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RPGにおけるサブクエストはおつかいにならざるを得ないのか?

書こうと思い立ってからかなり時間が経過してしまったが、実はFF16をクリアしていた。ゲーム体験としては楽しめたのだが、今回の本題はそこではないので細かいところは割愛する。本題は表題の通り。

今も昔もRPGのお約束要素の一つが”サブクエスト”だ。この呼称が定着したのがいつからかわからないが、概念自体は黎明期から存在していただろう。

まずゲームのメインストーリーである”メインクエスト”はエンディングを迎えるために必ずクリアする必要のあるものだ。対して”サブクエスト”は、エンディングを迎えるための必須条件では無い「別にやらなくても良いこと」くらいの認識で良いと思う。

ゲーム内で使用できる武器やお金といったリソースや、キャラクターやスキルが強化される、はたまたエンディング分岐の条件になっていたりなど様々な報酬が得られるようになっているものが近年は多く感じる。

そんな昨今、あなたも一度くらいは聞いたor感じたことが無いだろうか。

「このゲームはサブクエが”おつかい”ばっかり」

爺さんの具合が悪いから薬草を取ってこいだの
橋にモンスターが居座ってて隣町に行けないから倒してくれだの
迷子の犬を探してきてくれだの
故郷の家族に仕送りのお金を持って行ってくれだの
世界に散らばった呪いの装備を浄化したいから集めてくれだの

そういった類のものである。

手に入る武器やスキルのためにしょうがなく……
依頼を3つ終わらせないとメインストーリーが進まないから仕方なく……
トロフィーコンプリートのためにやむを得ず……

やらされる(と思わされてしまう)類のものである。

FF16もサブクエストは退屈なものが非常に多く「おつかいばっかりだったな」と感じた。ではなぜ退屈だったのか?理由を考えているうちに「サブクエは絶対に”おつかい”にならざるを得ないのでは?」「やっていることは”おつかい”なのに楽しいと感じたことがあるのは何が要因なんだ?」という2つの疑問が浮かんできた。

自分なりに考えてみた答えが出たと思うので、記録として残す。


◆大前提を考える

RPGのゲーム内でプレイヤーが能動的に起こせる行動は概ね下記6つである。
・マップ上でキャラクターを移動させる
・NPCに話しかけるorオブジェクトを調べる
・キャラクターの装備やスキルを変更したり成長させる
・アイテムを入手するor渡すor使用する
・専用のミニゲームなどをプレイする
・敵と戦う

サブクエストどころからメインストーリーですら上記の行動をプレイヤーに起こさせることの繰り返しで成り立っている。

◆仮定

メインストーリーが面白いのにサブクエストが面白くないと感じるのには、プレイヤー側がどの手段でどの程度介入出来るかという部分や、アイテムやスキルといった報酬はあまり関係ないのでは?

◆つまりどういうことか?他のゲームを参考にする

プレイヤー側の行動に対して戻ってくるものとして、キャラクターや世界や設定の新しい一面を見るor感じることが出来るかどうか。更に想像の余地を残すものかどうか。またはプレイヤーの感情を揺さぶるものであるかどうかが大事なのでは?メインクエストにはそれがあるのにサブクエストにそれが無い場合に「おつかいをやらされている」と感じるのではと考えた。

ここで「面白いサブクエといえば」で万人が例に上げるであろう龍が如くシリーズであるが(※諸説あります)、ではなぜ面白いのか?を自分なりに分析していきたい。

それはチャット違うかな……

龍が如くシリーズは任侠モノであり、人の欲望や生死に関わる描写が常にまとわりつくシリアスな(※諸説あり)メインストーリーが展開される。主人公の桐生一馬やその仲間たちもそれに巻き込まれる中で、友や愛する人を失うなど、あらゆる手法で悲惨な目に遭わせられることになる。

だがサブクエストやミニゲームでは一点、
・小学生の子供に混じってミニ四駆のようなおもちゃで全力で遊ぶ
・大切に育ててるザリガニが逃げたと言われ、探してきたら食べようとしたため可哀想なので引き取る
・ビルの上の階で赤ちゃんが泣いてるみたいだから助けましょう!と通行人に頼まれ粉ミルクとタオルを用意して向かったら極道たちが赤ちゃんプレイを楽しむお店だった
・知り合いの刑事から「今時間大丈夫ですか?手伝ってもらえませんか?」とメッセージが来てコンビニでプリペイドカードを買わされる
・テレクラにかかってきた脅迫電話で「お前の息子がどうなってもいいのか?2000万用意しろ」と言われ「2000万でムスコがいい感じになるのか?」とアンジャッシュのコントじみたやり取りをする

などなど、極めてメインストーリー時とかけ離れた雰囲気やキャラクター同士のやりとりを楽しむことが出来る。素っ頓狂な展開から最後にメロディアスなBGMを流して「またいい話っぽく締めようとしてる……」「もうええてw」となるのも最早お決まりである。

かわいい

メインストーリーが逆境をバネにして最後に一気に逆転させるというカタルシスのため重く苦しく設計されているのに対して、サブクエストは非常にポップでコミカルなものが多い。あまりのバカさ加減に脱力して笑ってしまうような出来事やキャラクターや、主人公やその仲間の新たな一面が見られるのが一番楽しいと思えるのだと考える。

何も変なことは言っていないのになぜか笑顔になってしまう

直近でパッと思いつく他のゲームだとMARVEL:SPIDERMAN、Ghost of Tsushima、GhostWire:TOKYOなどもサブクエストが楽しいゲームだった。

SPIDERMANは決まったサブクエというよりも街中をグライドしてたら突発的に起こるランダムイベントのようなものも多く、まさに「俺いまスパイダーマンしてるぅ!」というキャラクターとの一体感を感じることが出来た。

やっぱり移動が楽しいゲームはそれだけで最高ですね


Ghost of Tsushimaはおちゃらけサブクエは無いに等しかったが、メインストーリーで対馬に住む人を助けたいという気持ちや蒙古に対する怒りを仁と一緒に感じてきて、その中でもたくましく生きる人達の確かな息遣いを感じるサブクエが多かった。「こんな状況でも、人間ってこうまで自分本位に生きられるのか……」という哀れみすら感じるものもあった。

石川先生は尊敬できるところとできないところの
差があまりに激しすぎる(画質悪くて失礼)

Ghostwire:TOKYOもサブクエストが豊富でとても楽しかった。メインストーリーは少し短かったかな?と感じたが、それを補ってあまりあるサブクエストの多様さには舌を巻いた。成仏できなかった霊からの頼み事が大半なので本質的には「おつかい」なのに、まったくそんな気持ちにさせられない。

都市伝説ネタもあり楽しい。KKが居てくれるのも大きいかも。

◆結論

サブクエストに「おつかい感」を感じるかどうかは、キャラクターや世界観の理解が深まる要素、もしくはそれらに対して想像を膨らませることのできる要素が組み込まれているか次第で決まる。

◆例えばどういうことよ

上の例であげた「爺さんの具合が悪いから薬草を取ってきてくれ」というサブクエストがあったとすると、どんなゲームであっても
・所定の場所まで取りに行く→薬草を手に入れる(戦闘がある場合も)
 →依頼者に渡す→報酬を受け取る
という大まかな流れは変わらない。

きっとクリア後にお金やアイテムを貰えたり、あとで尋ねると爺さんが元気になったところを見られるとか、その爺さんが更にお礼でなんかアイテムくれるとか、そのへんはどんなゲームでも考えられるだろう。ただこれは本当に"サブクエストの報酬"の域を出ずプレイヤーの感情を揺さぶったりキャラクターの深みを感じられない。では、どのように他の意味をもたせるか?

・道中で「あの薬草で作る飲み薬めっちゃ苦手なんだよな」「昔からお前言ってたな。おっかさんに無理やり飲まされてたの思い出すわ」というような幼馴染同士の会話を聞くことができる→キャラクター掘り下げ
・「今はもう魔法使うのが主流なのになぁ」「治癒魔法は怪我は治せても病気には効きにくい。研究は進んでいるみたいだけどな」というような会話がある→世界観の掘り下げ&「へぇ~」感情
・それを聞いた普段ほとんど喋らない無口でクールなキャラが「どちらかと言うと俺は好きだ。なんなら飲み物は全部これでもいい」と発言して周りのキャラが驚く→キャラクター掘り下げ&「そんなに!?w」感情

序盤ならこれくらいでも良いと思う。これだけでキャラクターの解像度が上がり深みが出る。またそのサブクエストをクリアしているとこういったことがあってもいい。

・ショップで薬草を購入すると、たまにクール無口キャラが「飲み薬は作らないのか?」と聞いてきて「いや飲みたいのお前だけだから!」という掛け合いが聞けるようになる→「いやそんなに!?w」感情
・故郷の母親を尋ねると「飲み薬は一人で飲めるようになった?」「その話はもういいって!イジり倒されたから!」というやりとりが聞けるようになる→「もう許したれw」感情

こういうご褒美があるゲームがとても好きだ。ストーリーを進めて敵を倒すだけなら一切必要のない要素だが、やはりRPGゲームを遊ぶ以上はキャラクターや世界観を理解したいと思う。

◆FF16はどうだったか

オットーやガブが絡んでくれるサブクエは良かったと思う

FF16は基本的に街でサブクエストを受ける→終わりにアイテムと一緒に街の成り立ちや近況を説明する に終始したものが特に序盤は多く、新しい街に行くたびに「またかよ……」と思いながらサブクエストをこなしていた。街の成り立ちをセリフで全て説明してしまっているのが非常に勿体無いと感じた。

翻って、終盤にとある施設の手記を調べたり、亡くなった蒐集家の自宅の歴史書を調べるクエストがあり、これは楽しむことが出来た。ゲーム世界の歴史を「もしかしてこうだったのかも」と想像する余地が残されていたからだったと思う。

主人公クライヴや周りのキャラクターの掘り下げもほとんどされない上に、少し掘り下げ(昔一緒にここに来たよねとかいう話があったり)があっても印象にほとんど残らない。

正直メインストーリー視点で見るとタイタン戦が最もプレイヤーの感情として盛り上がるところで、その後は消化試合と言われても仕方ない展開が続くのも良くなかった。中盤までは「風の大陸とかモーグリの生体とかどうなってんのかな、行けるようになるんだろうか」とか考えていたが、終盤あまりに話の主語がデカすぎて「もうええか……そんなこと言ってる場合ちゃうな……」となってしまった。
ZANTETSUKEN使えるようになると戦闘は一層面白くなるんすがね……

結局なんで居るのかよくわからないクポね……

◆FF16だったらどういうのが欲しかったか

ほぼ常に世界が大変なことになっておりクライヴはその渦中にいるので、おちゃらけサブクエストをさせるのは難しかったと思う。だが、やはり絶望的な世界観だからこそ希望を持って力強く生きるというところをクライヴに見せてほしかった。ミドのわがままにクライヴやジルが色々振り回されて
「大変だったけど、楽しかったわね」
「そうか?俺はしばらくあの工房に行くのも億劫だよ……」
「でも、こんなくだらないことで笑い合ったり軽口言いあえるのって、"普通"のことじゃない?これこそ"人が普通に生きていける世界"だと思う」
「そうかもな……まぁ、しばらくは勘弁してもらいたい」
みたいなサブクエがさぁ、もう少しあってもいいんじゃないですかね?

街それぞれにいろんな人が住んでる感を出したかったのだろうけど、どうせならバイロン叔父さんがもっと長い期間着いてきてくれて、昔クライヴと一緒にその街に来たときの話とかを聞かせてくれるとかが良かった。

トルガルと叔父さんのイベントもっと欲しかったよ俺は

◆おわりに

ここまでお読み頂きありがとうございました。
自分で「サブクエおつかいばっかりでなぁ」と言ったときに「おつかいじゃないサブクエって何だ……?」と疑問に思ったことから今回の記事を書きました。あくまで自分で自分が納得出来るって理由で出した結論なので、人によって正解は異なるでしょうが、本質的なところはそこまで外してないんじゃないかな?と思います。万が一同じような疑問やモヤモヤを抱えている方の一助になれば幸いです。

龍が如くは7外伝も8も出るし楽しみですね。買ったら絶対プレイします。
スパイダーマンもやっぱり気になるし買おうかな……
しかし自分はなんか面白かったゲームを褒める記事みたいなの一個も書いてねぇな……

それでは。

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