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岸の柳
長唄のお稽古で初めて習ったのは、「岸の柳」です。1873年頃に書かれた曲と言われ、両国付近の歓楽街だった柳橋風情が艶やかに描かれています。柳橋から、隅田川を吉原、深川へと、船で行き来していたそうです。
戦争で焼け野原になってしまった一帯は、江戸時代の町人文化も焼き付くしてしまいました。芸能や工芸、町づくりや衣食住といった、人びとが穏やかに暮らすための知恵が、華やかな文化として発展したのに、それらを守ることができなくなってしまったのです。
長唄を習い始めようと思ったのは、うたや三味線の技術だけでなく、当時の江戸の様子に関心をもち、古代から流れるにほんのうたまいの水脈をつなぎたいと思ったからです。新鮮な水を汲み上げ、のどを潤すように、音楽がこころに流れ、満ち足りた生活を送れるように、と。
岸の柳
筑波根のすがた涼しき夏ごろも
若葉に返し唄女が、緑の髪に風香る
柳の眉のながし目にその浅妻をもやい船
君に近江と聞くさえ嬉し
しめて音締めの三味線も誰に靡くぞ柳橋
◼️茶琴神明(佐倉・文化芸術教室)
http://www.chagoto-shinmei.jp/
◼️茶琴神明「音楽で紐とく《にほん》(Youtube チャンネル)
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