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EUが原発を「グリーン(環境に優しい)」発電と認定したってどういうこと?

2022年1月1日。
EUから脱炭素関連でいきなり驚く見出しが届きました。

欧州委員会、原子力発電と天然ガス火力発電を「グリーン」電源と認定方針

要するに、「EUは原発とガス発を持続可能なエネルギーと認めた」ということになります。

このニュースと同時に、
「やっぱり再エネ先進国の欧州も白旗揚げた」
「やっぱり原発は不可欠だ」
「そもそも脱炭素社会なんてそもそも無理」
という声が広がりました。

以前から原発についてはEUでも議論はされていましたが、ここ20年の動きを一気に後退させる今回の方針はおかしいなと思いました。

今回のnoteは自分も気になったので、自分なりに調べてみた内容を共有したいと思います。そこには、しっかりと「条件」が書かれていました。

福島第一原発 2021

早速、今回の記事(Financial Times, Bloomberg)を英語で読んでみました。

"the EU’s green label should be awarded to controversial energy sources including nuclear power and natural gas under certain circumstances"

欧州委員会:「一定の条件下」で、議論されている原発とガス発を「グリーン(持続可能な電源)」として認定する方針

「一定の条件下」とは?


例えば、
●原子力発電を「グリーン」と認める条件は、

  1. 2045年までに建設許可を得ている

  2. 環境や水資源に重大な害を与えない

  3. 発電所の当事国は、原発から出る有毒な排出物を安全に処理する

●天然ガス火力発電を「グリーン」と認める条件は、

  1. 2030年代末までに建設許可を得ている

  2. 発電所から出るCO2排出量を270g/kWh以下にする

  3. 2035年末までに再エネに転換する計画を用意している

と書かれていました。
曖昧なニュアンスが含まれていますが、いくつか目に付きます。

まず、
・原発の条件③は、放射性廃棄物最終処分場のことでしょうか?
フィンランドのオンカロが最終処分場として有名ですが、日本では2020年にようやく北海道寿都町と神恵内村で調査が始まったところです。地域やその周辺自治体の住民などとの合意形成など困難が予想されます。

・ガス発の条件②は、現時点のGTCC(稼働する最新のガス発)約450g/kWhからさらに40%ほど改善する必要があります。おそらくCCSやCCUの併設も想定していると思われます。
(*後日、天然ガス火力発電の技術者に聞くと、現在CO2の排出量約350g/kWhまで効率をあげることができているとのことでした)


少なくとも、日本で流れた見出し(EUは原発をグリーンと認めた)のニュアンスとは大きく雰囲気が違い、非常に厳しい条件が提示された印象です。


今後の流れとしては、

  1. EU委員会は、カーボンニュートラル(脱炭素)社会実現のために貢献すると考えられる電源に対して投資を促進したい

  2. EU委員会「原子力発電と天然ガス火力発電には、脱炭素社会の実現に向けて一定の役割がある」

  3. 一定の条件下で、原発とガス発を「グリーン(持続可能な電源)」として認定する方針(今ココ)

  4. 2022年1月12日までに、持続可能な金融に関する専門家グループ等で協議し、その結果を欧州委員会がまとめて提出する

  5. その後、EU議会や理事会は計6ヶ月間精査するための時間が与えられる。

  6. 精査期間を終えても、双方とも反対がなかった場合は採択される。

とのことらしいです。(翻訳間違ってたらすみません)

個人的には、福島原発の廃炉現場やその周辺の帰宅困難地域に何度か入らせて頂いております。廃炉現場で働く方々を尊敬しますが、その地域に住んでいた人たちのことを考えると、原発の新増設はなかなか賛同できません。

一方で、気候変動対策のための脱炭素が急務であることも理解しております。日本でもこういう議論がもっとあって良いと思います。


最後に、福島第一原発の空中写真。
福島第一原発の敷地内には処理水を貯蔵したタンクでいっぱいになっています。処理水の海洋放出が問題になっているところです。この現状はすべての日本人が「知っておくべき」ことだと私は思います。この福島原発についてはnoteでいずれ取り上げます。

写真:資源エネルギー庁


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