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第5回 育休プチMBA、継続の危機(前編)

2014年7月にはじめた育休プチMBAは、最初の動機は「なんとなくおもしろそー」だったけれど、実際にやってみるといろんな経営問題を解決する可能性が見えてきまして、続けるほどにそのニーズと価値を感じるようになってきました。そのため、2014年の秋に育休からフルタイム勤務で職場復帰した後は、この勉強会を研究活動と位置付けて続けていました。研究活動なので無報酬なのはまあいいとして、ちょっと大変だったのは、復職する際に職住近接を目的に静岡市に引っ越したことで、勉強会に参加するのが物理的に大変になってしまったことです。それまでのように、「育休中だから時間あるし、30分くらいで行けるし」という状態から、意思を持って時間を作り出さなくてはならなくなりました。

でも、それまでの育休プチMBAの活動を通じて、この「女性の両立問題から透けて見える経営課題の解決」という研究テーマは、出産によって抱えることになった研究活動上のハンディを機会に転換できると思ったのと、常々悲しく思っていた周りの20代が「こどもを産んだらキャリアを諦めなくてはならない」と考えている問題への解決策を実現できると思ったので、時間を捻出しておりました。また、常に自分が参加しなくとも活動を回せる体制に変更しようと思い、ファシリテーターを私以外の人に任せるようにもなりました。ただしファシリテーションは勉強会の教育品質を決めるので、事前に私がトレーニングをします。ファシリテータートレーニングは、提供するほうも受けるほうもけっこう大変なのですが、「復職後に役立つ経験になる」と人気のようでした。そうして、私が全て手掛けなくても教育品質が下がらないしくみを作っていきました。2014年11月にプレジデントオンラインに育休プチMBAが載ったことで参加したいという問い合わせも急に増えたため、規模を大きくできるよう1月以降は育休者たちで「運営チーム」をつくって運営する体制にも変更しました。

↑育休プチMBAの勉強会の様子。現場は、ファシリテーターをはじめ自らも育休中のボランティアチームが担っています。

ただ、とりあえず3月まではなんとかなるだろうと思えたものの、問題は現在育休プチMBAに来てくれて運営を手伝ってくれているメンバーが一斉に復職してしまう2015年4月以降の体制でした。続けるべきだし続けたいという気持ちがありつつも私一人では限界があり、それなりに大変な運営を引き受けてくれる人が現れない限りは4月以降の開催は難しいだろうと思っていました。

4月以降に育休プチMBAを存続させるために最初に考えたのは、どこかの会社に運営ごと勉強会を譲渡するということでした。だけど、一般的なビジネスの常識では、「育休中に対価を払ってまで経営の勉強したがっている女性」がたくさんいるとは思わないし、仮にそういう人がいたところで参加費4,000円(※その後価格改定をして現在は5,000円)じゃペイしないんですよね。普通はこの手の研修って、自治体や企業がお金を出しているか、単独事業として成り立たせるなら1回1万円以上の参加費を払うか、で成り立っています。もちろんその価格に見合うだけの学習効果はあると思っているけれど、育休プチMBAのメインターゲットは「最初から管理職へのキャリアアップを視野に入れている人」ではなく、現時点では管理職になろうと思っていない、すなわち現時点では教育投資を将来的に回収できるという確信がない層なので、価格を上げてしまうと参加のハードルがあがりすぎるだろうと思いました。

4,000円じゃ事業にならない、でもこれ以上値上げすると受ける人が限られてきて女性側の能力開発の機会が失われてしまう。そうすると“子どもを持ちながら働く”が本人・家族・企業にとって当たり前になる社会の実現というビジョンを実現することが難しくなります。つまり、ビジョンを考えると値上げはしたくない、でも今の価格ではビジネスとして成立しないため引き取り手がいない、かといって静岡在住の私一人では続けられないという八方ふさがりの状態です。

しかし、そこに一人の救世主が現れます。

↑教育機関の価値は、教育コンテンツだけではなく、そこで出会う人とのつながり。育休プチMBAでは、こども大好き、でも仕事も大好きな、スーパーウーマンではない等身大の女性たちにたくさん出会えます。それだけでもおそらく他所にはない価値です。

続きはこちら:第6回 育休プチMBA、継続の危機(後編)

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