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あの夜のこと

ふと視線を感じて見上げたら、坂本龍一さんが眼光鋭く私をじっと見つめていた。あまりにもイメージで見かける坂本龍一氏そのままで、存在感、というか実在感が際立っていた。ちょうどテーブルを挟んで反対側に座っていた私と彼の間を遮るものはお互いの連れ合いだけで、私が見つめ返したのに気付くと少しバツが悪そうにされて、なんとなくこちらがあ、坂本さんだ、と気付いた雰囲気を察したようだったので視線を外した。そっちが先に見てきたんじゃん、と思ったけどけっこう良い夜だった。 雨が上がったばかりのあ

    • 春のTEN

      大きな公園の近くに住んでいるせいか、毎日明るくなる前に鳥のさえずりで目が覚める。ただ、最近は優しいさえずりというより、喧騒に近いような大合唱で、明け方4時ごろの鳥の声は安眠を妨げる、もはや騒音の範疇だ。去年まで春先にこんな風に感じたことはあっただろうか? ロックダウンに伴って、交通量や人通りが激減し、ビルの明かりも減った都市空間は、街に暮らす動物にとってはより快適な住処となったのだろう。実際、街の鳥は人の気配や交通量が減ると、通常よりも大きな声でより頻繁に鳴くようになると記

    あの夜のこと