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『リバタリアンが社会実験してみた町の話』(読書メモ)

ある心理的研究によれば、

自由を賛美する政治的イデオロギーに引きつけられるのは生まれつき孤独を好む人々かもしれない

リバタリアンが社会実験してみた町の話

と推測されているそうだ。なるほど、そのせいかもしれない。私がリバタリアニズムに興味を持ったのは…。

リバタリアニズムとは、自由至上主義のことである。この数年、「国家権力や既存の社会システムからの離脱」について考える機会が増えたことで、アナーキズム(無政府主義)やリバタリアニズムといった思想にも少しばかり関心を持つようになった。

関連本として目を通した『リバタリアニズム~アメリカを揺るがす自由至上主義~』(渡辺靖著)によると、リバタリアンとは、自由市場、最小国家、社会的寛容を重んじる人たちのことで、経済的には「保守」、社会的には「リベラル」の立場をとる。とくに近年のアメリカではミレニアル世代の支持を集めており、民主党(リベラル)にも共和党(保守)にも共感できない若者たちの受け皿として注目を集めているそうである。

経済政策では「保守」でありながら、イラク戦争に反対し、人工妊娠中絶や同性婚に賛成するなど「リベラル」な姿勢が興味深かった。

リバタリアニズム〜アメリカを揺るがす自由至上主義〜

という著者の興味は、だいたいそのまま私の政治観と重なっていて、分類するにどうやら私は、保守でもリベラルでもなく「リバタリアン」なのではないか?と思えてくるのだった。

ただし一つ大きな疑問もあった。果たしてリバタリアニズムは実践可能なイデオロギーなのか。あるいはただの空想に過ぎない理想論の一種か…。

その答えの一つが、本書『リバタリアンが社会実験してみた町の話~自由至上主義者のユートピアは実現できたのか~』(マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング著)である。タイトルが示すように、リバタリアンの町を実際に創ろうとした人々の実話であり、その過程と結末が事細かく記されている。それだけでも興味を引かれたが、リバタリアニズムという縦軸に加え、本書にはもう一つ「町に出没する熊の問題」という横軸の展開があり、近年地域の害獣問題と関わってきた私としては、それだけでも気になる内容だった。

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