居心地のよい部屋
今月は友人が泊まりにくる。それまでに部屋の掃除をしなければ。客用の布団を干さなければ。やることはたくさんあるけれど、友人に会うのは久しぶりだから楽しみだ。
《人の集まるリビングのつくりかた》
《みんながくつろげる空間づくり》
家とかインテリアとか暮らしの特集には、わりとこの手の言葉が多い。その家に住む人数は関係なく、誰かを呼びたくなる部屋は人気なんだろう。
私も誰かの家に行くのは好きだ。生活が垣間見れておもしろいし、だいたい誰のどんな部屋に行っても楽しいしくつろげる。狭くても広くても散らかっててもピカピカでも。
だからひとり暮らしをはじめたばかりの頃は、自分の部屋もいろんな人が遊びにきたらいいなぁと思っていたし、友達を呼んで鍋パーティとかいいなぁと妄想したりしていた。
そうやってみんなを呼べる部屋をつくることが正解なんだとなんとなく思っていた。誰かがふいに遊びにきたときに、くつろいで座れるオシャレな空間があって、きちんと人数分の器と飲み物がすぐ出せるような部屋こそが正解なんだと。
だけど、そもそも休日も外出していることが多い私は、家にいる時間がほとんどなかった。
家に帰ったら寝るだけの生活。家から出ないのはたまった家事をやりたいときか、体調を崩して家から出られないとき。あとは引きこもってひとりになって本や漫画を呼んでダラーっとしたいとき。
家はスイッチをOFFにする場所。ひとりでダラーっとする場所。なんにもしない場所。
しばらくして気がついてしまった。
みんなが集まる家に憧れていたけど、ほんとは別に誰も呼びたくないのでは?
むしろあまり呼びたくないのでは?
人が集まる部屋がニセ憧れだったと気づいて、人が集まるような部屋にすることも、人が来たら嬉しいと思わなくては、という呪縛からも自由になった。
そのかわりに自分の好きな本を並べ、好きなポストカードを飾って、好きなだけダラーっとできる空間ができあがっている。部屋はいつでもごちゃごちゃしているし、クライミンググッズは場所をとっているし、揃いの器もカップもないし、冷蔵庫の中もほとんどからっぽだ。
それでも、窓から入る光を見ながらのんびりするのは至福のときだし、積み上げられた本は宝の山だ。自分にとっては居心地がいい。ときどき遊びにくる数少ないひとたちも勝手に「落ち着くー」と言いながらゴロゴロとくつろいでいるから、これでよかったんだなと思っている。
今月泊まりにくる友人も、きっと勝手に「落ち着くー」ってダラダラくつろぐだろうし、私もムリにもてなしたりはしないだろう。でもそれくらいがちょうどいいのかも。とりあえず布団だけは干しておくけどさ。
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