雨は降らないと聞いていたのに

　旅の楽しみのひとつは宿である。立派なホテルに泊まる必要はない。個性的なゲストハウスに泊まれればいい。とってもオシャレなところから，とっても汚いところまである。いずれもそんなに値段は変わらない。時期とか場所とかによるけれど。
　週末バックパッカーとでも言うように，平日は懸命に働き，週末は1泊でどこかに出かける生活を送っていた。そんな日々から離れてかなりの年月が経った。「かなり」の感じ方は人それぞれだろう。だからぼくにとっての「かなり」です。
　今月はそんな日常が戻ってきたような過ごし方だった。そうはいっても毎週旅に出ていたわけではない。今月の週末内訳は旅，試験，試験，旅だ。現在旅先で文章を書いている。雨は降らないと聞いていたのに，窓から見える道ゆく人はほとんど傘をさしている。たまにさしていない人もいる。いつかはやむだろうと時間を過ごしていたが，傘をさす人が増えてきてしまった。もう少し座っていよう。

　今月は珍しい宿に泊まらせてもらっている。1階がカフェで2階がゲストハウスになっている。チェックインはカフェで済ませて，宿泊客だけ奥に進める。特別な客みたいだ。初めてきたのにVIPに通されるようだ。1階がカフェになっている分，ゲストハウスの方も趣がある。落ち着く空間である。
　かつて沖縄で泊まったゲストハウスは私史上最も安かった。3桁円で1泊した経験はそれ以来ない。そこのシャワーはヘッドが急に取れた。それはそれで趣があった。
　さて，カフェの上のゲストハウスに泊まる利点は，時間を潰す場所に困らない。階段を降りればいいだけだ。家ではないけど，家にいるみたいな行動だ。未知の土地なのに，安心感を持って過ごすことができる。そして眠たくなってきた。

　まだ雨は止まないみたいだ。