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遠回りは人生のスパイスだ?①

三連休最終日の朝、夫の実家がある山口県と住まいである大阪を結ぶ山陽新幹線にトラブルが発生した。乗車する予定だった車両は、運休になるという。

この日、私たち家族は小さな計画を立てていた。
いつもは山口の某駅から新大阪まで直行するところを、今回は広島に立ち寄って広島のお好み焼きを味わおうではないかと。とてもささやかなお楽しみだったのに、広島までの道を絶たれて、朝から気持ちが沈みかけた。

しかし、私の根底に流れている、忘れかけていた何かがムクムクと湧き上がってきた。
「在来線で行っちゃおうか!」
遠回り、寄り道は、昔から好物なのである。

山口某駅から広島までは、在来線で約2時間。「2時間!?」と夫も子ども達も呆れたが、私はこれは楽しい電車旅になると確信し「新幹線の運転再開は正午以降」というJRの発表をちらつかせて「在来線2時間旅」をもぎ取ったのだった。

直感は当たった。山口某駅から広島までは、海岸沿いを走る。この日はうれしいことに予想外の秋晴れで、目の前に広がる海の青さは格別だった。水平線の奥に見える陸地は、瀬戸内海に点在する島々らしい。車窓から見える島々を、スマホの地図で確認する。「あれは周防大島、あれは浮島」。
いつかあの島々を訪ねようと心に決めた。

向かい合わせの4人席を確保できたのもラッキーだった。窓から注ぐやわらかな秋の日差しを浴びながら、たわいもないおしゃべりをする。山口の家族が持たせてくれたお菓子が、より息子を饒舌にした。

中1の娘は、わたしのスマホで調べものに夢中だった。着圧レギンスが欲しいという。まぶしいからと窓の遮光カーテンを下ろしていたが、わたしがそっと上げると、海の青さに「あっ」と気付いてカメラを向けた。よかった、娘が海の美しさに無関心じゃなかったことに、心から安堵した。

かくして私達は2時間の在来線の旅を終えて、広島駅に降り立った。
広島のお好み焼きは、もちろんおいしかった。

久々に遠回りしたなぁ。
子どもが小さい頃は、とにかく短時間であらゆることを済まそうとしていたから。

あれは17年前のことだ。忘れられない遠回りがある。今度はその思い出について書いてみよう。


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