辻井秋明

小説や詩を書いています! よろしくお願いします!

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最近の記事

着々

気は急くが、迷って、なんにもできずいる そのくせ、大きな夢を見て、叶うはずだと勘違い 遠くのあいつを見てみては、運のせいだと、努力せず こんなものではないのだと、言い聞かせては寝転んで 情けなくなり、泣きたくなるが、涙さえ出ず、失望す こんなもんかと諦めて、寝てはいつもの夢を見る 馬鹿にされてたアリどもが、あのキリギリスの死体持ち、表情変えずに精を出す この体中が黒くなり、息ができずに目が覚める これじゃ駄目だと飛び起きて、カメを見習い、着々と、ウサギ抜くため、歩き出す

    • 人生には区切りがあって、一つ一つが箱に入って分類されるようだ。僕の箱はまだ大学の分までしかないけど、ほとんどが空っぽで軽い。その鼠色をした箱は、スマホ片手にだらける自分しか入っていない。それはまるで僕が暮らしている部屋のミニチュアで、努力とか夢とかは全然入っていない。君のはどうなんだろうか。君の箱を勝手に覗いてみると、海とか空とか苦労とか恋愛とかがいっぱい詰まっている。密度が大きくて、そして輝いてみえる。自分の箱と比べると違いが大きすぎて嫌になる。ひたすら前に向かう君と何もし

      • 部活へ

        終礼のあと、それぞれの担当場所を掃除して放課となった。トイレ掃除の担当だったので、部活に行く前に教室に荷物を取りに戻った。教室では6人の生徒が椅子に座って話をしていた。女子が4人、男子が2人。その中には深野と同じ化学部員である神谷信也もいた。神谷がこちらに気づいて手を挙げたので、僕も手を挙げながら近づいていった。 「何の話してんの。」と僕は聞いた。 「恋バナ。」 机に肘をつき顎を手で支えた体勢で、神谷がニヤリとしながら答えた。 「聞きたい?」神谷が言う。 「聞いておいて損はな

        • 通学

           7時半。駅前のバス停で下車する。肌寒かった昨日までとは異なり、今日は快晴で一段と暑い。車道を横切り、かつての下町を感じさせる通りを抜け、神社の脇道に入り、生活道路へ進む。桜の花びらが茶色く散らばるこの道を直進し、診療所で左折すると4階立ての校舎が見える。校門をくぐって、朝練をしている生徒を横目に校舎最奥にある下駄箱まで早足で歩き、素早くスリッパに履き替えて校舎に入った。2階にある教室にたどり着くと「2年2組」の室名札をよく確認しながら引き戸を開けて入室した。何人か既に来てい

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        • 単発
          2本
        • 小説
          4本

        記事

          テレビ

           リビングにある6人用のテーブルを僕、父母、祖父母で囲い、夕食が始まった。姉が大学の近くに下宿しているため、僕の左の席は空いている。親は共働きであり僕は部活や習い事をしているので夕食の時間が合わないことが多く、そのため家族が揃うのは久しぶりのことであった。この一家団欒の機会を逃さないように4人は話してばかりいる。僕は会話に入らず食事を優先し、質問されたときには適当に相槌を打った。 「ごちそうさま。」 1人だけ夕食の済んだ僕は食器を流しに持っていき、リビングを出て祖母の部屋のテ

          帰り道

           高校からの車中、父との間に会話はない。山に落ちる太陽が空を色づけ、雲にかかるグラデーションは昼から夜へ向かっている。赤から藍に変わる色合いを見ているうちに、張り詰めた心は解放されていく。昼間の出来事を振り返って思い出にした後、少し先のことを考え始める。周りから切り離された四角い静かな空間で、自分の言葉だけが頭の中に響いている。今日の夜は何をしようか。徐々に暗くなる世界の中でぼんやりと空を見上げながら、くだらない予定を立てる。次は体から離れて現実を遠くから見つめながら、平凡な