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Web3.0がエンタメ業界に何をもたらすのか?

 ブロックチェーンという技術によって、インターネットは非連続的な進化を遂げ、Web3.0時代の到来と言われています。Web3.0とは、Web2.0と何が違ってくるのでしょうか? エンターテイメント・ビジネスにも大きな影響を及ぼすと言われていますが、NFTやメタバースという事象だけを見ていると、今までの技術進化の延長線上にしか見えないかもしれません。
 Web3.0という流れが、エンターテイメント業界に何をもたらすのか? 技術的な視点ではなく、ビジネス文化論的な視点も考慮して考えてみたいと思います。
 Web1.0は、ユーザーにインターネットというオープンなネットワークとの出会いをもたらしました。しかし、この時点では、情報の荒野を行き来できるというくらいのもので、エンタメ業界への影響は限定的なものでした。
 Web2.0になると、インターネットがブロードバンド化され、音楽や動画などのコンテンツがネットワークで楽しめるようになってきました。そして、フラットなネットワークであったインターネットに、GAFA等のプラットフォームと呼ばれる階層が生まれてきました。荒野に、インフラのある街が誕生してきたメージです。プラットフォーマーは、ユーザー数を増やすために、コンテンツの囲い込みにも力を入れ始めてきました。
 Web2.0とは、インターネットを通じての、エンタメ業界とIT(プラットフォーム)業界との出会いと融合が始まった時代でした。

 また、Web2.0になると、ユーザーも閲覧者だけでもなく、発信者として影響力を持つようになってきました。

 では、Web3.0になると、何が起きるのでしょうか?
 Web3.0とは、インターネットを通じての、エンタメ業界と金融(ファイナンス)業界との出会いと融合が始まった時代ではないでしょうか?
 ブロックチェーンという技術は、Web2.0時代にプラットフォーマーが牛耳っていた中央集権型のビジネス・モデルから、Web3.0と言われる自律分散型のビジネス・モデルへの移行をもたらすと言われています。中央集権型であれば、金融のことはプラットフォーマーが管理をし、エンタメ業界はコンテンツを供給するだけでした。しかし、自律分散型になると、エンタメ業界も、自分達で資産管理をし、DeFi(Decentralized Finance)と呼ばれる、分散型金融を意識しなければいけなくなります。銀行に資産を預けていた時代から、自分で資産の運用を行うことによって、プロフィットもリスクも飛躍的に大きくなる時代と言えるのではないでしょうか?
 少し前に、不動産業界では、不動産という資産をネットワーク証券化し、複数の投資家に販売する、REIT(Real Estate Investment Trust)という投資信託商品が生まれ、不動産は一気に金融業界の商品ラインナップに加わりました。これと同じ事が、エンタメ業界にも起きるのでしょうか?
 NFTは、デジタル・コンテンツという資産に、唯一無二の価値を与えることで、楽しむだけのものから、投資するものに変わりつつあります。
 不動産が、住むことも貸すことも意識せず、投資されるものになったように、コンテンツが、個人の楽しみという枠を超えて、投資されるものになるのは、良いことなのでしょうか?
 株式投資だって、企業をサポートし、配当金を価値と考えて長期保有を目指している人もいますが、多くの投資家は、株価アップによる売り時を考えて投資をしているものだと思います。それでも、このような投資家がいるからこそ、投資マーケットは活性化され、掛け算的にお金が集まってくるというのが、金融業界の正義です。


 コンテンツへの所有欲よりも、コンテンツへの投資に興味を持つ人が増えて、市場が活性化され、お金が集まるからこそ、良いコンテンツが生まれる可能性が広がります。NFTでは、取引のたびに、コンテンツ・ホルダーにも利益が分配されます。これらによって、コンテンツ制作環境の改善にもつながることも十分にあり得ます。一方、根強いファンが所有をし続けるよりも、転売されやすく、流動化しやすいコンテンツの方が、利益を生むというジレンマも起こります。
 エンタメ業界は、コンテンツへの愛を持った人達によって、支えられてきました。株や不動産よりも、ユーザーの愛着心が強い商品だと思います。コンテンツをIPと呼び、資産価値を重視した取引が増えることが、エンタメ業界にどのような影響を持つのか、Web3.0時代の到来で一番注視しないといけないのは、この点だと思います。
 




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