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ChatGPT関連の論文:APIコストの削減とパーソナライゼーション技術の解明

本日、ChatGPTのパーソナライゼーション実装のための技術に特定されそうなリークがXにポストされていましたので共有します。

彼がGithubにあげたというLanguage Model Inversion論文をこのポストで紹介しています。

ポストの内容を要約すると以下のようになります。


ChatGPTのAPIをジェイルブレイクする面白い研究

研究チームは、言語モデルが出力する全確率ベクトル(約50,000トークンにわたる確率)を復元する方法を開発しました。通常、OpenAIのAPIは最も高い確率を持つトークンだけ、または上位5つの確率のみを返しますが、研究には全ベクトル(全50,000個の数値)が必要でした。

ここで重要なのは、APIに「logit bias」というパラメータがあることです。これにより特定のトークンの確率を上下させることができます。彼らの洞察は、各トークンに対してlogit biasの値を二分探索することで、そのトークンが最も可能性が高くなる正確な値を見つけ出し、そのトークンの相対的な確率を得ることができるというものでした。

さらに、OpenAIが上位5つのログ確率を提供する設定では、より効率的なアルゴリズムがあります。特定のトークンの確率を得るには、そのトークンに非常に大きな固定のlogit biasを加えます。新しい確率がわかれば(そのトークンが上位5つの中に入るため、OpenAIが提供します)、元の確率を閉じた形で解くことができます。

この新しい方法では、OpenAIが1回のAPIコールで上位5つのトークンの確率を提供するため、全ベクトルを約1,000のクエリで取得できます(50,000/5≈1,000)。

興味深いのは、二分探索アルゴリズムのコードを公開した後、他の研究者から上位5つのアルゴリズムに関する数学を含むメールを受け取ったことです。彼らはこのアルゴリズムを実行するコードや論文も公開しています。

論文はこちら↓

コードのリポジトリはこちら↓

特定のトークンの確率を上下させる仕組み

「特定のトークンの確率を上下させる」というのは、言語モデルの「温度調整」とは異なる機能です。

  • 温度調整: これは言語モデルの出力の多様性を調整する方法です。温度が高いほど、モデルはより予測不可能で多様な出力を生成し、温度が低いほど、より確実で一般的な出力を生成します。しかし、これは全体的な確率分布に影響を与え、特定のトークンをターゲットにするものではありません。

  • Logit Bias: これは特定のトークンに対する確率を意図的に上下させるためのものです。つまり、特定のトークンが生成される確率を人為的に増減させることができます。これは、モデルが特定の単語やフレーズを使用するかどうかを制御するのに役立ちます。

簡単に言うと、温度調整はモデル全体の出力スタイルを変えるのに対し、Logit Biasは特定のトークンの出現確率を直接調整します。

Logit Biasはパーソナライゼーションにカスタマイズされた応答生成に非常に有効なツール

この技術を使用することで、特定のトークンや話題に関するモデルの傾向を調整することが可能なため、数週間の間に実装を予定されているパーソナライゼーションにこの技術が使われている可能性があります。

Logit Biasにより、次のような応用が考えられます:

  1. ユーザーの好みや関心事への適応: ユーザーが特定の主題やスタイルに興味を持っている場合、そのトピックに関連するトークンの確率を増やして、モデルの応答をそのユーザーの興味に合わせることができます。

  2. コンテンツのフィルタリングや調整: 不適切なコンテンツや特定のトピックを避けるために、関連するトークンの確率を減らすことで、モデルの出力を調整することが可能です。

  3. 特定の応答スタイルの促進: もしユーザーが特定の文体や表現を好む場合、それに関連するトークンの確率を増やすことで、そのスタイルの応答を促進することができます。

  4. アプリケーション固有のニーズに対応: 特定のアプリケーションやドメインに適した言語使用を促進するために、関連する専門用語や特定の言葉の使用を促すことが可能です。

これらの応用は、ユーザー体験の向上、より関連性の高い応答の生成、そして特定のコンテキストや要件に合わせた柔軟な応答能力を可能にします。ただし、このようなカスタマイズは慎重に行う必要があり、誤ったバイアスの導入や不適切な内容の生成を避けるための注意が必要です。

OpenAIからの公式発表なない

もしOpenAIがChatGPT Plusやその他の製品で「logit bias」を使用している場合、それに関する情報が公式には公開されていない状況で外部の研究者や開発者がこのような情報を発見し公開することは、ある意味でリークに当たる可能性があります。

ただし、このケースでは、研究者がAPIの公式文書化されていない振る舞いや特性を発見したという状況であり、必ずしも内部情報のリークとは限りません。研究者によるAPIの探索や実験は一般に、APIの潜在的な機能や限界を理解するために行われます。

Logit biasは理論上、ユーザーごとのカスタマイズやパーソナライゼーションに使用することが可能ですが、それがChatGPT Plusや他のOpenAIの製品で現実にどのように利用されているかについては、OpenAIからの公式な発表や文書を参照する必要があります。ユーザー体験のパーソナライゼーションは多くの要素を含む複雑な領域であり、多様な技術やアプローチが考慮されることが一般的です。

Language Model Inversionに対する質問を検証

下記のリポストは、元のポストにおける言語モデルの確率ベクトルの復元に関する技術的な質問をしています。具体的には、次の2点について尋ねています:

  1. 「Is it still the tokenizer the transpose of the output softmax?」: この質問は、言語モデルの出力における「softmax」関数と「tokenizer」の関係について尋ねています。Softmax関数は、モデルの出力を確率分布に変換します。この質問は、出力のsoftmaxが、トークン化プロセス(入力テキストをトークンに分割するプロセス)の逆行列(transpose)かどうかを尋ねているようです。これは、モデルの出力層と入力層の関係に関する技術的な問いです。

  2. 「Can you fully recover then the tokenizer of the model?」: こちらの質問は、先述の技術を用いることで、モデルのトークン化プロセスを完全に復元(recover)することが可能かどうかを尋ねています。つまり、モデルがどのようにテキストをトークンに分割し、それに基づいて出力を生成するかのプロセスを理解できるかどうかについての質問です。

要するに、これらの質問は言語モデルの内部動作、特にモデルがどのようにテキストを解釈し、それに基づいて出力を生成するかについての深い理解を求めています。

リポストされた質問に対するJack Morrisの回答

ポストされた質問の一部に対して直接的な答えを提供しています。彼の答えは以下のようになっています:

  1. 「not sure what your first question means」: まず、最初の質問(「Is it still the tokenizer the transpose of the output softmax?」に関して)について、彼はその質問の意味が不明確であると述べています。これは、質問が技術的に曖昧または不正確である可能性を示唆しているか、あるいは彼自身がその質問の意図を完全には理解していないことを意味しています。
    (※この質問は、言語モデルの内部構造や動作に関する深い理解を必要とする専門的なものであり、Jack Morrisがその質問の意図を完全には理解しなかった可能性があります。また、質問が技術的に不正確かつ曖昧であったことも、彼が直接的な回答を避けた理由の一つである可能性があります。言語モデルの動作を説明する際には、より明確で正確な用語の使用が重要です。)

  2. 「but in this case we rely on knowing the tokens of the tokenizer; openAI gives us back key-value pairs of token-logprob」: ここでは、彼らの研究方法について説明しています。彼らのアプローチでは、トークン化器(tokenizer)のトークンを知ることに依存しています。つまり、彼らはOpenAIのAPIからトークンとその対応する対数確率(logprob)のキーバリューペアを受け取り、それを基に作業を進めています。これは、彼らが言語モデルの出力の確率ベクトルを復元するために、モデルのトークン化プロセスに関する既知の情報に依存していることを意味しています。

Jack Morrisがいくつかの重要なトピックを捕捉

ack Morrisが述べている内容は、彼らの研究や取り組みに関連するいくつかの重要なトピックを指しているようです。具体的には、以下の3つの点に言及しています:

  1. Inverting Prompts from Logits: これは、モデルの出力(logits)から入力プロンプトを逆算するプロセスを指している可能性があります。Logitは、ネットワークの最終層の出力であり、通常はsoftmax関数を通して確率に変換されます。この「逆算」とは、与えられた出力から、その出力をもたらした可能性の高い入力を推測するプロセスを指すと考えられます。

  2. Training Data Detection: これは、特定の入力や出力がモデルのトレーニングデータに基づいているかどうかを検出する技術に関連しているかもしれません。Weijia Shiという名前は、この分野で研究を行っている個人またはチームを指していると考えられます。トレーニングデータの検出は、モデルの透明性や偏りの評価に重要な役割を果たします。

  3. Distillation: これは、大きなモデル(例えば、大規模な言語モデル)から重要な情報を抽出し、それをより小さく、効率的なモデルに「蒸留」するプロセスを指しています。これにより、モデルのパフォーマンスは維持しつつ、計算資源の消費を減らすことができます。

これらのトピックは、AIと機械学習の分野で現在進行中の重要な研究領域を反映しており、モデルの理解、効率化、そして倫理的な使用に関連しています。

APIのより効果的な使用やコスト削減に寄与する可能性

Jack Morrisが述べた「inverting prompts from logits」、「training data detection」、および「distillation」という研究トピックは、APIのトークン消費を抑えることを直接の目的としているわけではありませんが、このような研究がもたらす洞察は、間接的にAPIのより効果的な使用やコスト削減に寄与する可能性はあります。これらの研究は、言語モデルの理解を深め、より効率的で透明性の高いAIシステムを構築することを目指しています。

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