【マドリード】ゲルニカ

 当時のガイドブックには、マドリードは日中でも首締め強盗などが横行して、非常に治安が悪いとあった。

実際、夜に着く便で行った友人は、ホテルまで後をつけられたらしい。また、マドリードに着く前に訪れたセビリヤで出会った女性は、マドリードで脅され金品を請求されたと言っていた。(その時何も持っておらず盗られなかったらしいが。)

私は震え上がった。

が、マドリードでは絶対に見たいものがあり、ソフィア王妃芸術センターにどうしても行きたかった。

ピカソのゲルニカがあるのだ。

 駅に降りた私は、安全そうなタクシーを停め、美術センターに乗り込んだ。貧乏旅行では贅沢だったが、仕方ない。

ソフィア王妃芸術センターは近代美術を展示していた。ダリやミロ など、"考えるな、感じろ"と言ってくる作品の最後にゲルニカはあった。

 見た瞬間にまた震え上がった。

絵の中に何かが閉じ込められていて、出たいと言っている、そう感じた。深い穴の中に助けを求める人がいて、それをどうしようもなく見ているような気がした。

絵はとても大きく、幅は8メートル近くある。近くで見ると、全貌が見えず大きさからの圧迫感もあり、さらに異様なものに見えた。見てはいけないものを見たような、私の心にトラウマとして残るんじゃないかと不安になった。

妙な不安感と興奮の後味を抱えて、贅沢に駅までタクシーに乗り、マドリード市中は観光もせず列車に乗った。

 お借りしたトップの画像は大塚美術館のもののようで、これも見に行ったが、本物と同じ感情にはならなかった。画家さんって凄いなぁ。