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<特別対談> 「あるがまま」に生きる「SELFISH」という人生論 / 秦卓民さん(株式会社ENERGIZE 代表取締役)

※本記事は2021年4月に出版した著書「人生肯定」に掲載された対談内容をそのまま全文公開しています。(内容やプロフィール等掲載当時のものとなります)

「もっとあるがままに生きたい」と願うけれど、心のどこかで「周りに申し訳ない」「迷惑かけたらどうしよう」という気持ちが邪魔をする。そんな経験は誰しもあるんじゃないだろうか。

秦さんは、「もっと好きに生きたらいいよ」と自分の心のままに生きることの背中を押して下さった尊敬する経営者です。 創業10周年のお祝いプロデュースを担当させていただいたことをきっかけに、会社のストーリーだけでなく、秦さん自身の人生のお話をたくさん聞かせていただきました。より多くの方に、秦さんの心のままに生きるコツについて知って頂きたく、対談を依頼しました。

秦卓民さん(株式会社ENERGIZE 代表取締役)
1979年東京生まれ。2009年に経営コンサルティング会社である株式会社ENERGIZEを共同設立。日本におけるセムコ式組織改革の第一人者。トマス・J・レナード著の『SELFISH(セルフィッシュ)を監修。著書に「奇跡の組織~「最高の働き方」を導き出すセムコスタイル5つの原則」

30歳を契機に、モチベーションよりもインスピレーションに従うように

オア:私がCRAZYで法人向けのお祝い事業を立ち上げた際、ENERGIZEさんの創業10周年イベントのプロデュースを担当させていただきました。それ以来、卓民さんには事あるごとに私の人生相談にものって頂いているんですが、卓民さんが11年前に起業してコンサルタントという仕事を始めたきっかけって何だったんですか?

秦:僕は大学時代にラーメン屋さんでバイトをしてたんだけど、「もっと、こうしたらいいのに」という課題がすごく見えたんだよね。たとえば、味玉を切る場所が厨房から遠いところにあって、なぜかみんな盛り付けの度に厨房を行ったり来たりしている。だから動かなくていい場所に味玉を勝手に移動したんだけど、それを店長から褒められた。思い返せば、あれがコンサル人生のスタートだったのかもしれないね(笑)。

オア:そんな過去が。今となってはスポーツ選手や経営者など、個人のコンサルというか、コーチングを担当されていますよね。

秦:人は本来誰でも才能を持っているんだけど、それをフル活用できている人はほとんどいないんです。これまでコンサルという仕事をしてきた僕には、幸いその才能をオープンにできるスキルがあるから、いろんな方の才能を開花させるようなお手伝いを続けてきて。その積み重ねで今に至っていると思ってるよ。

オア:たしかに、卓民さんはいつも誰に対してもオープンで、心のままに生きている方という印象です。

秦:実は、30歳を境に変わったんだよね。それまで、軍隊みたいな指示命令が絶対っていうタイプだったし、嫌なことでも持ち前の忍耐力でとことん追い込んで頑張るスタイルだった。でも、ある時自分とは全然違うスタイルで、スマートにとても楽しそうに仕事する方と出会って、自分が得意とする部分で才能を使いながら豊かに生きるその姿を見て、自分の中の全く違うドライバーが見つかったんだよ。「やりきるぞ」というモチベーションよりも、自分の中のインスピレーションに従うようになったね。

「あるがまま」に生きる「SELFISH」という人生論

オア:私は卓民さんが監修された「SELFISH」を読んだことで、人生観が大きく変わりました。あの本に出会う少し前、新事業を立ち上げて、営業や提案、納品と、常になにかに追われていたんですよね。やりがいを感じつつ、必死に頑張りながらも、自分をすり減らしている感覚が消えない時期でした。私はこの先もずっと自分をすり減らしながら、仕事に邁進する人生を歩むのかと悩んでいました。この「SELFISH」という本の中では「自己本位」という概念が説明されていて、私にはこれがすごくしっくりきたんですが、あらためてそれは「自分中心」とは何が違うのか、説明をしていただけますか?

オア明奈の愛読書でもある「Selfish」

秦:僕は監修という立場なので、トマス・J・レナードが作ったコンセプトを僕がいかに理解しているかという観点なんだけど。あの本で言いたいことは、「わがまま」ではなく「あるがまま」に生きることで自分らしい豊かな人生を送れるんじゃないかということです。「SELFISH」という言葉を日本語にする時に「自己中心的」としてしまうと、一方では「他人を傷つけてしまう」みたいな考え方をしてしまう人がいる。僕はそんなことないと思ってて、自分らしく生きていれば、他の人も自分らしく生きていけるんじゃないかと思うわけ。自分が自分らしく生きることで、他人が自分らしくあることも許せる。反対に、他人にあわせて生きていれば一見嫌われないようには見えるけど、「いつも他人を迎合してるよね」と嫌われるリスクだってある。だったら、自分らしくいた方がいいんじゃないかな。他人のことを尊重しつつも、自分らしく生きることは両立できることだから。

オア:卓民さんの場合は、いろんな人との出会いを経て変われた部分も大きいのかもしれませんが、そういう出会いがない場合、自分らしく生きるためにはどうすればいいと思いますか?

秦:それこそ、明奈ちゃんのライフログみたいに、過去を見ればいいんじゃないかな。過去を紐解くと、自分が何を自然にやっていて、何に無理をしていたのかが見えてくる。それで、自然とやってしまうことを中心に置くことで、自分を受け入れていける。

オア:以前卓民さんから「明奈が自然とやってしまうこと三つあげてみて」って聞かれたのすごい覚えてます。私の場合は「感情を汲むこと」「場や人に火を灯すこと」「人生に興味を持つこと」だったと思います。そして、こうした自然とやってしまうことを生かして誰かの役に立てることを考えて、自分がずっと続けてきた人生を見つめる振返り(ライフログ)を個人・法人に提供し始めました。実は、はじめて法人向けにライフログ研修をご提案したのがENERGIZEさんだったんです。あの時は、1泊2日のライフログ合宿をご提案しましたね。

秦:これは最近考えていることなんだけど、「人は、自分が重要だと思える場所にいるべき」だと思うんだよね。重要な場所って、ただ仕事をする場所じゃなくて、自分が何者なのかというパーソナリティに触れられる場所なんだよね。明奈ちゃんのライフログというセッションは、普段仕事をしているチームや仲間がライフログを通じてパーソナリティに触れて、自分が重要だと思ってもらえているという安心感や、家族のような豊かさに気づく機会なんだと思ったよ。

ENERGIZEさんのイベント、研修を担当していた当時。

オア:そんな風に言って頂けて嬉しいです。ライフログを通じて実現したいのは、本来の自分を見せることなんです。でも、職場ではどうしても良いところを見せようとしてしまうので、職場の人の前で人生の話をすることに抵抗のある人も多いと思います。そこで、1泊2日の合宿を通して、よりその人の普段の姿や本音を出せる環境をまずは作ることで、少しずつパーソナリティを出してもらえるような設計をしました。

秦:あれは最高だったね。僕たちも社員全員でどっかに泊まるって初めての経験だったし。うまく感情や本音を引き出してくれたと思うよ。

自分が重要であると思える場所を選ぶこと

オア:最近では、これまで以上に「コーチング」への注目度が高まっています。コーチングを学んで、それを職業にする人も増えていると思いますが、これまで多くのコーチングをしてきた卓民さんにとって、コーチングってどんなものだと思いますか?

秦:コーチという職種の人に、根本的に必要な才能は、相手のことを自分以上に考えられるかどうかなんだよね。相手が何に躓いていて、それをどうやって超えるかを、その人以上に考えられる。そんな人はコーチに向いてると思います。

オア:卓民さんは「セムコスタイル」を提唱して、ヒエラルキーを排除した組織作りを実践しています。働き方が多様化する中で、会社員という働き方に対する違和感を持っている人も多い気がするのですが、私としては組織のあり方自体にも色々な形があると思うんです。そのあたりについてはどう考えていますか?

秦:さっきも言ったとおり「自分が重要であると思える場所」が大事だということ。その場にいたいと思えるなら、フリーランスでも、会社員でも、社長でも、どんな働き方でも、どんな組織でもいいと思っている。ティール組織が流行ってるからとか、僕がセムコスタイルを提唱してるからとか、そういう流行に流される必要は一切なくて、自分が重要だと思える組織がいいということ。そして、もしも違うと思ったら、それはいつでも辞めていいんだよ、とも思う。特に、人は情報に触れることでエンパワメントされるから、とにかく情報に触れることが大事なんだと思います。

オア:その反面、最近は情報が溢れすぎていて、何が重要かが見極められず、かえって決められないという人も増えていると思います。


秦:二つの情報を見比べた時に、どちらかが正解かどうか迷う時ってあるよね。でも、ほんとうはどっちも正解なんだよ。大事なことはどの道を選ぶかではなくて、選んだ道でどれだけ本気になれるか。もし、決められないならサイコロを振ってきめてもいい。それくらい実は単純なことだと思う。僕だって、一番最初はスポーツの仕事をやりたかったけど、諦めた。やりたくもなかった「営業」という仕事をすることになって、めちゃくちゃ苦労してやっとの想いで成績一位をとって、独立。それから紆余曲折を経てコーチングをするようになって、結果として今ではスポーツ選手のコーチングをやるようになった。その道で一番を目指せば、いつかは願っていたことに自然と繋がってくるんだということを忘れないでほしいよね。


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