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女性に「管理職になりたいですか?」と問うことが見落としていること

さて、最近、「経営層に女性が少ない」をテーマに様々と考えを巡らせ、構想を紙に落としてはいろいろな人に壁打ちをさせてもらっているのだが、こんな声が漏れ聞こえてくる。

経営層とは、「みんな、管理職になりたいのかな?」という話になることがある。うーん、それは分からないよね、となる。

女性メンバーとは、「管理職が良く分からないから、管理職になりたいのか分からない。」という話になることがある。うーん、それはそうだよね、となる。

女性管理職メンバーとは、「管理職が誰にとっても幸せだとは思えないから、なんかおススメできない」という話になることがある。うーん、そういう面もあるよね、となる。

「管理職になりたいですか?」という問いが成立していないのではないか

こういった会話を重ねるにしたがって、私は、女性に「管理職になりたいですか?」と問うこと自体が成立していないケースが多いのではないかと思うようになった。

女性が「管理職になりたいか分からない」と言うのは、本当に分からないという意味なのだと思う。あふれるほどのロールモデルが周りにいるわけでもないし、管理職がどういうものか、何が得られるのか、それによって人生にどう影響があるのか。想像がつかない。

ただ、分からない。それだけなのだと思う。

役職ありきの会話があたり前ではない

じゃあ、「管理職とはなんたるか」を解説すれば良いかと言えばそうではなく、こればかりは、実際にやってみないと分からない。

他社で働く友人が、「女性に管理職を打診したとして、一度断られたくらいで諦めてはいけない」という話をしてくれた。その友人自身が、過去に、初めて管理職に打診されたときに一度断ったそうだ。それでも、上長が諦めずに、こういうことを一緒にやっていきたい、こういうサポートもするよ、などアプローチし続けてくれたおかげで、管理職への挑戦を決断できたし、その後のキャリアにつながったと言う。

キャシー松井さんの著書『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます』にも、

世界中、女性は昇進を躊躇する傾向がある。
ただ、引き受けたらちゃんとやる。

と書かれていた。

女性にとって、管理職になることは当たり前ではなかったし、いまも当たり前ではない。それゆえ、そもそもの前例のなさ、ライフイベントのタイミング、自己肯定感の低さ、女性自身の無意識のバイアスなど、女性が昇進を躊躇する傾向の後ろに横たわっている事は根深い。

それらひとつひとつを取り上げて、なぜかを問うことももちろん大切だが、一方で、それはそういうものだと割り切って対応していく必要もあると思う。

「気づいたら管理職になっちゃってた」がいい

ここまで考えてくると、「管理職に占める女性の割合を増やそう!」と号令をかけたとして、それをそのままの表現で現場に適用させようとすると、上手く成立しないことが分かる。

さらに、私が一番危惧しているのは、「管理職になりたいか分かりません」と答えたメンバーに対して、上司が「あのメンバーは管理職になることを目指していないようだし、こういう仕事を任せておけばいい」というレッテルを貼ってしまうことだ。

これらから考えて、私は、女性に「管理職になりたいですか?」と聞かないことにした。それから、「管理職になりたいかわからない」と言われても聞いたふりだけする。本人の意思がどうであれ、自分事の範囲が広がる経験ができるように機会を提供していきたいし、それを通じて、自分の生活や人生に何がフィードバックされるかを体感してほしい。

役職ありきの会話だけで判断するのではなく、「このチームを助けてほしい」「一緒にやろう」と、自分事とする範囲を少しずつ拡大させていき、それを何回か重ねていくうちに、気づいたら管理職になっちゃってたという状態がいいのだろうと思う。


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