憧れたラ・サールへ。~プロローグ~
いつもそうなのだ。
自分に自信がある。
ほどなくして少年は環境に敗れ、自信の正体が過信だったことを知る。
ラ・サールという学校を知らない人のために簡単な説明を。まぁ鬼の進学校です。自称じゃないやつです。偏差値78です。どんだけ謙遜してもすごいやついっぱいいました。中3までの普通の授業で英語ペラペラになったやつとか、単純に全国模試1位とか。
こんなのを相手にすると、自分なんて中途半端で。「ある程度勉強ができること」はアイデンティティじゃなくなりました。
求められたのは激しすぎる競争に置いていかれないだけの学力と、それ以外でした。
衝撃の入学式
2009年4月、ラ・サール中学校に入学しました。塾のクラスメイトもたくさん受かったので、そこそこの知り合いと共に入学式を迎えることに。
式が厳かに進む中、一通のアナウンスが会場に流れる。
「この中にドクターの方はいらっしゃいますか?」
誰かのおじいちゃんが貧血(?)で倒れてしまったそう。人命を左右するこのアナウンスに、医者は必ず立ち上がらなければならない法律があるそうで。「....え?保護者退場?」僕はマジで思いました。アナウンスと同時に保護者席の半数以上が立ち上がり、たぶんボーッとしてたんでしょう。高卒の母もキョロキョロしながら立ち上がっていました。
「ヤバい学校に来てしまったかもしれない」
式を終え、1年B組はじめてのホームルーム。そのなかで放たれた担任の広岡先生の言葉が印象的でした。
「これから君たちを一人の大人として扱います。」
他のみんなが覚えているのかも、どう受け取ったかも分からないけど、この言葉は自分を大人だと勘違いし始めた12歳の承認欲求を満たしてくれました。
ここから僕はラ・サールではまぁまぁの、世間一般では常識はずれの量の努力を重ねて、少しずつ自信をつけながら、アイデンティティを拾い集めて今の自分を形成していきます。
野球部へ
母の命令で従って良かったと思うものがいくつかあります。「運動部に入りなさい。」もその1つでした。運動部...小学生の頃は塾に通い始めてから体育すらサボりがちだった僕。当時一番仲良かった(と思っていた)井上くんというやつが野球部に入ったので野球部に入りました。マジでそれだけです。
さてさて運動神経もなく、成績も部内では下から数えた方が早くて。これといった個性もないし、今とはほぼ180度違うキャラクターになってしまいます。無口、内向的、自分への自信ゼロ。実際、当初20人ほどいた同期の中で先輩に名前を覚えられたのは限りなくビリに近かったと思います。
練習も嫌いで、まともなグローブも持っていなかったので初めはどこで買ったのかも分からない合成皮のやっっすいやつ。捕球が痛くて左の人差し指はすぐにうっ血を起こしてしまいました。同期も井上くんとあと数人好きなやつがいたくらいで、部室で話すことが少なかった寮生はみんな怖いし、先輩なんて怖くてたまらなくて。存在価値のない自分に居場所なんて見つからなくて、辞めたくて辞めたくてしょうがなかった。ここから少しずつ少しずつ野球を好きになり、このコミュニティを好きになり、このコミュニティが僕にとって宝物になるのはもう少し先のお話です。
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