【詩】ジェリーフィッシュ・シンドローム
「クラゲは嫌い」と顔をしかめたあの子
幼い頃に海で刺されてから
ずっと天敵扱いらしい
「クラゲっておいしいよね」と頷く祖母
いつも作ってくれる和え物は
酸っぱさが胸に染みた
「クラゲって癒される」と呟いたあの人
都合のいいときばかり呼び出す
そんな身勝手さに疲れてしまったの
ねえ、あなたはどう思うかな
「海に浮かんだ月みたい」
所詮、ホンモノにはなれない
「一番、君が綺麗だよ」
みんな、見た目しか興味ない
「胸を張っていいんだ」
もう、目指す場所もないのに
「本当に、クラゲみたいだね」とあなたは憐れんだ
行く当てもなく漂う私を匿う
優しく、残酷に、水槽に閉じ込めるように
「みつき」と私を呼んで愛でるあなたは
天使でしょうか、悪魔でしょうか
海に浮かぶ月は
美しい空の月を見上げて海原にひとりぽっち
生まれ持った毒を今日も持て余す
チクリ、自分の心を刺すだけよ
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