線香花火のように、繊細な音色
都心から約1時間。師匠が生まれ育った築100年以上の古民家で長唄を習うことができるということ。木や畳のぬくもりに、琴や三味線の音色が染み透ります。
「一度体験レッスンを受けてみたら」と師匠に誘われて古民家に訪れたのは、3月でした。師匠は、地唄、長唄と様々なにほんの音楽の歴史や、琴や三味線にまつわるお話しを丁寧に教えてくださいます。
「では、弾いてみましょうか」とおもむろに師匠の三味線を渡されました。右膝の上に三味線の胴をちょこんと置き、右腕あたりでしっかりとおさえて、撥をもって、そして開放弦を弾きます。
初めてのひと振り。
音の振動が身体に伝わります。なんというか柔らかいパルスのようです。線香花火のような。
そして、ふた振り。
まったく想像していなかった音が聴こえました。「さわり」というのだそうです。
もうひと振り。
おなかのところで音が鳴っています。弦と胴に貼られた皮が共鳴しています。
そして、もうふた振り。
思っていたよりも、音がハッキリと聴こえます。それは、とても近いところで鳴っています。
撥を振るほどに、
だんだんと気持ち良くなってきます。それは、なんとも言えない感覚です。
繊細な音を聞き分けるには、それなりの環境が整っていた方がいい。東京の人混みではなかなか聴くことのできなかった音、まだまだ知らない音はたくさんあるのでしょう。
そして、知らない音を聞き分けることができるようになったら、それまで聴いていた音がまるで違ったものに聴こえてくるから不思議です。
電子音楽とともに電脳化された音楽様式を抜け出して、ようやくたどり着いた邦楽。あれこれ考えていても三味線は上手くならないですが、とにかく長い道のりです。初めて三味線の音を身体で感じた感覚を手ががりとして少しずつ進んでいきます。
◼️茶琴神明(佐倉・文化芸術教室)
http://www.chagoto-shinmei.jp/
◼️茶琴神明「音楽で紐とく《にほん》(Youtube チャンネル)
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