建設業界で注目の「新3K」って何?実現に向けた取り組みを紹介します!
今、建設業界で注目されているキーワード「新3K」。これは、2015年に国土交通省が発表した「新3Kを実現するための直轄工事における取組」で初めて用いられた言葉です。それまで「3K」とは“キツい・汚い・危険”を表すネガティブなもので、建設業界の労働環境イメージを想起させる言葉でした。そうしたイメージを払拭し、より良い労働環境へ変革する考えのもと「新3K(給与・休暇・希望)」を定義。実現に向けた取り組みを、国・業界が一丸となって推進しています。
特に2024年の今年は、建設業における「働き方改革関連法」の適用に伴い「時間外労働の上限規制」および、中小企業への「時間外労働に関連する割増賃金引上げ」が施行されました。建設業界で働き改革が進行途上の中、「新3K」について解説していきます。
【参考】 新3Kを実現するための直轄工事における取組(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001368311.pdf
『新3K』の定義
2015年に初めて国土交通省が発表した「新3K」では、「給与・休暇・希望」の3つのキーワードを掲げています。建設業界における労働環境の改革・改善の象徴的キーワードとして定義されたこれらは以下のようなポジティブな意味合いを持ち、目指すべき「3K」として提唱されています。
◆給与
建設業界の給与水準向上を目指す施策として、「労務費見積り尊重宣言」促進モデル工事が進行中です。これは、一般社団法人日本建設業連合会による「労務費見積り尊重宣言」を踏まえ、下請企業からの労務費見積を尊重する企業を、優位に評価する取り組みです。また、建設キャリアアップシステム(CCUS)使用を義務化し、目標達成状況に応じて成績評点を調整するモデル工事の発注を推進しています。この取り組みは一般土木を対象としており「義務化モデル工事」や「活用推奨モデル工事」が発注されています。
◆休暇
「休暇の取得促進」施策の一つが「週休2日対象工事」。これは工事期間中における週休2日確保状況に応じ、労務費など補正と共に成績標定を加減点する「週休2日対象工事」を発注する施策です。また、「適正な工期を設定するための具体的・定量的指針」が2020年3月に策定されました。この指針では、施工実日数や準備・後片付け期間、休日といった要素を考慮して、余裕期間制度の原則活用が求められています。
◆希望
「将来の希望」を指します。建設現場の生産性向上を目指す取り組みの一つに「i-Construction」推進があります。これは、必要経費の計上にとどまらず、総合評価・成績評定を加減点する「ICT施工」を推進するものです。また、2020年度には、改正品確法に基づき「中長期的な工事発注見通し」が作成・公表されました。翌年1月には「建設業界のリブランディングを目的とした提言」がとりまとめられ、建設業界の「誇り・魅力・やりがい」の醸成を推し進めていくこととなりました。
以上のように、従来の「きつい・汚い・危険」というネガティブイメージを払拭して、建設業界の魅力を再発見し、若い世代や新しい人材を引き付けることを目的としています。
旧来の3Kとの違いとは?
これまでに呼称されていた「3K」とは、主に以下3つの日本語の頭文字を取って構成されていて、1980年代のバブル期頃から使われ始めたといわれています。
「3K」の仕事は、主に肉体労働を伴う職種や業種、特に建設業や清掃業、工場での製造作業などに関連しています。これらの仕事では一般的に労働者が過酷な労働条件のもと、厳しい環境で働くことが多いため、この表現が広く使われるようになりました。
例えば、建設業では肉体労働が中心で、体力的に非常に厳しいです。さらに、汗や泥にまみれることが多く、不衛生な環境での作業が日常的です。また、労働災害のリスクも高く、安全面での問題も多く存在します。
このような理由から「3K」というイメージが強く定着しました。「3K」環境下の労働は、体力的にも精神的にも大きな負担を伴い、社会的に避けられる傾向があります。しかし、その仕事の重要性と必要性を理解し、労働環境の改善に向けた努力が今日まで続けられています。
新3K実現に向けた必要な取り組みとは?
「新3K」の実現。そのためにはどのような取り組みが必要とされているのでしょうか?以下4つのポイントから紹介します。
◆生産性向上・建設DX
建設業界において進行中の「建設DX(=デジタル・トランスフォーメーション)」は、最新のデジタル技術を活用し、建設現場の生産性を飛躍的に向上させています。BIM(Building Information Modeling)やドローン、AIなどの先進テクノロジーを導入し、プロジェクト管理を効率化。これにより、作業精度・正確性を飛躍的に高め、省人化やコスト削減、工期短縮を実現します。
◆働き方改革
生産性の向上、および労働環境改善を目指した、働き方改革や新たな働き方の導入が進行中です。例えば、AIを活用した労務管理システムの導入事例があります。これは現場作業員の健康管理や勤務状況を迅速に把握して疲労の度合いをチェックすることにより、一人一人に適した予防策や作業スケジュール調整などを行うシステムです。さらにはフレックスタイム制度やリモートワークの導入、現場の安全管理強化など、多様な働き方を支援する取り組みも進められています。これにより、ワークライフバランスを保ち、従業員の満足度や生産性を向上させるとともに、個々の長期的なキャリア形成を支援します。またオンライン会議の活用により、現場に行かなくても打合せや遠隔での施工状況確認が可能になるなど、建設現場での働き方改革も少しずつ改善されています。
◆人材育成
「新3K」は業界の未来を担う人材育成にも注力しています。専門的な研修プログラムや各種資格取得のための機会を支援・提供し、VR技術などを活用した教育プログラムによって、現場で起こり得る危険を疑似体験させるなど安全意識向上に寄与しています。また、若手からベテラン技術者に至るまでを幅広く持続的な学びの環境を整備し、OJTを通じて実践力を育成しています。これにより、次世代を担う新入社員が建設業界および業界での多岐にわたる仕事の内容を理解し、成長の意欲を向上させると共に、建設業界全体が成長していくことを支援しています。
◆担い手の確保
建設業界は高齢化と少子化の進行に伴い、深刻な人手不足に直面しています。そのため、次世代の業界を担う人材確保に向けた取り組みが進められています。例えば、「新3K(給与、休暇、希望)+K(=かっこいい)」というコンセプトを打ち出し、建設業の新たな魅力を広く伝える活動が展開されています。特に、災害における迅速な復旧対応や地域への貢献が強調され、社会における建設業の重要性を知らしめる取り組みが進んでいます。また、女性が働きやすい環境整備も進んでいます。トイレや更衣室、作業着の改善や、職場環境の見直しなどが行われ、女性が活躍できる業界を目指す様々な施策が進んでいます。これにより、多様な人材が建設業界で活躍できる場が整えられつつあります。
こうした取り組みと共に写真や動画、SNSなどを活用した情報発信が強化され、建設業界の魅力を社会に広く伝えるための努力も怠りません。これら施策を継続的に行っていくことによって、建設業界は持続可能な発展を目指し、多様な人材の確保と活躍の場を提供していきます。
さいごに
いかがでしたでしょうか?これまでの「3K」と、これからの目指すべき「新3K」との違いが理解いただけたのではないかと思われます。進化するテクノロジーやシステムを活用して、従事する人の肉体的・精神的負担を軽減し、労働災害リスクの低減。またワークライフバランスが保証されて、安心して働き・成長していける建設業界を目指し、建設業界内外では絶え間ない努力がこれからも続けられていきます。
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