でき太くん三澤のひとりごと その94
◇ なつかしい思い出
もし小学3年生の自分の子どもが5+6のような計算に指をつかっていたら、どう感じるか。
「うちの子、大丈夫かな?」と感じ始めるのではないだろうか。
これは小学3年生で小学1年生の計算が満足にできないのは問題だという認識が私たちの中にあるからでしょう。
でも、子どもが10人いればそれぞれ顔が違うように、成長のステップも10人10通り。
様々だと思う。
そう考えると、小学3年生のときに指を使わないと計算ができない子がいても、それはその子の成長のステップであって、本来は問題ではないはず。
それを問題だと思うことが、実は子どもの成長の最大の阻害要因になってしまうことがあるのです。
こうして本来は問題ではないことを問題だと感じて、自分の子どもを「勉強ができない子」だと思い込んでいるケースはとても多いように思います。
以前私は、「5+3」のようなたし算を、指を使って計算する小学5年生の子どもの学習指導を担当させていただいたことがあります。
脳に先天的な障害があるとのことで、お医者さんからも、34+36のような2ケタの演算までできるようになれば良いほうではないかと言われていたそうです。
「5+3」の計算で指を使い、お医者さんからも「2ケタの演算までできれば良いほう」と言われてしまったら、たいていはその子を「勉強ができない子」としてみてしまう。
しかし親というものは、自分が死んだあとのことを考えると、「2ケタの演算までできれば良いほう」と言われても、わが子の成長をあきらめきれないものです。
親が亡くなったあと、2ケタの演算程度しかできないようでは、自分で満足に買い物もできないかもしれない。
もし買い物ができたとしても、おつりをごまかされてしまうかもしれない。
その程度の演算能力では不安ばかりがつのってくる。
自分たちがいなくなったら、この子はどうなってしまうのか。
親であれば、誰しもこのような不安を抱くでしょう。
そのような中、その小学5年生の子どもの父兄は、私のところにやってきました。
私は、まずその子が必要とする内容のものから学習プログラムを考えていきました。
個別指導が当たり前のようになってきた今では、5年生のことがわからない子には、前学年、前々学年にもどって指導するケースもあるようですが、この子の場合は小学1年生の内容からスタートしていく必要がありました。
そのレベルの内容から、自宅で自分のペースで学習できるように学習材を調整していきました。
その子は、自分にちょうどよいレベルに調整された学習材が学習しやすかったのか、毎日コツコツと学習を進めていきました。
土曜日も日曜日も、祝日も祭日も、クリスマスもお正月も、必ず毎日コツコツと学習を進めていきました。
毎日休まずに学習を進めていきました。
半年を過ぎたころでしょうか。
お医者さんから言われた「2ケタの演算」を学習するところまで到達しました。
私もその子の親御さんも「ここまでは順調にきたけど、果たして2ケタの演算ができるようになるだろうか。。。」という少しの不安がありました。
しかし、そのような不安はどこ吹く風といった感じで、その子は「2ケタの演算」も、淡々と学習を進めていき、しっかりと「2ケタの演算」ができるようになりました。
その子は、最終的には小学校の内容だけでなく、中学1年生で学習する「方程式の文章題」まで解けるようになりました。
人間って、すごい。
子どもを信じる親の力って、本当にすごい。
そういうことを、心の底から感じることができた瞬間でした。
そして、自然と涙が出てきた瞬間でもありました。
振り返ると、このころから私は涙もろくなったように思います。
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