一元管理する革命児。)の傘下でサービスを展開しています。”レーベルがない(いらない)アーティスト”という会社でレーベルサービスを提供しているという一見難解なレトリックを含む会社です。

AWALはデジタル流通としても数万のアーティストの楽曲を預かっているデジタルディストリビューターでもあるのですが、社内A&Rが音を気に入って、かつ実績が出始めてきたアーティストに50%スプリットなどの条件でレーベルサービスを提供するというオーディション的要素を持っているのが特徴です。

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AWALに音源を登録すること自体、TuneCoreのように誰でも出来るわけではなく楽曲をSubmitして審査を通る必要があります。最初からオーディション形式を取ることで意識あるアーティストが集まりやすい、自然とふるいにかけられるシステムになっているのが肝な気がしました。

AWAL Coreはふつーにデジタルディストリビューター(優れてはいます)で、そこから少数選ばれたアーティストがAWAL+でサポートを受け始め、AWAL Recordingは投資などのオプションも含むいわゆるフルレーベル機能と段階が3ステージに設定されています。

AWAL Recordingsには、LAUV, mxmtoon, Little Simzなどが契約し、過去にはRex Orange CountyやTom Mischもここからキャリアを発展させました。以下にAWAL+, Recordingのプレイリストを貼っておきます。

AWAL Coreの登録アーティストになることは実はそんなにハードルは高くないと思います。日本語曲で試したことはないのですが、最低限のSNSチャンネル運営とデジタル流通、サウンドプロダクションを行っていれば門戸はかなり開かれています。

そこからAWAL+にピックアップされるには、というFAQが登録者には公開されているのですが、”ある程度のフォロワーにSpotifyなどで成長すれば、AWAL A&Rがコンタクトをすることがあります”といった書き方になってまして、(ちょっと嫌味に言えば)”おいしいとこ取り”をするシステムですね。音がいいから最初から一緒に歩いていこうなんてセンチメンタルなことは言ってくれない感じです。ビジネス的には非常にわかりやすい形なのではないかと。

近い形で、レーベルサービス機能がオプションとして備わっているディストリビューターとして、Amuse.ioというサービスがあります。

AmuseのトップコピーはAWALよりはストレートで、インディペンデントのレーベルと音楽ディストリビューターである、と説明されてます。

Amuseの特徴は、流通手数料が¥0で始められるプランがあるというところ。リリースまでの期間が4週間かかってSNS系へのライセンスが含まれないという違いだけで配信は全方位で行うことが可能。年額$19.99(現在のキャンペーン価格)で流通としてフル機能が使えます。それでも、とにかく激安ですね。*AWAL手数料は15%

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この流通を使っているアーティストの中で実績がでてきたら、Amuseから50%50%で一緒にやらない?と声をかけられることがあるのがレーベルサービス。

レーベルサービスに含まれるとされているのは、戦略プランニング、プレイリストピッチ、アーティストプランニング、デジタルマーケティング、ラジオプラギング、アーティストPR

[追記]また印税のアドバンスとして$250 – $300,000が支払われるオプションがあるようです

また契約期間終了で更新しなかった場合には権利はアーティストにすべて戻すという良心設計。レーベルとして一緒にやっているアーティストには、Adel, Mapei, Mabesなど(AWALに比べると知名度が低いかもですね。とはいいつつ1億ストリーム到達アーティストたちです)。

いずれのサービスもアーティストデジタルディストリビューションとしての基本的機能が優れていることは言うまでもなくの大前提で、その先に、レーベルディールを持っていない(マネージャーや海外だと弁護士は雇っているかもしれない)ポテンシャルあるアーティストを直接サポートするレーベルサービスは最近のトレンドといえるでしょう。

ここ日本でもfriendship.などのサービスが出始めていますので、TuneCoreなどで配信をはじめたけどネクストステップに進みたいと思うアーティストが増え始めていることへの回答ではないでしょうか?アーティスト側目線としても権利を可能な限り自らコントロールできた方がいいわけで(所謂メジャーレーベルのメディア・プロモーション力、有能なA&R(一部に限られます)が必要なアーティストもいるとは思います)、流通を選ぶ際の選択肢のひとつになっていると思います。

一つ注意点としてつけくわえるならば、めちゃめちゃ目立つまでは自分(たち)でオーディエンス(リスナー、フォロワー)を増やしていかねばなりませんので誰かに任せたいという気持ちがある人はそもそも向いていません!

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