Helen Fielding 『Bridget Jones's Diary』

★★★☆☆

 PICADOR社から出ているペーパーバックで読みました。翻訳版はソニーマガジンズの文庫本で、訳者は亀井よし子。

 いちいち説明が要らないくらい有名な作品でしょう。レネー・ゼルウィガー主演の映画を観た人も多いと思います(僕は予告篇しか観てないですけど)。こういったタイプの本はあまり読まないのですが、なんとなく読むことになりました。

 1996年刊行ということは、22年も前の作品になります。そう考えると、ずいぶん昔ですね。たしかに作中の電話が固定電話だったり、パソコンでのメールのやりとりがまだ社内のみ(個人がパソコンも携帯電話ももっていない)だったり、現代とは環境がずいぶんと違います。
 とはいえ、時代背景のせいで読むのに差し支えるほどではないと思います。30歳を過ぎた女性が恋や仕事に悩み、結婚のプレッシャーに晒されるというのは、2018年でも変わらないことです。人間というのはそうそう変化しませんからね。

 タイトルが示すとおり日記のかたちで進んでいくのかと思いきや、厳密には日記ではなく、時系列に沿ってブリジットの一年間を追った物語です。文体も日記というよりは独白といったところでしょうか。そもそもブリジットは一年間きちんと日記をつけられるような人物ではありませんから、それはまあ当然のことですね。

 文体に関してもう少しつけ加えると、かなりくだけた口語体といえます。原文だとちょいちょい主語を省略していて、一瞬、文の構造がわからなくなることもありました。複雑な構文ではないので、むずかしい文章ではないのですが、英文読書の経験不足から首を捻ることが多々ありました。ブリジットが喋ってるのを聞いている印象に近いため、会話形式に慣れていないとよくわからなくなってしまうという意味です。
 おまけにイギリス英語なので、そのあたりも微妙にアメリカ英語とはちがう感じがしました(テレビをtellyというのはたぶんイギリス英語ではないでしょうか)。
 なんとなくですけど、僕はアメリカ英語の方が読みやすいです。

 正直なところを言うと、どのあたりが人びとに受けたのか、僕にはいまひとつぴんときませんでした。たぶん、趣味性がちがいすぎるからでしょう。笑いのツボなんかもあまり噛み合いませんでした。ここは笑うところなんんだろうな、というのはわかるのですが、僕としてはあまりおもしろくない、という具合に。
 22年前に30歳だったイギリス人女性の生活がリアルに垣間見えるという点では非常に興味深かったですし、コロキアルなイギリス英語を読むのは勉強になりましたけど、そのほかの点ではあまり……というところですかね。

 一番の原因は、仮にブリジット・ジョーンズと知り合いになったとしても、仲良くなれそうにないところですね。お互いあまり共感を抱かないこと、請け合いです。
 とはいえ、実生活で接点がなさそうな人を身近に感じられるというのが小説の利点の一つなので、有意義な読書ではありました。

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