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クリエイティブを発揮するには

クリエイティブを発揮して何かを創ろう!というときには、3つのキーワードが存在すると、デザインコンサルティングのIDEO日本代表 野々村健一氏の講演で伺った。

1.インスピレーション
2.人間中心デザイン
3.実際のアクティビティ

以下は講演から、私独自の視点での解釈を綴ってみる。

1.インスピレーション

 人の脳は環境からの刺激により連想や予測をし、「きっとこうなる、こうだろう」という「直感モデル」を構築する。そして、それを仮説として推論や感情によって新しい情報を生み出す「情報創成」を行っている。前者の「直感モデル」は、外界への働きかけによって得られる反応の違いから随時更新される。つまり、主体的な外界との相互作用が、インスピレーションの根源的アプローチになる。外界とは、人や人以外のモノ、森羅万象から得る影響のこと。
 直感モデルを新しく創造したり、更新するには、変化を起こす必要があるが、新しい場所、人、コトを求める以外にも、日常の中での「視点」を変えて「観察」をすることで発見を得られる。例えば、いつもの風景を目線の高さを変えて見てみたり、視覚情報でなく音に注目してみたり、、
 次に、得た外界からの情報をもとに「情報創成」をするプロセスでは、自分との対話という手法の他に、複数の仲間と、同じ外界との相互作用体験を行い、互いに意見交換をすることで発想を広げていくこともできる。

2.人間中心のデザイン

 人間中心のデザインのためには、誰がどのように使うのか、ということを注意深く観察することが大事なのであるが、これはデッサンのプロセスに通ずるものがある。
 デッサンは、例えばリンゴを描く場合、これは「リンゴ」という概念は一度捨てて、目の前の物体の形や光の当たり具合、色の違いを注意深く観察して「1つのモチーフ」として捉えて描いていく。人間は目で見ている情報と脳で処理している情報に乖離があるので、「リンゴ」ということを意識してしまうと、目の前のモチーフが脳で自分が知っているりんごに変換されて描いてしまう。つまり、脳の変換機能を押さえ込み、目の前の対象のありようをそのまま捉えることが肝要になる。

3.実際のアクティビティ

 プロトタイプを沢山すること。そうすると、最初に立てた仮説や問いをその分アップデートしていくことができる。ここのポイントは、「変化を許容すること」。
 最初の問いに対して、答えの部分を変えていくことは比較的心理的ハードルも低いが、問い自体を変えてしまうことは勇気がいる。しかしながら、時には問い自体も更新していく「変化への許容性」がクリエイティブには求めらる。
 これも、絵を描いていると起こり得ることで、最初にスケッチブックに描いたエスキース(下書き)を元にキャンバスに筆を置いていくが、描き進めるうちに当初思い描いた絵のイメージが変わっていくことはよく発生する。その際にあくまで最初のイメージに固執するのか、変化を許容してライブ感覚で絵を仕上げていくのか、判断に迷う時がある。正解があるわけではないが、個人としては後者を許容して自分の直感に従って描き、うまくいかなければ塗りつぶしてさらに上から描く、という、プロトタイプ的なことをキャンバスの上で繰り広げていくことで、最終的に満足できる絵が仕上がるように感じている。
 
 先日、ポーラ美術館にて「ピカソ 青の時代を超えて」を見に行った。その際、1つのキャンバスの上に描いた絵を塗りつぶして別の絵を描く、ということを繰り返して制作されている作品の解説をみた。
 絵の具とキャンバス、今この瞬間自分が描いた線らと対話をしながら、インスピレーション得て絵を描き進め、思うようにいかなかった場合は何度も追加したり、描き直したりする、という作業工程が、巨匠が作品を制作する上でも行われていることに、一つのクリエイティブのモデルを見た気がした。

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