ともだちの季節
8月にはいってからなんとなく調子が出なくて、逃げるように小説やマンガの世界にのめりこんでいた。現実に戻るのが嫌で読み終わるのが怖かった。
どうしたんだろう?
食欲もあまりないから夏バテ?
仕事とクライミングの生活のリズムがしっくりきていない?
思いあたるフシはいくつかあるけど、どうにもピンとこない。
そんなふうにボーッと過ごしていたら、友達からいつかの夏の写真が送られてきた。いつかの夏の海の写真。
ああ、そうか。
夏はいつも友達に会いに行っていた。
いつも誰かと遊んでいた。
みんなで沖縄に行って昼間っからビールを飲んだり
友達の実家に上がり込んで畑の野菜を収穫したり
うだるような暑さのなか京都のお寺を巡ったり
台風に閉じ込められて一日中ソファでダラダラしたり。
仲の良い友達はみんな少し遠くに住んでいる。それぞれに2〜3ヶ月に1度、半年に1度、1年に1度、電車やら新幹線やら飛行機でピューッと会いにいく。
いつだって夏はともだちの季節だった。
会いたい人に会いにいく季節だった。
調子がでないのは会いたい人たちに会ってないからだ。
友達といるハズの季節にひとりでいるからだ。
家にこもっていた春と比べたら、今は家族やジム仲間や会社の人など、たくさんの人と会っている。
でも、まぶしすぎて目が開けられないくらいの陽射しも、なまぬるい熱風も、空気が肌にぺたりとはりつく夜も、人混みのなかで見上げる花火もキンキンに冷えたビールもアイスクリームも、夏を味わうときにはいつも友達と一緒だった。
外出を避けて家でひとりでいたときにちっともさみしくなかったのは
「夏になったら会いにいこう」って
心のどこかで勝手に思っていたから。
いつもの夏を過ごせると思っていたから。
今になって人恋しくなっている。
気がつくのが遅いけれど。
この春、ひとりでも平気すぎて、大切な人たちとの繋がりとか、かけがえのない存在とか、そういうものにピンとこなくて、自分は情が薄いのかなと思っていたけれど、それもまぁ当たっているのだけれど、人に会いたいと思う気持ちも自分の中にもあったみたい。
気づけば夏も終わりかけている。
ともだちの季節は
会いたい人たちに会わない間に
終わってしまうみたいだ。
直接会うことはできないけれど、久々に楽しい夏の思い出の写真をたどって晩酌するのもいいかもしれない。
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