秋那ひすい

あきなひすい、と読みます。 日々零れ落ちて忘れていく、そんな何かを残したくて書いていま…

秋那ひすい

あきなひすい、と読みます。 日々零れ落ちて忘れていく、そんな何かを残したくて書いています。 エッセイや小説。 小説家になりたいです。

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最近の記事

創作大賞滑り込みましたー…! よければ読んでやってください。 振り回され気味なドライな女の子と、 カメラマンの男の子の ちょっと不思議で不器用な恋の話です。 #境界の恋

    • 境界の恋④

      雨が降っていた。  雨の日に訪れる客人には、ろくな奴がいない。どこかで聞いたそのジンクス通り、家の扉を叩いたのは、よく見覚えのある男だった。古いがチャイムはあるというのに、毎回この男は律儀に扉を直接叩く。そんなところに律儀さを発揮する必要はないし、はっきり言って迷惑だった。これで、宮瀬だったら、まだ許してた。でも、この男はダメだ。 「帰ってどうぞ」  開ける気はさらさらなく、インターホンの受話器を握りながら、コードが続く限り扉に近づく。 「奈那ちゃん、開けてよ、ひどいなぁ」

      • 境界の恋③

        ピンポン、とベルが鳴った。古い家なので、ピンポン、というよりは濁点付きの年季が入った音だったけど、いつものことだ。慣れてしまった。  読んでいた雑誌をぱたんと閉じてソファのサイドテーブルに放る。着地に失敗した雑誌は背表紙を天に向けてばさりと広がった。 「はい」 「宮瀬です」 「開いてるから入って」 「あの」 「何か」  女一人だけの家に勝手に入れません、とでも馬鹿げたことをいうのかと思ったけど違った。女一人でも、鏡がいるので、別に問題はないし、宮瀬は前うちに来たことあるし。好

        • 境界の恋②

           毎朝の習慣の一つが、鏡の小部屋の換気だ。自室から起き出して台所でやかんの乗ったコンロのつまみを捻る。その後、鏡の小部屋の一つしかない窓とドアを開け放つ。 ひんやりした朝の空気と一緒に、金木犀の甘いようなむせかえるような特徴的な香りがふわりと漂う。今年の開花はずいぶんと遅いようだった。冬はもうすぐそこだ。  いつもと変わり映えしない毎日のはずだったけれど、その日、鏡の小部屋には誰かの靴が落ちていた。  鏡にかけていたはずの布まで床に落ちていて、あーあ、と思う。あーあ。  靴は

        創作大賞滑り込みましたー…! よければ読んでやってください。 振り回され気味なドライな女の子と、 カメラマンの男の子の ちょっと不思議で不器用な恋の話です。 #境界の恋

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        • 2023年 短編小説
          1本

        記事

          境界の恋①

          本編 「撮らせてもらえませんか」  秋の夕暮れ、たそがれどき。烏が遠くで鳴いていた。突然家を訪ねてきた男に、珍しく是、と返したのは、話し方に西の訛りがあったから。地元を思い出して懐かしかったのだ。そこに嘘はない。 「境界」というものがこの世界にはある。事物や領域などを分ける境目のことだ、と辞書にはそう載っている。  窓や扉、門。他にもたくさん。何かを隔てるものには、その昔、不思議な力が宿るとされていた。本当にそうだったのか、言い伝えに尾鰭がついて広まったのかはわからない。

          新札が出てきました。初。

          新札が出てきました。初。

          今日は猫の日!

          今日は猫の日!

          あけましておめでとうございます。 昨年は、あまり目標が達成できないまま、noteから離れてしまっていましたが…。 今年は1日1時間ものを書く時間をとりたいなーと思っています。 今年もよろしくお願いします。

          あけましておめでとうございます。 昨年は、あまり目標が達成できないまま、noteから離れてしまっていましたが…。 今年は1日1時間ものを書く時間をとりたいなーと思っています。 今年もよろしくお願いします。

          9月16.17日に京都芸術大学の学祭での企画、瓜生山の本屋さん、に参加させていただきました。 ありがとうございました。

          9月16.17日に京都芸術大学の学祭での企画、瓜生山の本屋さん、に参加させていただきました。 ありがとうございました。

          1.宇宙人の憂鬱

          お久しぶりです。秋那ひすいです。 ずいぶんと時間が空いてしまったから、リハビリも兼ねて。 ◇◇◇ お題「大学の空きコマ」で書きました。 あの子がYESと一言言ってくれればよかった。 ◇◇◇  昼下がりの午後、蒼い髪の少女は小さくため息を吐いてカップを傾けた。半分ほど残った琥珀色の液体がちゃぷんと揺れる。お気に入りの銘柄のストレートティー。それでも気持ちは全然晴れなかった。  綺麗な少女だった。鼻筋は通り、切れ長の澄んだ瞳が目を引く。現に、大学構内のカフェでは結構な人

          1.宇宙人の憂鬱

          せめて覚えておこうと思うそういう君はもういないけど

          せめて覚えておこうと思うそういう君はもういないけど

          ブックス エスメラルダさんに行ってきました! 好きな小説家さんのTwitterでお店のことを知り、ずっと諦めていた同人誌があると知って… 本当にありがとうございました。 幸せな1日です。

          ブックス エスメラルダさんに行ってきました! 好きな小説家さんのTwitterでお店のことを知り、ずっと諦めていた同人誌があると知って… 本当にありがとうございました。 幸せな1日です。

          お久しぶりです。もうすぐ新年度。 ぼちぼち頑張ろうと思います。毎回頑張る詐欺をしてる気がしますが、今度こそ… 当面の目標は週一投稿です。 こんな秋那でもスキをくださる方、感謝です!

          お久しぶりです。もうすぐ新年度。 ぼちぼち頑張ろうと思います。毎回頑張る詐欺をしてる気がしますが、今度こそ… 当面の目標は週一投稿です。 こんな秋那でもスキをくださる方、感謝です!

          2023年1月15日の文学フリマ京都に参加します。 学科の有志による「冬」をテーマにしたアンソロジー。 蒼名義で参加されていただきました。 い-43でお待ちしております。 近くに住んでいるよーという方は足を伸ばしていただければ嬉しいです。

          2023年1月15日の文学フリマ京都に参加します。 学科の有志による「冬」をテーマにしたアンソロジー。 蒼名義で参加されていただきました。 い-43でお待ちしております。 近くに住んでいるよーという方は足を伸ばしていただければ嬉しいです。

          今年の抱負 やりたいことリストをつくって達成する

          今年の抱負 やりたいことリストをつくって達成する

          「線は、僕を描く」 「すずめの戸締まり」観てきました。 どちらもとてもよかった。考えさせられるし、背中を押される作品。 「線は、僕を描く」は原作の小説が出たときに読んで、印象に残っていたので絶対にみたかった。読み返したくなりました。 ぜひ、観てみてください。

          「線は、僕を描く」 「すずめの戸締まり」観てきました。 どちらもとてもよかった。考えさせられるし、背中を押される作品。 「線は、僕を描く」は原作の小説が出たときに読んで、印象に残っていたので絶対にみたかった。読み返したくなりました。 ぜひ、観てみてください。