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らくがき帳(定期購読マガジン)

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2023年8月の記事一覧

『プロレス少女伝説』(読書メモ)

 数年前になるが、ネットニュースを見ている時に、ある記事の見出しに「長与千種」という名前を見つけてピンときた。記事を読み進むと、女子プロレスラーで元「クラッシュ・ギャルズ」の長与千種が、たまたま訪れていた飲食店の駐車場で助けを求める女性の悲鳴を聞きつけ、暴力被害から女性を救い出したとあった。逆上したDV男からの反撃を受けて、長与氏は左手小指を剥離骨折。髪の毛を引っ張られて頭髪が抜けるなどの被害を受けつつも、相手には一切攻撃を加えることなく事態を鎮静化。長与氏は取材に対し「職業

【氷河期世代①】〜疲れ果てた中年たち〜

氷河期世代とは何か? バブル崩壊後の1990年代~2000年代に社会に出て就職難に直面した世代を指す。広義には1970年~1987年頃に生まれた人が含まれ、中でも「どん底」を経験したのが1975年~1983年頃の生まれの人たちと言われる。 その世代について興味はあった。ただ、世代性だけを取り上げて何かを語るということを私はどちらかと言えば避けてきた。私自身が当事者世代である限り、起きている事象を俯瞰して客観的に発言することが難しかったからである。グチっぽくなるのも、被害者

『樹木たちの知られざる生活~森林管理官が聴いた森の声~』(読書メモ)

「糸状菌のついた木があれば分けてもらえませんか?」  突然の連絡を受けてまず私がしたことは、糸状菌という聞き慣れない言葉をネット検索することだった。糸状菌とは、森の中の朽木などに付着する文字通り「糸状の菌」のことで、蜘蛛の巣のようなものらしい。連絡をくれた女性とは直接の面識はなかったものの、私が山の間伐作業に従事していることをSNSで知りメッセージをくれたということだった。畑を森と同じ環境にして土を作り、微生物や菌に助けてもらって野菜を育てる。農薬を使わないことに加え、糸状

約束 (エッセイ)

*この記事は、本マガジン内とは別に、単体の有料記事としてご覧いただくこともできます。 文章を書くことに理由はいらない。でも書き始めるきっかけくらい、あったっていいのかもしれない。たとえばこんなのはどうだろう。ある美しい夕暮れ時に、妖精のような美女が目の前に現れて、こんな風に語りかけてきたとしたら……。 「あなた、本を書いてみてはどう?」     1   2007年12月のあの日、私はガーナのコクロビテにあるビーチサイドのバーにいた。2年を目処に始めた旅も、残すところあと