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ATP2020シーズン序盤の選手データ振り返り

コロナウイルス流行に伴うツアー中断が長引いているので、いったんここまでの大会のデータを整理し、シーズン序盤の選手の調子を測ってみました。

選手ごとに去年との開きが大きいスタッツ数種類を紹介したうえで、講評を加えています。

ジョコビッチ

スライド1

1stサーブの強化とネットプレーの向上でラリーを短縮。省エネ志向でポイントを短くしようという意図が感じられますね。2ndサーブは速くなっただけでポイント獲得には結びついていない模様(というか逆効果では?)。

短いポイントが増えて集中する余裕が生まれたのか、去年はあまり勝てていなかったロングラリーにも強くなりました。

ナダル

スライド2

サービスゲームのラリー勝率が向上しました。他の指標と合わせて考えると、3球目攻撃がうまく機能していそうです。

一方でリターンゲームではポイントがとりづらくなっています。リターンミス、ラリーでの負け、どちらも増えているので、原因を単一の要素に求めるのは難しいかも。

ネットプレー頻度はなんと去年の倍近くまで急増しました。フェデラーやストルフと同じくらいネットに出ているのには驚き。

まずいのは、去年は圧倒的強さを誇ったロングラリーで勝てていないことでしょうか(ナダルの本領はここなので)。ただし、ラリー短縮には成功しているのでポイント獲得率全体への影響は抑えられています。ATP杯の頃からフットワークが悪そうでしたけど、昨年からの疲労で走り続けるプレーが難しい?

ティエム

スライド4

今が全盛期との呼び声も高い非BIG4の現・筆頭。2ndサーブの攻めっ気が薄れた以外は概ね維持か向上していますね。特にサービスゲーム、リターンゲームともに1stからのラリーに強くなったことは大きな進歩です。

1stからのラリー勝率の重要性については前回の記事参照。

フェデラー

スライド3

全豪しか出ていないので5試合分しかデータがありませんが、全体的にパフォーマンスが低下。

サーブは1st、2ndどちらも返されやすくなっていて、特に2ndがひどい(22.5%→16.9%)。エース率は去年とほぼ同じなので、リターンFEを引き出せていないことがうかがえます。

サーブ1本で優位に立てないので、その分ラリー戦で頑張るしかないんですが、膝の不安からか、打ち合いが長引いたときのポイント獲得率も悪化しています。目立って足を引っ張っているのはフォアのUE。

メドベージェフ

スライド5

1stと2nd、サーブとリターンで、改善した面と悪化した面がチグハグ。打ち消しあっているので、総合すると去年とだいたい同じです。

中程度の長さのラリーにかなり強くなっているので、サーブやリターンで得た優位を活かして仕留める腕は上がったと言えるでしょう(ただし短・長ラリー勝率が少しずつ落ちていて、ここでもチグハグ)。

ネットプレーは露骨な弱点ではなくなったかも。

チチパス

スライド6

全体的に少しずつ向上し、去年の上位互換形態といった印象。強いて特徴的な変化を挙げるなら、ラリーで我慢強くなった点でしょうか(ウィナー率は若干落ちているがUE減の効果のほうが大きい)。

なお、リターン成功率に変化は見られないのでリターン技術は特に変わっていない模様。

ズベレフ

スライド7

1stサーブを多く入れることで2ndサーブの頻度を減らし、その2ndもかなり安全に入れにいってDFを抑えていますね。1stは球速を落としながらもアンリターンド率を高めているので、技術自体は上がっているはずです。ちなみに2ndアンリターンド率10.6%は去年の西岡と同程度(返されすぎでは…)。

DFが減って心に余裕ができたのか、ラリー勝率が向上しています。

モンフィス

スライド8

ほかのベテラン陣がネットプレーを磨く中、一人ベースラインポイント増強によってパフォーマンスを高める道を歩んでいます。

サーブを入れにいかずにエース増DF減を達成しており、どこかの誰かと違ってうまくサーブを強化してますね。

ラリーではミスが減り、ビッグサーブ+シコラー傾向が強化(ジョコに善戦できたのはそのおかげ?)。

ワウリンカ

スライド9

エースとネットプレーが増え、ポイントを短く終わらせられるようになりました。

ただしロングラリー勝率も上がっているので、単純にサーブ依存を深めたわけではなさそう。サービスゲームを短ポイント化した分、ラリーに集中できるようになったと考えられます。

ルブレフ

スライド10

1stサーブが速くなってエース増。2ndサーブもまだ遅いとはいえ大幅に速度を上げつつDFは抑制。理想的なサーブ強化に成功していますね。

ラリーでは主にBHのクオリティが上がり、自分から決めに行くポイントも増えました。

注意書き

- 去年のハードコートの成績だけ抽出するのは面倒だったので全サーフェスの成績と比較しています

- 今年のデータはまだ10試合程度。上振れ・下振れが大きいこと、クレーの試合をほとんど含まないので去年よりもサーブ系スタッツが高くリターン系スタッツが低めに出やすいことは、各自の脳内で差し引いて見てください

- 比較結果が統計的に意味のある差なのかは検定していません。私の目分量で「この差は大きそうだな」と判断しています

- 今年の集計対象は、ドーハ、アデレード、オークランド、全豪、モンペリエ、ロッテルダム、リオ、デルレイビーチ、ドバイ、アカプルコの10大会。全豪以外はATP公式サイトにセカンドスクリーンがある試合または中継のマッチサマリー画像が2枚組の試合のみとしました。他の大会はマッチサマリーの情報量が貧弱すぎるので除外しています。ATP杯は他の大会と同じ条件とは言いがたいのでこれも除外

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