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真面目に画像生成AIの活用に取り組んでみる話

昨今話題の画像生成AI、情報を流し読みしているだけでもこりゃすげーやという気持ちが沸々と高まってきますね。
やれることが格段に増えることは事実であるものの、実務や商業デザインでどのような活用方法があるのか模索している方も多いはず。
今回はAdobe Fireflyを利用したPhotoshopでの素材写真の制作過程について公開したいと思います。


導入の背景

我がakippa社は駐車場シェアリングサービスを運営している会社のため、「車」や「駐車場」に関する素材が必要な機会が多くあります。
ストック素材などで写真を選んでいると、「車」はまあマスな表現対象かなーと思いますが、一方で「駐車場」についてはマイナーな被写体だよなーと感じることが多いです。
イケてるロケーションにイケてる外車を置いちゃってイケてる仕草のイケてるモデルにイケてる光線を当てたイケイケ写真はあっても、イケイケ駐車場の写真っていうのは想像が難しいし、そもそもイケてる駐車場ってなんなのさってなもんです。

そもそもイケてる写真が正義かというとそういうことではなく、作り込みすぎた現実離れした美しいシーンではなく、日常的でリアリティのある表現が望まれることが多いです。さらにいうと使用箇所の文脈にも沿っている必要があり、それらをうまく解消できないと、いわゆる「素材っぽいっすねー」というやつが発生します。

デザイナーの皆さんなら共感いただけるのではないでしょうか、「うわーここにちょっと写真入れてぇなー」の気持ち。
「長い説明文の頭ににちょっと写真があったら内容が想起できて読みやすいのに」「こんな写真があったらこの文章丸っと不要なのに」。
そういった「ちょっと入れたい写真」、これらは前述の理由で選定コストがバカにならんのが現実なわけなんですが、そこに現れた新たな選択肢「生成AI」。まさに素材選定に難航していた私は下記の要望を満たすために生成AIを活用してみるこにしました。

やりたいこと

今回欲しいのは「キッチンカーで空き地を有効活用している様子」を表現している写真です。
一般的なストック素材では文脈に適していてリアリティのあるシーンやの素材をなかなか見つけられずにどうしよっかなーと悩んでいました。

そこで広報さんや営業さんが撮影してくれた社内にある手持ちの素材を活用できないだろうかと考え、こちらの写真に白羽の矢を立てました。

選定した写真(オリジナル)

手持ちの素材は実際のイベント時を撮影しているのでリアリティとしては申し分ありません。しかしリアリティが高すぎるが故に使用用途に対して具体的すぎるという乖離が発生してしまいました。
あくまで一般的な「空き地」を表現したいのですが、オリジナル素材では背景が社屋のような建物となっており、特定のオーナー・会場・用途を想起してしまうと感じました。
そこで「〇〇な空き地」と空き地に限定的な意味合いが出てしまうのを解消するために、背景に特徴的な建物がない空間が広がっている様子を表現したいと考えました。

やってみた

これらを踏まえ最終的に出来上がった写真はこちら。
本項ではここに至るまでの背景の合成を行った過程で感じた、メリットデメリットについてご紹介します。

生成AIでの合成処理をした写真(完成)

なんとなく違和感のない仕上がりになる

背景の合成接続部分については勝手にぼかしてくれて接続されます。これについては便利な反面、正体不明のものが生成されてしまうという問題もあります。恐らくなんらかのオブジェクトの一部なんだろうなというものが、ぼかして生成されていたりするので、よくわからないガラクタや幽霊みたいなものが合成部分に出来上がることがあります。一見自然に見えてしまう分、拡大してじっくり見てから気づくことがあり、工数目算を見誤ってしまう羽目になるので注意が必要です。

正体不明なものが合成部分に生成されてしまう

生成エリアの細かな指定はやはりあったほうがいい

背景を変更するにあたり、背景部分をおまかに選択ツールで拾って生成すると、人物の顔や車体などが巻き込まれてしまうことがあり、生成後に調整するのと比較すると、最初から細かく生成エリア作っておくほうが早いと感じました。

人物の顔が巻き込まれてしまう

特に今回は合成境界にフェンスが存在しており、ここの選択は自動選択の苦手分野かなーと思います。
私は馴染ませふんわり選択範囲を活用するのが苦手でして(したい操作の時にどのレイヤーをいじればいいのか分かり辛くって・・)、明確な境界線ができるパス指定で作った素材を最後に馴染ませるのが性に合っているのでそのようにしました。

パスで背景を指定すれば意図せぬ巻き込みはない

オブジェクトの追加はかなり自然

並んでいる行列に何かを足すなどの0→1の追加オブジェクトもお手のものです。例えば欲しい位置を適当に選択して犬を出現させると、背景との合成は影に至るまで驚くほど自然に合成してくれました。従来の合成工数を知る者としてはこれがワンタッチなことは非常に価値があります。

人物の追加は難易度高いので、なんとなく犬を追加してみた

ただし例えば行列をもう少し増やしたいとした時に、人物を追加するのは難しかったです。並ぶ方向や体の向きに関して意図通りの素材を出現させるのは難しく、今回のように斜めに一列に並ばせるのは私のボキャブラリではできませんでした。
今回は合成部分を均すための植え込みや芝生の追加生成を行うといった活用方法をしました。

背景合成の隙間を埋めるため芝生と植え込みを生成

[おまけ]人物は日本人が少ない

人物の生成が難しいという話をしましたが、特に日本人を指定すると途端に素材数が減るのか、プロンプトに対して意図した出力をしなくなりました。現時点ではアジア人という括りが現実的なのかなという所感です。

[おまけ]意図したファッションを出すのは難易度high

着せ替えができるのであれば、スーツの集団を休日の陽気スタイルに変えたりもできるんじゃね?と思ったのですが、結論は難しかったです。まず素材のポージングが限られてくるため不自然にならない構図を選んだ上で、意図したファッション系統を出すのは困難でした。恐らく後ろ姿の素材がそもそも少ないのではと推察します。稀に前向きの素材と合成されてしまい、恐怖画像を生み出してしまう結果になったのでお試しの際はご注意ください。
これは今後要研究です。

意図した系統の服装にするのは難しいかも


やってみた感想

以上、生成AIの利用記録でした。
限定的なシーンや文脈の素材は素材ストックにない物が多いため、それらを手軽に自作できるのはメリットであると感じます。
留意点としては、一見自然に合成されてしまう・やりたい放題できてしまうため、写真のリアリティ・クオリティの担保は制作者にかなり依存してしまいます。レタッチ感覚の延長でやっていると戸惑いが生じるかもしれんなーと思いました。

宣伝

今回ご紹介した合成写真の題材であるキッチンカーのBLUE×BLUEさんは今月は下記のイベントに出店されております!
この記事を最後まで読んでくださったあなたの脳内はすでに群青のキッチンカーが居座っているはず。お近くの方はぜひ実物のBLUE×BLUEのキッチンカーを拝みに行き美味しいガパオライスをご堪能ください。
素材の利用を快くご了承いただいたBLUE×BLUEさんへの感謝を込めてこの記事を締めさせていただきたいと思います。

BLUE×BLUEさん、akippaへのご協力ありがとうございました。


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