プライド高き戦士たち

私が配属されている部署はDRRO(Disaster Risk Reduction and Management)と言って、災害時の被害を軽減させることを主な業務としている。また、住民が怪我をした際には、赤灯の付いた車両で現場に急行し手当てを行うことも業務の一つとしている。そのため同僚たちはfirst aidのスキルも有している。

私は着任してまだ1週間であるが、少しずつ知識の共有を行っていこうと思い、スパインボード(全脊柱固定器具)の正しい取扱い方法について共有を行った。
同僚たちは普段からスパインボードを現場で使っていると言うことで始めにどのように取り扱っているかを見せてもらうことにした。
同僚たち「じゃあ、始めるね!」
私の心の声「、、、あれ?全然できてないじゃん」
スパインボードはその名の通り全脊柱を固定することで交通事故等で損傷した脊椎を守る・悪化させないことを目的として現場で使用される。
しかし彼らは患者役の脊椎を守ることを一切考えておらず、ただボードに乗せれば良いんでしょ?って感じでスパインボード上に患者役を収容した。

そこで私は展示を行った。
私「今あなた達が行った方法だと脊椎がズレてしまって患者さんの状態を悪化させる可能性があるよ。だからこのようにやると良いよ」
※下の写真のような方法を展示した。

Cleary, Michelle A., Flanagan, Katie Walsh. Acute and emergency care in athletic training. 

Huma Kinetics, 2020

すると、同僚たちは「人をまたぐことは良くない!それはフィリピンではNG行為だよ。」
私「日本でもNG行為だよ。でも救急現場においては例外だよ。スパインボードを使う目的は私達の活動中に患者さんの脊椎を傷つけずにニュートラルな状態に保つことだよ。」
同僚たち「それでもフィリピンでは人をまだくのは良くない。それに患者をまだくときにスリップする可能性があるじゃない!?」
私「じゃあ重心を低くして患者さんをまたぐか、足元から患者さんをまたいだ状態で胸のあたりまで移動したら?」
同僚たち「それでも結局人をまたいでいることになるから良くない。」
私「でもこれが正しいやり方だよ。そうしないと私たちの活動で損傷を起こしているかもしれない患者さんの脊椎をさらに傷つけ患者さんが車椅子生活になる可能性もあるよ」
同僚たち(不機嫌そうな顔)
部屋が不穏な空気に包まれたので、私はこれ以上は何も言わず自然に講義が終了する形となった。

消防歴16年で後輩たちに分かりやすく伝える方法、人による飴と鞭のパーセンテージの使い分け(ある人は飴70%、鞭30%など)、人の心のやる気スイッチを入れる方法などを研究して、人よりは物事を伝えることが上手である自負はありますが、なんせここはフィリピン。文化や習慣の違いもあるし、言葉の壁も大きい。日本語なら上手な表現を用いて説明できるが、今の私の英語だと単調に物事を伝えることしかできない。ましてや同僚たちからしてみれば1週間前にやってきたばかりの外国人が生意気になにゆうてんねん!って感じか、、、ってことで自分を納得させた。

さぁこれからどんなアプローチが最適か考えなきゃ!
その前に英語力を上げなきゃだけど。

てなことで、休日は気分を入れ替えに自宅から1時間ほどのところにある海辺へ行ってきました。
景色は最高でしたが、周りはカップルだらけで寂しい気分にもなりました(笑)

Lemeryからの夕日🌆

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