【森の家③】〜物件探しの長い道のり〜
和歌山の友人宅で目にした「あの日の風景」を追いかけて、私はこの3年半、物件探しを続けてきた。とは言え、初めから「何をどう探せばいいか」が分かっていたわけでは全然なく、遠回りもたくさんしたし、行き詰まったことも何度かあった。
またそれ以前のこととして、私は自分自身が「何を求めているのか」を実は分かっていなかった。当たり前のことではあるが、どんな選択肢があるのかも分からないうちに何かを正しく選び取ることはできないからだ。
過疎地、空き家、地方、田舎、自然豊か、森の暮らし、中山間地域、限界集落など、とっかかりとなるキーワードはいくつもあったが、具体的に「物件探し」を進める上で、最初に把握すべきは、今となって思えば次の3つの分類だった。
限界集落:過疎化や少子高齢化が進み、地域人口の50%以上が65歳以上と、共同体としての機能の維持が限界に達している集落。中山間地域や離島に多い。
限界ニュータウン:都市郊外に造成された分譲住宅地。人口減少や高齢化により地域のインフラや共同生活の維持が困難、または限界に達している。
別荘地(定住リゾート):都会の住民が移り住んだり、別荘を所有している自然豊かな分譲地。ライフラインがしっかりしていて(または整備できる財力を持つ人が多く)、リゾート地の雰囲気が漂う。
これらの3つは、それぞれに特徴を持っているが、完全に分離独立して存在しているわけではなく、状況によっては繋がっていたり、重なり合う要素を持っていたりする。例えば、一度は衰退した限界集落が、部分的に再開発されて別荘地化していたり、バブル期の別荘地開発の延長として宅地造成された分譲地(のちに限界ニュータウン化)が、コロナ禍に新たな用途地として再注目されるといったことがあった。
そうした変遷も考慮しながら、どういう場所でどんな風に過ごしたいのかを私なりに割り出していく必要があった。もちろんその過程には、その土地をどのような条件で手に入れるか、要するに、何をいくらで借りるか、または買うのかを決めていくという交渉事も含まれていた。
まず、不動産屋の取り扱いがあるのは、条件にもよるが別荘地と限界ニュータウンの物件で、限界集落は非常に少ない。限界ニュータウンの物件の中には、資産価値をすでに失い、価格も100万円を切るような物件もあるが、それでも多くが70〜90年代に造成、販売、登記されたものなので、建物自体が割とモダンだったり、所有者の中に「自分で買った」または「親が買って相続した」という所有意識が多少なりともあるためか、「手放す」「処分する」という考えを持つ人が不動産屋に相談したのであろう形跡が見られた。
一方で限界集落の物件は、明治や大正や昭和初期ごろまでに開墾され、建築された日本家屋、茅葺き屋根の家などが、そのまま代々引き継がれ、気づいたら空き家になっていたが、資産価値は不明で固定資産税もほとんどかかっていないので、そのまま放置しているというケースが多々見られた。
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