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【森の家⑤】〜AI時代の不動産売買〜

家にせよ、土地にせよ、不動産を所有することは生涯ないだろう、というのが30代までに考えていたことだった。私は小さなアパートでの賃貸暮らしを気に入っていたし、引越しをするのも好きだった。高校卒業と同時に実家を離れてからの20年間は、海外で暮らした時間も長く、賃貸アパートに加え、間借り(ホームステイ)やシェアハウス、学生寮などを転々として、随分といろんな環境で生活してきた。一年の半分くらいは旅に出て家を空けていたのもあって、「マイホーム」が象徴する定住型の暮らしに自分を重ね合わせたことはそれまで一度もなかった。

そういうわけで、私は家や土地よりも、小さくまとまった荷物だけを持って、自由気ままに移動しながら生きていくつもりだったが、40代に入ってその計画を撤回し逆走を始めたことは既に書いた。人生とは不思議なもので、私は今、約850坪の土地と古家を所有している。

登記が完了して晴れて不動産を手に入れたのが2月の半ば。ただし購入を決めたのは去年の11月だったから、購入手続きには3ヶ月ほどの時間がかかったことになる。なぜそんなにかかったのかというと、私が不動産の買い方を知らなかったから。3年半前に発生した「物件の探し方が分からない」という問題は、その解決と同時に「物件の買い方が分からない」という次なる問題を生み出した。

もちろん、不動産業者が仲介していたり、司法書士などの専門家がついていれば、買い方を知る必要もなく言われた通りに手続きを進めていけばいいが、個人売買の場合はそういうわけにもいかなかったのだ。

去年11月に改めて面会した所有者さん(売り主)とは、物件の詳細に加え、書類手続きとその費用についても話し合った。やるべきことは大きく2つあり、一つは「田・畑」になっている地目を現況に合わせて変更すること。もう一つが、物件の売買契約を行い所有権移転登記を行うというものだった。

*「田・畑」は2023年の法改正により、農家でなくても購入可能となった。ただし、購入後に農業委員会の許可をもらって農地として使用しない場合は、自分で「田・畑」以外の地目へと変更する必要がある。

まず、私が購入した土地は全部で10筆分あり、地目は全て「田」か「畑」となっていたが、すでに農地としては活用されておらず、実際には宅地(未登記家屋が建っている)であったり、山林(植林されている)であったり、あとは何もない原っぱになっていた。

売買をする際に、登記上実在しない家屋、山林、空き地を購入することはできないという理由から、まずは地目を現況に合わせる手続きをすることになった。家屋がある部分を「宅地」へ、木が植っている部分を「山林」へ、そして原っぱの部分は当初「雑種地」へと考えていたが、結果的には「宅地」へと変更されることとなった。

地目の変更自体はそれほどややこしくないが、10筆あったうちの1筆が1000㎡を超えていたことで複雑化し、土地家屋調査士に頼むと30万円ほどかかるという話だった。

では、その手続き及び費用は誰が責任を持つのか?

私は、この部分は売り主側で対応して欲しい旨を伝えた。地目と現況が一致していないのは売り主(その時点での所有者)の責任であり、その土地をこちらが「買える状態」にしてもらうことが購入の条件であると。その代わり、購入時の売買契約と所有権移転登記にかかる手続きと費用は、買い手側で責任をもって進める旨を提案した。

売り主さんは物分かりの良い方だったので、こちらの説明に「そりゃそうやわな」と納得してくださり、地目の変更をしていただけることになった。すぐに手続きを開始してもらったものの、完了までに1ヶ月ほどかかり、年の瀬も押し詰った12月下旬に「やっとできました」との連絡を受けた。

次は私の番となり、とりあえず司法書士に連絡をして見積もりを取ってもらうことにした。結果は、、、

買い手側の負担が約85000円。プラス登録免許税などの実費。
売り手側の負担が約55000円。

売買契約から先の費用はすべてこちら(買い手側)が持つという約束だったことから、私の負担額は14万円と登録免許税ということになった。

が、もちろんこれは司法書士に依頼した場合の金額。お金に余裕のない私は、この14万円をケチりたいと考えた。そして調べてみると、ケチる方法は割と簡単に見つかった。

AIに頼んでやってもらえばいいのだ。もちろん無料で。AIは、契約書の作成から必要書類の指示、登記申請まであっという間にやり遂げてしまった。なんとも便利な時代が来たものだな……と、私はパソコンの前で感慨に耽ったのだった。

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