おばけ【ハロウィン企画】

ある日、おばけに出会いました。
体は真っ白で、目だけ丸く切り抜かれたような黒で、典型的なシーツおばけでした。
ひとつ普通と違ったのは、紺のスカーフを頭にかぶっていたところでした。

その日は妙におばけを見かけるな、と思っていたところでした。1匹2匹が飛んでいるところなどはよく見ますが、今日はそこらじゅうを漂っていました。
バグかな?
そういうと相棒は、そんなわけあるかよ、と鼻を鳴らしました。

おばけは手のひらほどの大きさでした。ふよふよと浮きながら私の周囲をうろうろしていました。気に入られたのかもしれません。
よく見ると街を歩く人々の中にもおばけをくっつけている人がちらほらいました。メガネをかけていたり、帽子をかぶっていたり、やっぱりいつもよりおばけの種類が豊富でした。
住宅街をぐるぐる歩き回ってもおばけは私から離れませんでした。幸運にも誰にも声はかけられませんでしたが、相棒は呆れた顔をしてついてきました。
今日、仕事するのやめない?
まあ、その状態ならなぁ。
相棒は仕方なさそうに首を振りました。
おばけといえども、誰かに見られたままでは私たちの仕事は成り立ちませんから。

おばけはずっとついてきました。
昼ごはんも一緒でしたし、晩ごはんも一緒でした。小さく切り分けたハンバーグをおばけの口元にもっていったら一瞬でなくなりました。白い体にソースがついていたから絶対におばけの仕業です。口なんかないのにどうやって食べたんだろう。
相棒は付き合いきれない、と言って姿を消しました。明日の約束を一方的にして。
明日は仕事日和です。

おばけは部屋の電気を消すと光りました。暗闇でぼんやりと光るおばけはひとだまみたいでした。昼間太陽の光をたくさん貯めたからでしょうか。寝るのにちょうどいい灯りでした。

次の日、起きるとおばけはもういませんでした。
相棒は一つ頷いて、仕事の話をしはじめました。世間は割と浮かれてるから今が狙い目なんだと。
私たちの仕事は泥棒です。
そういえば昨日ハロウィンだったな。
やっと気づいたのか、と相棒は笑い、小さな包み紙を放ってよこしました。おばけの形をしたラムネでした。
小さなシーツおばけが恋しくなりました。

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