NFTのビジネスモデル3つのカテゴリーに分類すると理解ができる。

 NFTが理解しずらいのは、3つのビジネスモデルが混在しているのに、一括りでNFTビジネスと語られているからです。
この3つのビジネスモデルを整理してみたいと思います。

■NFTモデル(1)  希少な画像の一点もの


 唯一性が担保されるNFTによって、アート作品などの希少なデータの所有権を販売するというもの。主にオークションに出品され、ものによっては、高値がついて話題になりました。代表的なものは以下になります。

Beeple 「Everyday - The First 500 Days」

Beeple「Everyday -The First 500Days」

 アート作品の中で、最も高額の75億円で落札されました。作者のBeepleことMike Winkelman氏は「この作品こそ、世界で初めてのNFTアートである。」と主張しています。

Beeple 「Human One」

 高額入札第2位もBeepleの作品「Human One」の約32億円です。Beepleが生きている限り、現実のできごとに合わせて、Beepleがコンテンツを更新すると言われています。

 これらの「NFTモデル(1) 希少な画像の一点もの」は、NFTバブルのムードに乗って過剰評価され、そのバブルは崩壊しつつあると言われています。その典型的な例が、Twitterのジャック・ドーシーによる最初のTweet画面です。

Jack Dorsey 最初のTweet画面

 この画面のNFTは3億円で購入されました。しかし、これを売却しようとした時の最高入札額は400万円でした。ネット上にコピーが出回っている中、NFTによって公式であると証明されたことの価値がはっきりしないと、正当な評価が定まらないというのが現状です。

■NFTモデル(2) トレカ型のコレクション

 NFTモデル(2)は、アートというよりも、トレーディング・カードやガチャなどのゲーム要素が強いものです。各カードは出現確率(レア度)によって、normal、rare、epic等に分けられ、それぞれ個数限定で販売されます。レア度によって販売個数も金額も異なるNFT商品が並んだマーケットプレイスで購入するケースと、何が入っているか分からないカード・パックやミステリー・ボックス(ガチャと同じ仕組み)で購入するケースがあります。NFTであるから、購入した後の取引が活発になり、レアなものは、高額で取引されるようになります。こうしたNFTのコレクションにハマった人たちをCrypto Funと呼びます。

NBA TOP SHOT

 NBA TOP SHOTは、NBA選手の動画がついたトレーディング・カードです。マーケットプレイスでレア度に応じて販売されており、レアなカードは2次マーケットで、2000万円以上で取引されています。2021年5月の段階で、ユーザー数は100万人を超えていると言われていますが、まだそのカードを使ったカードゲームは開始されていません。(2022年6月段階)
 ゲームを期待して、カードを買ったCrypto Funは、そのゲームが始まるまで1年以上待つことも厭わないと言われています。

Jimmy Choo Mystery Box

Jimmy Choo Mystery Box

 ラグジュアリー・ブランドのJimmy ChooがパンプスのNFTを作成し、何が入っているか分からないMystery Boxに入れて販売しました。各パンプスのレア度が異なるため、希少なパンプスを手に入れたいと考えたCrypto Funが、30ドルするMystery Boxを複数購入することで、あっという間にSold Outになりました。

■NFTモデル(3) 1点ものの大量種類販売


 現在の主流は、このモデルです。NFTモデル(2)のJimmy ChooのMystery Boxでは、4種類のパンプスのNFTが8000個以上売れたのですが、NFTモデル(3)では、1万個のNFTを販売するのに、1万種類のNFTを用意するというものです。これは、ベースとなる世界観のイラストから、アルゴリズムによって、大量のオリジナル画像を作る「ジェネラティブ」アートという手法を使います。全て1点ものですので、自分だけのイラストを手に入れて、SNSのプロフィール画像(PFP)としても使用されています。
 このPFPに使用できるということは、将来メタバースが構築されたら、自分だけのアバターを持てるということにもつながります。

Crypto Punks

Crypto Punks

 最も有名なPFP型のNFTは、このCrypto Punksです。24✖️24ピクセルのデジタルキャラクター画像が10,000個存在しており、それぞれがユニークなデザインで唯一性がNFTで保証されています。ピクセル数が少ないことで、フル・オンチェーンに対応し、強固なセキュリティを確保できていることが、価値を高めました。

Bored Ape Yacht Club(BAYC)

BAYCウェブサイトより

 BAYCは2021年4月に、パーツを自動的に組み合わせて生成するジェネラティブという手法によって、Ethereum上で10,000点発行されました。
 BAYCのNFTを手に入れると、猿の画像だけでなく、クラブのメンバーとなり、クローズドなSNSのチャットやリアルなパーティに参加できます。このコミュニティには、多くのセレブも入っていることから、BAYCのNFTの価値が急騰し、2022年5月時点で最高3.9億円で取引されたものも出てきました。
 BAYCは、NFTのUtility(持っていると何ができるか?)が注目されるきっかけとなりました。

新星ギャルバース

 新星ギャルバースは、日本人女性アーティストの草野絵美さんと大平彩華さんが中心となったプロジェクトで、「アニメを作るのが目的」とGoalを明確に宣言しています。
 そしてNFT保有者は、アニメ制作を話し合うコミュニティに参加できるというUtilityを持ちます。コンテンツ制作の資金作りにおける、Web3.0らしい調達方法の実験になるのではないでしょうか?

Goblin Town

 最後に紹介するのがGoblin Townです。Goblin Townは弱気な相場を表す隠語で、NFT市場のバブルが弾けて、下落を続けている状況への皮肉ともとれるテーマです。
 NFTは期待値と煽りによって価格が高騰したことは否定できない中、Goblin Townは、プロモーションや事前の盛り上げをほとんど行わず、プロジェクトのウェブサイトには、「ロードマップはない。Dicord(SNSのコミュニティ)もない。実用性(Utility)もない。」と書かれています。それにも関わらず、発売直後に約9億円の販売高を記録しました。
 NFTの本質的な価値を問う、現代アート的なNFTであるGoblin Townが認められたことは、次のNFTモデルが生まれるきっかけになるのではないかと思います。

 以上のように、NFTのビジネス・モデルを3つに分類しました。NFTのプロジェクトが、どんなGoalやUtlityを設定しているのかによって、著名なIPよりも、オリジナルなキャラクターが成功する場合があることが理解できると思います。

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