【49歳のつぶやき】 ああ、私はスカートに憧れていたのね
こう蒸し暑くなってくると、スカートが最高だ。
私は外ではパンツ派だけれども、家ではもっぱらスカートをはくようになった。
しかも、娘のお下がりのフレアスカートだ。
娘がはかなくなったフレアスカート。このままユニクロのリサイクルコーナーへ持っていくのはなんだか口惜しいなと思って、足を通してみた。
快適。
直立姿勢を保つとき、例えばキッチンで野菜を切っているときなどは、足に直接触れるものがないので爽快だ。
動くたびにスカートのひだが揺れる感じは、私にも乙女心があったのだと気付かせてくれた。
中1娘のお下がりは、おばさんには可愛すぎるデザインだ。それは認識しているけれど、室内なので許して欲しい。
宅配のお兄さんは、いささか「ギョッ」とした表情を見せた。「やはりそうか」と現実を思い知らされたが、わかっていたことだ。
可愛いデザインのスカートは、私の乙女心をくすぐると同時に、生活に彩りをもたらしてくれているなあ。そんな実感がある。
* * *
自分のシルエットを見て、既視感を覚えた。
童話に出てくるおばあちゃんだ。というか、私自身の祖母も、こんなシルエットのスカートをはいていたような気がする。
「おはようおかえり」と手を振る祖母の姿を思い出すとき、祖母はいつも、ふんわりとしたスカートとエプロンを身にまとっているのだ。
やっぱり涼しいと思ったから?
乙女心を取り戻せるから?
いまもし祖母に会えるなら、聞いてみたい。
* * *
あれは7〜8年前だっただろうか。
作家の川上未映子さんと、ディズニーシーのエレベーターで乗り合わせたことがある。
突然の雨に襲われ、慌てて駆け込んだホテルのエレベーターだ。
川上さんも私も家族づれ。
それにしても、川上さんは圧倒的に素敵だった。
私、ときたら、5歳児と1歳児を連れていたとはいえ、髪は雨にぬれてボサボサ、顔もなんとなく疲れ切っていて肌の色がくすんでいる。エレベーターの鏡に映っている自分と、目線の先にいる川上さんとの差に、ただただ愕然とした。
川上さんは真っ白なシンプルTシャツに、それとは対照的な真っ赤なスカートというコーディネートだった。
その真っ赤なスカート、私の記憶では、1枚の布ではなくて、同じ赤色の異素材をふんだんに重ねたようなデザインだったと思う。それでいてうるさくなく、気品さえ漂っていた。
素敵だな、きっと超ハイブランドのアイテムだろうな、と羨望のまなざしを注ぎながら、エレベーターを出ていく川上さんの背中を見送った。(羨望、のつもりだったけど、妬んだ顔をしていなかったか心配)
上はシンプル、下はゴージャス。
あの日以来、私はあのコーディネートをいつか真似したいと思い続けていた。
子どもも大きくなったし、今こそあの「川上未映子さんの素敵コーデ」を実践するとき!
コーディネートを真似したところで、「家族づれでもオーラがすごい」川上さんにはなれないけれど。
私の日々が、もっと色づく気がするのです。
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