ショートショート 3/7 「何か始まりそうな予感」

 【毎日の楽しみと言えばパンの配給を食べることだ。隣国のナクバタ国と国境線付近で緊張が高まっており、前線の兵士に兵糧が多く与えられており、配給のパンの量が減ってきている。

「また、新しく追加されたってよ」
「ほんとか、いい女がいればいいなぁ。」

耳障りな話が聞こえてくると同時に心がざわついた。またユーネス族が捕らえられたのか。


この国には2つの民族が暮らしており、アストノン王国を建てたアストノン族、そして、その地に元々住んでいたユーネス族だ。アストノン王国を建国したアストノン王はとても尊敬しているが、ユーネス族を奴隷として扱い、見世物のようにして民の不満を抑えているやり方は気に入らない。


配給で貰ったパンを半分に千切り、家へ持ち帰る。見る度にボロ屋だと思い嫌になる。こんな家とはおさらばして、将来城を建ててやるんだと再度思う。

「ただいま、帰ったぞ」
「遅かったじゃねーか。おいおい、パンはたったそれだけか。」
「最近は兵士が優先され、市民は後回しだから仕方ないだろ。」
「食い倒れちまうよ。こんな少ない食料じゃ。」
「つべこべ言ってないで食べろ。文句を言うなら王に進言しろ。」

同居しているのはユーネス族のコリンス・ファー。ファーは道で餓死しそうなところを助けた時からずっと家に居候されている。ユーネス族は配給を貰えることができず、食に困るため奴隷として農園で働く人が多い。というより連行される。ファーは奴隷としての扱いに嫌気が差して逃げ出してきたそうだ。そこを私が助けたというわけだ。
なぜだか分からないが、ファーはアストノン語を話すことができる。私が配管工として働いている間、一応掃除担当として働いてもらっている。

「計画の方は着実にすすんでるぜ。」
「前にも話したが、計画の中で一番難しいのが門を突破することだ。屈強な門番が守っている。まさに"鬼門"だ。」
「ほんと、お前はその顔で冗談言うなんて変わってるな。」
「顔は関係ないだろ。それでどうなんだ。一日中寝ていたんだから考えていたんだろうな。」
「あぁ、突破する算段はついた。あとはユーネス族をお前がまとめれるかどうかにかかっている。」
「それについては任せておけ。」

私たちの計画はユーネス族が捕らえられている収容所を襲撃し解放するというものだ。そこには何万人ものユーネス族が酷い目に遭っている。ファーとの初めての夜にこの話を打ち明けると意気投合し、協力してくれるとのことで勝手な居候も許している。

この国の民はユーネス族が酷い目に遭っているのが普通だと思い込んでいて麻痺している。こんなことはあってはならないのだ。私が絶対にユーネス族を助け、どんな民族であっても平等に扱う国を作ってみせるのだ。】
                〜おしまい〜


「ままぁ、この絵本ここで終わりなの?この続きは?」
「これがパート1みたいだねー。えっと、続きは、、、パート65まであるみたい。」

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