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国民性

人間の世界には、その国、その社会が持っている共通の認識、または共通の信念、みたいなものがあると思う。例えば、日本人が当たり前のように持っている、「約束は守らなければならない」とか、「有言実行」とか、「人は信じられる」とか。それらは、自分や同じ文化の人にとっては当たり前過ぎて話のネタにもならないけど、別の文化に属する人と接すると、「当たり前」というものは、ほとんど存在しないことに気づく。

そして、日本人が持っているそれは、チリ人や他の国の人々がもっているものに比べて、随分穏やかで、基本的に「信頼感が強い」ものだと思う。人を信頼する、恋人を信頼する、政府を信頼する。だから基本的に「お上が悪いことをする訳がない」的な感覚がある。

そしてこないだまでの旅で感じたアジアの国々の雰囲気は全般的にヨーロッパや南米やアフリカの文化圏より穏やかで従順だ。

ヨーロッパの人たちの特性の一つを言えば、彼らは権利意識が強いと思う。

じゃあ南米はなんだ、と言うと、「反逆的だよね」というのが今日の話。

チリ人は基本的に「お上が良いことをしてくれる」とは思っていない。お上は信頼出来ないものである。と思っている。だからお上、政府の要請、法律に反抗したくなる。お上がstay home と言えば、家に居たくなくなる、という精神性を持っていると言う。

なんてこった!
その結果、取締りと掟破りはいたちごっこ。
でも反逆しなかったら事態はもっと悪くなるという話。

さて、なんでこういう話になったかと言えば、チリは10/25 に憲法改正に関する国民投票がある。これは、去年の民衆の暴動、デモ行進、社会運動の結果、この不公平な社会を変える為に民衆が取り付けた政府への提案であるが、政府にとっては頭を痛めている懸案事項である。
それもあって、国民投票は本当は4月に行われるはずだったのにコロナを理由に半年延期された。

政府の本音は、1人でも多くの人に投票に行って欲しくない。なぜなら投票する人は改正に賛成派が多いからだ。
もし、コロナにかかったら投票に行けない。だから投票に行きたい人はコロナにかからないように最善の注意を払うべきだ、と私の友達は言った。

「政府はコロナを理由に投票に行かないように仕掛けてくるから気をつけないと。例えば、わざわざお祭り騒ぎを許して、感染者を増やすとかね!」

......日本人の私は友達らの話を聞いていて、「なんでそんなに政府に対して不信感をもっているんだ?」と驚いたので、それを素直にコメントしてみた。

すると、彼らはむしろ、「君は何で政府を信頼するんだ?政府は君を守ってくれてると思う訳?」と聞いてきた。

わたしは、「政府が守ってくれてるとは思わないけど、日本のシステムが国民を守ってくれてると思うよ」と言った。(ほら、基本的人権の尊重とか、生存権とかあるし)

「ここには軍事クーデターでできた独裁政権の歴史がある。さらに遡れば、スペインによる植民地の歴史がある」と言った。「スペイン人たちは、我々を虐殺しまくって統治政府をつくった。だから政府というものは信用できないんだよ」と言った。

私は、そんな500年前のことを言い出すのか、と思った。でも、それは彼らの共通認識である。それが、彼らがこのチリ社会で生きているうちに取り込んだ認識なのだ。

むむむ。
話せば話す程、私が思いもしないような認識の違いを発見する。そして、知らないスペイン語の単語を学ぶ。

今日の新出単語i·dio·sin·cra·sia[i.đjo.siŋ.krá.sja]
1 気質,特質;特異性,性癖.
la idiosincrasia de un pueblo
国民性.
2 医 特異体質.

私はいつまでここでは「外人」なのだろうか、と思う。幸いにもそれでひどい孤独を感じたことはないけれど。

#海外生活 #チリ #スペイン語 #認識の違い  


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