「感會」を読んで
先頃、大分県竹田市の長湯温泉に行き、国内有数と言われる炭酸温泉を堪能してきた。
そこで見つけたのが、本書「感會」(発行所:佐伯コミュニケーションズ 出版事業部)。著者は、長湯の老舗旅館の経営者の首藤勝次さん。地元の市長まで経験してる人。
事を起こす強さ
本書は、次のステージの違う3部門のエッセイ集。短編のエッセイ集で、簡潔で読み易く、隙間時間にピッタリ。
第1部 知に働けど角立たず 「御前湯日記」抜粋編
第2部 生きるとは自分の物語をつくること
第3部 感會~イイ人たちに出会った至上の喜び
本書は、全編を通じて、著者の生地、長湯温泉や著者の来し方を語るもの。
長湯温泉は、偶然、行く機会があり、以来、お気に入り場所のひとつ。
「御前湯」と言われれば「あそこのお湯は・・・」と思うし、「なるほど、立派な飲泉場があるけど、そんな歴史があったんだ」とか、一つひとつの話が興味深く、面白かった。
書名の「感會」は、川端康成氏が揮毫して出会った言葉らしい。「いい時いい所でいい人に出会った至上の喜びのこと」と添え書きがあったそうだ。
私は、何の事情も知らずに、「感會」って言葉の響きに惹かれて本書を買った。「感會」の意味も、後々知った。
最初の方のエッセイで、亡父の日記の最終行に記されていた言葉が記されていたので下記に転載した。これが素晴らしい。この言葉に出会っただけでも、本書を読んだ甲斐があると思った。
「誰もやっていないことに立ち向かう時、大切なのは夢のある展開を信じることであり、失敗を恐れて批評家になっている者の言動に左右されないことである。歴史と言う道は言った者ではなく、行った者の後にこそ残って消えない」
そうなんだよなぁ。
ことわざの「言うは易く、行うは難し」と同じ事かも知れないけど、亡くなったお父さんの日記には、実録としての苦労と実感が滲み出ている。
言葉に重みがある。
本書によれば、お父さんの後を継いだ著者も、公私に渡り、国内はおろか世界中を駆け巡り、たくさんの人や地域と縁を結び、長湯温泉を全国区にしてきた実践派の苦労人。
でも、本書を読んでいると、苦労よりも出会いの奇跡や良縁の喜びの方が伝わってきて、読んでるだけの私まで嬉しくなってくる。
素敵な長湯温泉
令和3年度(2021)の環境省の統計調査では、日本の温泉地数は2,894カ所、源泉総数は27,915本。このうち、大分県には、温泉地数は62カ所、源泉総数は5,093本がある。地点としては15番目ほどだが、源泉数では日本一。大分県の都道府県別の面積ランキングでは22位なので、狭い所に多くの温泉地があって、かつ、たくさんの源泉があることになる。
大分県の温泉地と言えば、別府と由布院が有名で、長湯温泉はどちらかと言えばマイナーな感じ。 でも、長湯温泉は、世界屈指と言われるほどの炭酸泉が人気。私も、その炭酸泉に魅せられ、毎年、何度か訪れている温泉地のひとつだ。
別府からクルマで1時間ほど。一山超えたあたりに長湯がある。小さな集落で、長湯温泉だけなら、歩いて回れるほど。
本書に記されている御前湯の他にも、いろんな泉質の温泉がある。著者の生家のある温泉宿のお湯もイイし、国民宿舎跡地に建てられたクアパーク長湯も面白い。さほど広くないところに、たくさんの温泉場がある。それぞれ、少しずつ泉質が違って楽しめる。宿泊施設の温泉は、泊らずとも「立ち寄り湯」の出来るところもあって、温泉巡りは面白い。
炭酸泉なら、何といっても「ラムネ温泉館」。ここの低温の炭酸泉は格別。温泉好きの人なら、一度は行って欲しいところ。 ただ、人気の温泉でいつも混んでる。ので、少しのんびりしたい人なら、隣町の七里田温泉の下ん湯もお薦め。炭酸は、こちらの方が強いような気がするけど、狭いのが難点で、8人ほどで満席になってしまう。
何だか、また、行きたくなってきた。
(敬称略)
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