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ベビーシッターさんのススメ

先日、「ベビーシッターを考える会」にてシッターさんたち向けに、一人のシッターユーザーとして、どういうことを考えているかをお話させていただきました。もったいないので内容を残しておきます。これからシッターを使ってみたいと思っている人の背中を押せればいいな、と思っています。なおこの考える会に来ていたシッターさんたちは、私もお願いしたいなと思えるステキな人がたくさんいました。自分の時間を割いてこういう場に足を運んでいる時点で意識の高いシッターさんなので、シッターを検討している人はこういうところに出かければいい人に出会えるんじゃないかと思います。シッター利用に関する不安は情報不足に起因するものが多いので、実際にシッターさんに何人か会ってみると不安はかなり軽減されます。トップ画像は1歳10ヶ月の頃のうちのムスメと、彼女が大好きなシッターKさん。「○日はKさんくるよー」ていうと、「やったー!」って言われます。

Agenda
1. 一例として、私のシッターさんへの頼り方
2. シッティングニーズの切り分けフレームワーク
3. シッターさんにお任せする価値
4. シッターさんの価値・私の場合
5. 利用にあたっての心理的ハードル
6. 対策(シッターサイド&ユーザーサイド)
7. シッターさんとの関係性の築き方
8. シッターさんにお任せするプロセス
9. シッティング風景
10. 最後に

以下詳細です。

1. 一例として、私のシッターさんへの頼り方

①平日のお迎えから夕食まで/月2-3回
仕事柄、残業は前もって分かっているものがほとんど。保育園に子どもを迎えにいってもらい、食事をさせて、私が帰るまで自宅で遊んでもらいます。たまに想定より早く仕事が終わることもありますが、そのときは同僚と食事するなどコミュニケーションの機会にしています。

②出張先ホテルでのシッティング/年3-6回
出産前から続いている仕事で県外で夕方から夜にかけてものがあり、泊まりになるため、ホテルで夕食からお風呂、寝かしつけをお願いしています。こどもにとっても慣れない場所なので難易度が高く、親も心配が多いです。

③勤務先でのシッティング/年1-2回
祝日は保育園がお休み、夫は出勤。まれに私も出勤になるときがあり、そのときにお願いしています。勤務場所まで子どもと一緒に行って現地でシッターさんと落ちあい、仕事時間中はシッターさんとこどもで遊んでもらいます。

私は夫が単身赴任、実家は県外とどちらも頼れず、そのため2人のシッターさん(地元のシッター会社と東京の個人シッターさん)と1人のファミリーサポートさんで上記を対応しています。①は地元シッターかファミサポ、②③は個人シッターさんです。

2. シッティングニーズの切り分けフレームワーク

シッティングの難易度と手に入るリソースを比べながら、依頼先を決めていますが、夫・実家・ファミサポへの依頼しやすさは人によって異なるので、シッターさんの依頼への到達可能性も人によって異なります。実家が頼れるなら、シッターへの到達可能性は低いでしょう。私の場合は、夫・実家はほぼ頼れません。ファミサポは早めに依頼すればほぼOKで、娘もなついているのですが、善意ベースなので融通がききにくいのと、先方宅での預かりなので寝かしつけまではお願いできませんし、お宅へ迎えに行ったりしていると30分ほど余計に時間がかかってこどもの就寝時間が遅くなります。出張先ホテルや勤務先でのシッティングなど、通常より難易度が高いシチュエーションもファミサポさんにはお願いできません。よって、自宅でみてもらえるシッターさんへの到達可能性が高いです。

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3. シッターさんにお任せする価値

「安心安全な預かり」であることは当然。しかし一方でこれは親の利便性だけなので、よほど切羽詰まらない限り、利用するかどうかを迷っている人の心理ハードルを払拭するまではいきません。シッターさんに預けることが安心であることに加えて、こどもにとってもプラスの経験になるということが分かると心理ハードルを越えやすく、相対的に高値でも満足します。私も切羽詰まっていましたが、それでも躊躇いがある中で最後に背中を押したのは、先輩ワーキングマザーの「プロに任せるのはこどもにとってもいいことだよ」という言葉でした。

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4. シッターさんの価値・私の場合

①他人の力を借りることで、こどもの新たな一面を発見できています
親がいないところでこどもがのびのび過ごしている様子を、シッティング後に写真で見たり聞いたりするのは喜びであり幸せです。この子はこんな顔もするんだ、と嬉しくなります。身内じゃないからこそ冷静にこどもの個性を見てくれるし、価値観を押し付けられずに相談できる相手がいるのもありがたいです。

②「こどものために何かを諦める」ということをせずに済んでいます。
親が自分を犠牲にすることは成長機会を失うことに等しく、それは回り回ってこどもに影響すると感じているので、こどもを理由に諦めるということは極力したくないのですが、それが実現できています。自分の娘に「こどものために自分を犠牲にするのが当たり前」だと考える母親になってほしくないし、そのためには私がそういう母親になってはいけないと思っています。もちろん調整しきれずに諦めることもありますが、それは常に「自分のせいで」諦めざるをえなくなった、と思っています。

③いざというときに頼れる先があるという安心感
自分が病気や事故で倒れたり、入院したり、最悪亡くなっても、とりあえずこどもが頼れる人が他にたくさん存在するというのは大きな安心につながっています。「ママじゃなきゃダメ」が多い状態は、万が一のときのリスクが高いと思っています。私がシッターさんを使うことにほとんど罪悪感を持っていないのは、いいシッターさんに恵まれているということに加えて、こどもにとってのリスクヘッジをしているという意識があるというのも大きいです。

5. 利用にあたっての心理的ハードル

周りの「シッターさんに興味はあるけどハードルが高い」と感じている人に訊ねてみたところ、次のような不安があるそうです。

①シッターさん個人に対する不安
不在宅にいれることの羞恥心、盗難トラブルへの恐れ、等

②サービス品質に対する不安
周りに使ってる人がいない、密室でこどもを任せるのが不安、万が一の事故の不安、情報不足による漠然とした不安、等

③シッターさんを探す労力が負担
信用できる人を見つけるのに時間と手間がかかる、いいシッターさんを見極める自信がない、等

④預けることへの心理的負担
保育園に加えてさらに他人に預けることの罪悪感、周りへの負い目、専業主婦の母親への劣等感、等

⑤預けることで発生する金銭的負担
実家やファミサポと比べると高い、人数が多いので金額がかさむ、金額と比較すると預けることで得られるもの(仕事・息抜き・勉強)がそこまで価値のあるものだと思えない、等

6. 対策(シッターサイド&ユーザーサイド)

これらの心理ハードルを越えるために、シッターさん側でできる対策を考えてみました。

①シッターさん個人に対する不安
シッティングをお願いする前に、シッターさんの人柄を知れる機会が欲しいです。資格はあって当たり前で、それ以上に保育経験が豊富か、信頼できる人柄か、こどもにいい経験をさせてくれるかが気になります。

②サービス品質に対する不安
本格的に任せる前に、親の目の届く同室シッティングを割引価格で受けられると一歩を踏み出しやすく、かつ品質が確認しやすいです。また、シッティング中にこどもの様子を写真で送ってくださるとすごく安心するし、結果的に仕事に集中できます。

③シッターさんを探す労力が負担
一人ずつではなく、一度に複数のシッターさんに会える機会があると探す労力が小さくなるので助かります。なおユーザーはWEB等の情報はほとんど信頼しないので、現在のクライアントに他の方を紹介してもらうなど、口コミを活用するほうが早いと思います。

④預けることへの心理的負担 
預けることが親のためではなく、こどもにとってもプラスの経験であることが納得できれば心理的負担はかなり小さくなります。親は常に罪悪感と戦っていますので、シッターさんはプロの保育者として親を安心させてほしいです。 

⑤預けることで発生する金銭的負担 
会社から補助が出る、経費処理ができれば有難いです。ただサービス品質が高いことさえわかれば、値段はさほど気にならない場合も。

次にユーザー側でできる対策を考えてみました。

①シッターさん個人に対する不安
シッターさんは、こどもとの相性以上に、自分が人としてその人を信頼できるかどうかで判断するとよいです。そのためにも、自分が一人のオトナとして、人を見極める目を培いましょう。例えば私は、「お客様のご要望になんでも応えます」というタイプのシッターさんはあまり好きでなく、「私はこう思っていますが貴方はどうですか?」「いえ、私はこう思います」というコミュニケーションができる専門家、すなわちNOを言える専門家を信頼する傾向があるので、それと同じ基準で判断しています。

②サービス品質に対する不安
比較対象がないと品質が判断できないので、信頼できる人に出会うまで、複数のシッターさんに会って目を鍛えましょう。時間がかかるので、余裕のある育休中に済ませておくのがオススメ。一方で、「100%満足できるシッターさん」は「100%満足できる夫」並みに青い鳥です。最高の人ではなく、満足できる人を探しましょう。

③シッターさんを探す労力が負担
いい人に出会えれば、こどもの人生も親の人生も豊かになります。目先のニーズだけでなく、こどものためにも長く定期的にお付き合いするつもりで探しましょう。なお、おそらく知り合いに信頼できる会社や個人を紹介してもらうのが一番確実かつ効率的です。

④預けることへの心理的負担
これは親のための投資ではなく、こどものための投資なのだと理解できれば、この負担は一気に小さくなると思います。

⑤預けることで発生する金銭的負担
ルールで縛られている会社より個人のシッターさんのほうが融通がきくため、トータルでみると安い場合があります。個人でやっている方はプロ意識も強いです。

7. シッターさんとの関係性の築き方

私がシッターさんとお付き合いするときに気を付けていることを、まとめてみました。

①まずは親がシッターさんを信頼するようにしています
「親が信頼している人をこどもは信頼する」と感じているため、こどもとの相性以上に、親が人として信頼できる人を探します。

②任せると決めたら細かい注文はしません
信頼すると決めたら、多少自分のやり方と違ってもその人に全てお任せ。中途半端に口出しするより、その人がやりやすい環境づくりに徹するほうが、こどもにとってプラスだと考えています。

③シッターさんは「専門性のある友人」だと思っています
労使関係(上下関係)で付き合っているとこどもがシッターさんを舐めるようになり、誰も幸せにならないと思っています。なので対等な関係でいたいと思います。

④シッティングの前後は一緒に過ごします
依頼の初期や出張先など慣れない場所では、なるべくシッターさん・こども・私の3人で過ごす時間を作り、「ママはこの人を信頼しているんだよ」という姿をこどもに見せるようにしています。「シッターさんイコールママを私から遠ざける人」という構図がこどもの中にできてしまわないよう、気を付けています。

⑤定期的・長期的にシッティングをお願いします
依頼と依頼の間が空くとこどもが忘れるし、頻度が低すぎるとシッターさんの安定収入にもならないので、気を付けています。

8. シッターさんにお任せするプロセス

STEP1: 自分のニーズを把握する
定期的なのか、不定期なのか?頻度は?時間帯は?必要になるのはどれくらい前にわかるか?急な依頼は発生しうるか?などを、自分の生活をシミュレーションして明確にする。育休中は一時保育があれば十分かもしれないが、復職してしまうと圧倒的に必要なのは夕方から夜の時間帯だと思います。

STEP2: 本格的にお願いする時期を決める
不在時のシッティングをいつから始めるか?をまず決める。ゴールを決めないと何も始まらないので、仮でもいいので決める。

STEP3: 時間に余裕を持ってシッターさん探しを始める
例えば4月からお願いしたいのであれば、1月に探し初めて面談をし、2月に母同伴でのシッティング、3月は短時間の慣らしシッティング数回を実施すると理想的。慣らし中は親が近くにいるとこどもが甘えに来てしまい、親が相手をしているとこどもがシッターさんに慣れないので、親は出かけてしまうが吉。

STEP4: 任せる!
不安や不信をこどもに見せない、行ってきますやただいまのぎゅーはしっかり。ママは出かけるけどちゃんと帰ってくる、帰ってきたら遊んでくれる、とこどもにパターン認識させます。先が分からないから分離不安があるわけで、先の見通しがつけばこの不安は軽減されるので。あとたとえ会話が成り立たないゼロ歳児でも、事前に「○日はシッターさんが来る日だよ」という声掛けをしておくと効果があるようです。

9. シッティング風景

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10. 最後に

育児と仕事の両立は、多くの方の協力と理解ありきで成り立ちます。気疲れもするしお金もかかりますが、それでも仕事を諦めないことで見える世界は、どちらかだけをしているときに見える世界とは違う充実感に溢れています。私は挑戦し続ける親の背中を見せることが、こども自身が生きる上での選択肢を増やすことにつながると考えていますので、自分以上にこどものために、今後も挑戦をしていきたいと思っています。

そして、その力強いパートナーがシッターさんだと思っています。シッターさんが働きやすい社会づくりの一助を担いたいと考えて、この文章を公開しています。

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1歳10ヶ月のころ、子連れで1週間のサンフランシスコ出張での1コマ(シッターさん撮影)

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