見出し画像

オンライン授業に関する備忘録(定義編)

大学で経営学を教えています。面接授業(通常の教員と学生が教室に集って行う授業のこと)をオンライン授業にシフトするにあたり、調べたことをまとめました。

オンライン授業の定義(抜粋)

(略)多様なメディアを高度に利用して(略)次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第二十五条第一項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。(出典:平成十三年文部科学省告示第五十一

一、同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第三十一条第一項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近い場所を含む。以下次号において「教室等以外の場所」という。)において履修させるもの
二、毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの

オンライン授業の種類

大きく2つに大別されます。授業形態として同時双方向とオンデマンド、授業の要素として同期と非同期、という2つの軸があります。

オンライン授業の種類

オンライン授業に特有の課題

課題1)教育効果があると見なされるための要素の実装
以下の文科省の「面接授業に相当する教育効果を有すると認められるための要素」の実装です。特にオンデマンド型の場合は授業内での実装が困難であることから、授業の終了後すみやかに①及び②の実施を求められます。(出典:文科省「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&A」

  ①設問解答・添削指導・質疑応答等による十分な指導 
  ②学生の意見の交換の機会
 

課題2)時間の尺
同時双方向型もオンデマンド型も、一方向の映像を視聴できる限度は15分程度です。90分講義をそのまま映像化するのではなく、視聴しやすい形に再構成する必要があります。同時双方向型なら15分単位で「講義」「グループワーク」「個人課題」「動画視聴」などの要素を組み合わせて構成します。オンデマンド型なら、15分程度の動画を3~4本用意し、それらの動画を見て学生がとるべきアクション(課題とか)をあらかじめ指示しておきます。なお授業時間に関する制約としては、45時間の学修時間で1単位付与というルールになっており、従って2単位科目であれば10~15週間にわたり90時間の学修時間を必要とする内容である必要があるそうです。「90時間の学修時間」を全何コマで実装するかや、1コマあたりの時間などは教員の裁量に任されるため、1コマ分の動画視聴時間が総計90分である必要はありません。

課題3)学生の反応がわかりにくい、受け身にさせやすい
同時双方向型もオンデマンド型も、学習者側の意欲が高い場合は面接授業でもオンライン授業でも、学習効果にはさほど差が無いと考えます。しかし自分で学費を払っていない大学生や、興味があるというより卒業条件のために履修する必修科目においては、この前提は崩れます。面接授業以上に、意欲をもたせるための仕掛けが必要になります。双方向型や同期型を、部分的にでも活かすとよいかもしれません。

オンライン授業の課題への対策

こうした課題への具体的な対処法として、調べたところでは以下のような者がありました。

1)授業前の資料配布や課題提出を組み合わせる
・小レポートの事前・事後提出を課し、共有する
・授業時間「内」にWEB小テストを実施する

2)双方向性のあるツールを利用する
・グループワーク(Zoomのブレイクアウト機能等)を利用する
・メール、学習支援システムで質問を受け付ける
・授業時間内にチャットを利用する(質問や感想など)

3)エンターテイメント性を持たせる
・オンライン投票、アンケート、小テストを活用
・ホストがマイクミュートを解除して指名する(いわゆるコールドコール)
・ビデオ映像を通じたジェスチャーや体操

4)フォローのための時間を用意する
・オンラインオフィスアワー

5)こども向け教育コンテンツを参考にする
・興味の持たせ方など、高等教育との共通点は多いです

オンライン授業の形式を選択するための4要素

①当該科目における双方向性の重要度
ディスカッションが重要になるゼミや少人数授業は、同時双方向型が望ましいと考えます。またディスカッションが多用されるのであれば、集中力も保てます。

②当該科目の履修人数の規模
Zoom初心者が快適に同時双方向型ができるのは、講師込みで25人までだと考えます。同時双方型でZoomを使う場合、講師込み50名以下、100名以下、それ以上か、が閾値になると考えます。Zoomはライセンスによって最大参加人数が変わりますので、ご自分が使えるライセンスをご確認ください。

③スキルやスタッフをどれくらい有するか
人数が50人を越える同時双方向型は、Teaching Assistantが必須だと思います。そうでないと講師の集中力がそがれて、授業の質が落ちてしまいます。TAに関する制度や予算をご確認下さい。

④知的好奇心やサービス精神の度合
いろいろ調べたり工夫したりすることが好きな人はどんどんやればいいと思いますし、オンラインの特性を活かした授業を実現することで面接授業以上の品質を実現することも可能です。ただ今回は状況的に、学習機会を担保するということが使命の方もいらっしゃると思いますので、最初から無理をせず、楽しめる範囲で徐々に工夫していくのがよいのでは無いかと思います。

⑤大学のネットワークインフラの制約
最初からオンラインを前提とした教育機関でない限り、学生側の情報通信環境(パソコン端末の有無やネットワーク環境、プリンター所持率など)、および大学のネットワークインフラ強靱性、耐久性、安全性などに制約を受けてしまいます。学外インフラを使うことも含めて検討する必要がありますが、その場合は学生に対する丁寧な伝達が必要になるでしょう。


(※2020/4/13追記しました)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?