固定観を捨てて、素直な生き方を。#2

さて、今回は前回の続きとなります。
早速本編に入りたいと思います。

深層部分では、相手を「拒否」し、
表層意識では「良くしよう」と気にかけている。

この時の三沢先生の心の中では、自己矛盾が生じていました。

表層意識では、節ちゃんの悪いところを色々直そうと努力し、その思いが相手に伝わらないと悩んでいました。
しかし深層意識では、節ちゃんの態度や言動を受け入れることができず、嫌っているという矛盾が生じていたのです。

このような先生が、努力すればするほど、そして一生懸命になればなるほど、子どもは自分の態度を改めるどころか、かえって反発するようになるのです。

三沢先生と節ちゃんの人間関係はまさにこれと同じです。
このような人間関係は、先生と生徒の間に限らず、いたるところで見受けられます。

例えば、親子、夫婦、嫁姑、上司と部下の関係など、自分をとりまくあらゆる人間関係に見られます。

では、三沢先生が節ちゃんとの人間関係において成功するには、どうすればよいのでしょうか?

・まず、節ちゃんを心の奥底で「拒否」いていたことに気づくことです。
・そして、節ちゃんを「受容」することです。
・そのためには、三沢先生は節ちゃんの何を「拒否」していたのかを考える必要があります。

三沢先生は「反抗的な節ちゃん」「やる気のない節ちゃん」が好きになれないのです。

しかし、「反抗的でやる気のない節ちゃん」は、節ちゃんの本質といえるでしょうか。むしろ節ちゃんという人間像の中では、ほんの一部の要素でしかありません。

さらに、この「反抗的でやる気のない節ちゃん」は、将来にわたって変化しないものでもありません。このような要素は節ちゃんを語る上で、一時期の変わりやすい、付属的な性質でしかありません。

例えば、ひとつの命が卵からオタマジャクシに、そしてカエルへと変化したとします。

しかし、卵やオタマジャクシ、カエルは一つの命の働きによって生み出されているわけです。

このように生命には、変化しやすい属性と永久に変わらない本性があるのではないでしょうか。

三沢先生は相手との人間関係において、この属性と本性の区別がつかなかったのです。そして「節ちゃん=反抗的でやる気のない子」という固定観を持ってしまったのです。
さらに、それは永久に変わらないもの(彼女のアイデンティティー)だと錯覚していたのではないでしょうか。

人間の本性においては、人は誰でも『すばらしくなりたい』、『輝いていたい』、『もっと自分を成長させたい』という「成長力」とでも呼べるエネルギーを持っているのではないでしょうか。

ただ、「もっとすばらしくなりたい」という想い(成長力)に見合う結果が十分に望めないとき、私たちは自分に悲観し、焦りやいらだち、不安を抱き、結果的にマイナスの言動にでてしまうのではないでしょうか。

つまり、マイナスの言動は、その人の焦りやいらだち、不安の「あらわれ」であるといえます。

節ちゃんの場合も、好き好んで「反抗的で、やる気のない子」を演じていたのではなく、彼女の内面の焦りや不安がそのような言動をとらせているのです。
つまり、2週間も無断欠席してしまった自分を、先生が果たして「受け入れてくれる」だろうかという不安があったはずです。

節ちゃんのこの不安を解消するためには、節ちゃんを「受容」することです。

例えば、節ちゃんを最初に見かけたとき、「節ちゃんよく来たね!本当によく来たね!」と受け入れてあげることだったのです。

本当に会いたいと思っている人と、何の連絡もなしに2年間も会えなかったときのことを、少し想像してみてください。

私たちは、心からすぐに「よく来たね!本当によく来たね!」という言葉が、顔を見た瞬間に口をつくのではないでしょうか。

このような意識で節ちゃんと接していた場合と、そうでない場合では、結果は全く違ってくると思います。

実際、三沢先生と節ちゃんの関係は、その後急展開して、節ちゃんは「大変素直な意欲的に学習に取り組む子」に変身したそうです。

「でき太くんの算数クラブ」では、お母さんがお子さんの最良の援助者になって頂きたいと考えております。

今回三沢先生の話をご紹介したのは、これが三沢先生と節ちゃんの関係だけでなく、よくある人間模様だと思うからです。

指導するというとき、よく陥りやすい傾向は「相手の悪いところを直す=指導すること」と思いがちだということです。
これを前提にいて人を指導する限り、決して双方にとって好ましい関係は築けません。

まず、大前提として相手を全面的に受容するという意識が必要なのです。
すべてはそこからなのです。

相手を包み込むような大きな受容の海の中にあってこそ、はじめて相手はあなたの言葉に信頼を寄せて聞くでしょう。

また、私たちは日常生活において、自分の心の奥底の意識に気づくことなく、色々な言動をとります。

三沢先生と節ちゃんの事例は、私たちに「自分の心の奥底の気持ちに気づくことの大切さ」を教えてくれています。
すべての出発点はまずここからです。

子育てを考える時、私たちが心の奥底でどのような気持ちを抱いているかということが、いかに相手に多大な影響を与え続けているかということに注意を傾けて頂きたいと思います。



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