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【もしベビ④】新生児期のブラック母親業

今回は子どもが生後1-2か月頃の話です。

子どもが生まれることがわかってからは、仕事で新たなプロジェクトを取り組むときと同様に、情報を集めて対策を練りました。ある程度の年齢になるとこれまでに培った知識と経験でだいたいのことは適応出来ちゃったりしますので、ゼロから何かを学ぶという経験が著しく減りますよね。でも出産というイベントは別格で、私はこの小さな存在と一緒に暮らすためのあれこれ、すなわち子育てに関する知識をゼロから学ぶ必要性に迫られました。そして知識といってもたまひよ系のほのぼのしたものではなく、どんな条件においてどんな課題が発生するのか、その課題はどんな構造なのか、どのような対策がとりえるのか、そのときの判断基準は・・・といった具体的な知識と情報の収集です。

だけど、出産・育児にまつわる情報って、意外と体系化・概念化されてないんですねえー。産婦人科医や小児科医が医療面から書いているものはまだあるものの、医療以外の子育ての部分となると個人の経験談の集積しかない。経験談は経験談で意味がありますが、根拠や前提条件が明確でない情報は、自分に経験値がない状態ではうまく活かせないので、出産前にいろいろ調べたにも関わらず具体的なイメージが持てないまま、ムスメとの対面のときを迎える羽目になりました。

私は里帰りをせず夫と二人で産後生活を過ごすという選択をしたので、「とりあえず経験者(母親)のやり方をコピーする」というやり方がとれず、自分で情報収集して知識や経験を習得せねばならなかったので、事前に対策ができないというのはとても不安。とりあえず、私が赤ちゃんの世話に集中できるよう子育て以外の部分(主に家事というルーティンワーク)は全て夫その他にアウトソースするという体制は決めたものの、皆が大変と言う「赤ちゃんの世話」が具体的に何で、なぜそんなに大変なのかはどうしても分からなかったため、経験しながら学習していくしかないと腹をくくりました。そして、おもむろにスタートするコソダテライフ。

では、皆が言う「出産後は大変だよー」とは実際はどういう状態だったのか。写真は、産後1か月目の記録です。縦軸は時間、「母」は授乳の記録、「M」はミルク量(cc)、尿と勉はそのままです。これを見ると、24時間休みなしでお世話をしているということが分かります。

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というのも、お腹から出てきたばかりの新生児は昼夜の概念を持たず、まだ脂肪もついていないので栄養のストックがないため、生命を維持するためには2~3時間ごとに栄養補給(授乳orミルク)が必要なのですね。そして、授乳開始後から3時間後にまた授乳の時間がやってくる中、まだ飲み方がうまくないために1回の授乳の所要時間が30分から1時間かかります。これが24時間、週7日で続く、と。きっつー!!

母親はこの授乳と授乳のスキマ時間で、自分の生命と家庭の生活を維持するためのタスク、すなわち睡眠やら入浴やら食事やら家事やらをこなすわけですが、仮眠が長くて2時間しかとれないので慢性的に睡眠不足となり、精神的な余裕は失われている中、追い討ちをかけるようにベビが泣くことでプレッシャーがかるんです。なおベビが泣く理由は空腹やオムツだけとは限らないので、その原因究明と対応をうまく動かない脳みそと身体で行い、失敗すればさらにプレッシャーがかかる。この生活が1ヶ月続くわけです。確かに、これは大変だしウツにもなるなあと思いました。この状況は、例えば一定時間ごとに原因不明のエラーが発生する絶対止めてはいけないシステム(=ベビ)の対応をたった一人で任されてるエンジニア(=母親)を想像してもらえば、この時期の母親業のブラック度合が理解できるのではないでしょうか。

ちなみに病院で教えてもらったのは、新生児は体重kg×(160-200cc)が1日の必要量なので、これを授乳回数(3時間おきなら24時間で8回)で割ったものが1回の授乳量だということでした。だから例えば3000gのベビなら1日トータルで480ccの哺乳料が最低必要で、それを8回で割った量の60㏄/回を母乳とミルクで飲んでいればOK、というボーダーラインを教えてもらいました。母乳は授乳前後のベビ体重を測ることで飲んだ量(=差分)が分かりますので、それが60ccに足りなければミルクを足します。うちはそのために1g単位で測れるベビースケールを使いました。世の中には「とにかく母乳がんばれ」という根拠レス言説が多く母親を追いつめがちですが、このボーダーラインを知っていると、無駄に母乳育児を頑張らずに済むと思います。

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入院中はずっとこの風景を見ながらお世話をしてました。だから4月生まれのムスメの出産の記憶は、新緑。

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