凪
凪ぎの、
その瞬間は美しいそれだと、信じて疑わなかった。
人を恨むなと教えられてきた。
人を愛せと説かれてきた。
そのままに生きて、この場所に立って、
そして何もない。ここには何もない。
波風の立たない水面のなんという美しさよ、
そして、
なんという虚しさよ。
ここには何もない。
喜びも、愛も、怒りも、渇望も。
凛とした水平線は切っ先のように静かで、
空々しく、息が詰まるようで。
私はそこに立っている。
まるで他人事のように。遠くの果てを見遣りながら。
嗚呼、胃が痛い。
その鈍い痛覚だけが、この水面にただ、ひとつの波紋。
ヒモ志望です。とっても上手に甘えます。