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変化というもの、それから小さな私

なんともお久しぶりの更新になってしまった。
色々と環境が変わると、すぐに立ち止まってしまう。
もともと変化に対応するのがへたくそな自覚があったのだが、とっても苦手だったのだと自覚し直した。
いや、自分に正直になった、というのが正確な言い方だ。



 昔から、いつも何かの節目にはおかしな行動をとっていた。
 2つ目の幼稚園に転園する前に、行動テストのようなものだったのか入園予定のこどもと保護者が幼稚園の教室(遊戯室という名の、ピアノだけおいてある何もない体育館のような部屋)に集められたことがあった。
 その時にはすでに私は別の幼稚園に通っていたのだが、どうにも馴染めなかったらしく転園することになっていた。
 前の幼稚園の記憶は断片的で、障害のある子に妙に気に入られて、私のおもちゃをことごとく横取りされたことや、幼稚園の制服が大嫌いだったけれど、正装の帽子についていたタッセルが大好きで毎日この帽子をかぶらないのかしつこく聞いて母を困らせたことなんかは覚えている。
 あの帽子は、本当に大好きだった。博士みたいでかっこよかった。
(アメリカの大学の卒業式でかぶっているようなやつだ)
 とにかく、そこが新しい幼稚園で、周りにいる子は新しい幼稚園のこどもというのは認識していた。
 ただ混ざれなかった。
 なぜか、そこにいた多くのこどもたちはぐるぐるとその教室を一方向に走り回っていた。
 理解が出来なかった。
 もちろん、かけっこやら鬼ごっこやらだったと思うのだが、各々のペースで、それぞれの知り合いのこどもとわらったりふざけていたりしながら走っていたのだが、それがひどく奇妙に見えた。
 なんでこの子たちは、みんな同じ方向に走っているんだろう。
 そんな決まりを言われたわけでもないのに。
 どうして知らない子がたくさんいるのに、気にせず入って行けるのだろう。
 ただ同じように走り回ることの何が楽しいんだろう。
 私は困惑して混乱していた。
 それで、輪の外、壁際で談笑する母の足元に座ってただぼんやりとそれを見ていた。


初めての環境には小さい頃から、警戒心と観察力が大いに働き、馴染めなかった。
そのあとも何をやらかしたのかは覚えていないのだが
(あるいはやらかすべきことをやらかさない子供だったのかもしれないが)
大人になってから聞いたら、先生たちからは障害を疑われる子供だったらしい。
今思えば、小学生入学前に、好きな食べ物を聞かれてレタスと言ったのが良くなかった気がする。
あの時の、大人の変な顔や好きな食べ物というのは、と解説されて何度も同じ質問をされたことは不思議とよく覚えている。
何か変な答えをしたのかと考え直して、答えたのがキャベツの芯だったのも良くなかったかもしれない。
こどものころの鋭敏な味覚で感じていた、キャベツの芯の甘さが私は大好きだった。


 小学生になってしばらくすると、今度は帰れなくなった。
 もちろん、家に帰りたくなかったのではない。
 トイレが心配で家に帰れなかったのだ。
 私の家は、私の小学校の担当区域ぎりぎりで、六歳の足にはとても遠かった。
 だから、漏らさないか不安だった。
 そして考え始めると不安で、授業中すら漏らさないか不安で仕方なかった。
 休憩時間はほぼトイレに居たし、下校前にトイレに行って教室に戻りを繰り返し、最終的にトイレに籠って泣いたりした。
 先生が付き添ってくれて帰り、仲のいい子が自分の家のトイレを貸してくれたり、最終的には母親に、とにかく漏らしてもいいから帰ってこいと言われたりした。
 帰ることに集中するあまり、上履きのまま帰ったり、ランドセルを忘れて帰ったこともある。
 入学して慣れるまでの間、私は授業中は大人しく、比較的優秀な部類のこどもだったと思うが、下校時間になると問題児だった。


今思えば、そんな風に大きな環境の変化のあとは何かしら、奇妙な行動をしていた。
変化のストレスだったのではと思う。
中学、高校、大学、と振り返れば大なり小なり。
いや、小学校のことを思えば、ほぼ小なりの奇妙な状態や行動だったけれど、変化が起こるとそういう状態になっていた。

イキモノなので、安心していた環境が変わればもちろん多少ストレスを感じるのは当たり前だと思う。
もしこれがサバンナでの生存競争だとしたら、環境の変化はそのまま命に直結する。
けれど、残念ながら、まったく変化がないと私という我儘な人間は、退屈だとぶつぶつ言いだす。
だがしかし、大きく変化が起こると、いやちょっと待って、と平気な顔を装って不調に陥るのだ。

困ったものである。
だが、この不調ばかりは努力ではいかんともしがたく。
お目汚しながら、どうにかせねばと思いつつこうしてぶつぶつと言わせていただいている。

春が来る。
美しく温かい季節が。

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