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「痴漢ゼロを目指すしゃべり場3」に向けて(メモ)

はじめに

2022年4月18日にオンラインで開催された「痴漢ゼロを目指すしゃべり場2」に参加しました。ここで学んだことをふりかえり、6月15日(水)20:00-21:00に再びオンラインで開催される「痴漢ゼロを目指すしゃべり場3」に備えるためのメモです。「痴漢ゼロを目指すしゃべり場」に参加された方や参加される予定の方をはじめ、「痴漢ゼロ」を実現したいという思いを共有する方の参考になれば嬉しいです。


1.「痴漢ゼロしゃべり場2」のふりかえり

まず4月18日に開催された「痴漢ゼロを目指すしゃべり場2」の内容について簡単にふりかえります。多くの方が貴重な経験や実践について話をされて、学ぶことがとても多い充実した1時間半でした。

[痴漢ゼロへの課題]
・痴漢行為の検挙件数は年間約3000件(迷惑防止条例違反)だが、暗数が多く実数はわからない。
・被害に遭った人の約9割が通報しない、「通報の壁」がある。
・「通報の壁」を生んでいるのは、危険な加害者と対峙する恐怖、セカンドレイプの不安、被害者や目撃者がとる対処法の周知不足、通報した被害者の負担、痴漢をはじめとする性暴力の軽視、性教育の不足など。
・痴漢を軽視する文化をどう変えるか。

[対策]
・痴漢被害に遭ったり目撃したらすぐに警察に110番通報する、電車内の非常ボタンを押す(警察や鉄道会社の方が推奨していたのが印象的でした)。
・警視庁の防犯アプリ「デジポリス」の活用。
・痴漢被害者の自己責任にしないポスターや動画、アナウンスなど。
・セカンドレイプ防止の研修を警察や鉄道会社、学校などで行う。
・性教育の充実(プライベートゾーンや同意など)。
・通報する被害者の負担を減らす(警察での調書作成時間の短縮、女性の被害者には女性警察官が取り調べ、学校で公欠扱いにするなど)。
・被害者でも加害者でもない「第三者」の介入が鍵。第三者介入プログラム(5D)や動画「行動する傍観者#ActiveBystander」の紹介。

[紹介された事例や参考となる動画など]
・志水恵美さんの漫画「痴漢を捕まえられなかった話」

被害者の恐怖や葛藤がとてもよく描かれていて、通報できないのは決して被害者のせいではないと再認識させられます。私の頭に浮かんだのは「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」という自殺対策ポスターに使われた言葉でした。痴漢被害者に対しても「社会の支え」が全く足りていないのです。

・イギリスの鉄道警察の動画

通報してほしい、という警察からの強いメッセージが伝わります。日本でもこうあってほしいです。また日本では痴漢は現行犯逮捕でなければという思い込みがまだ強いですが、通報を元にちゃんと捜査して加害者が逮捕されるシーンを描いているのがいいと思いました。

・「行動する傍観者#ActiveBystander」の動画

電車内での痴漢に限らない性暴力から視線を逸らすのではなく、私たちにできることを具体的に教えてくれます。ぜひ多くの人、特にこれまで自分が当事者だとは思っていなかった男性に見てほしい動画です。



2.「痴漢ゼロ」社会に向けて共有すべき認識

「痴漢ゼロを目指すしゃべり場2」の後、アルテイシアさんがこんなツイートをされていました。

子どもたちが「昔は電車でめっちゃ痴漢にあったんだよね?信じられない」と言える未来、私たちの世代で実現したいと心から思いました。
ここでは具体的な痴漢対策を考える前に共有すべき認識についてメモしておきます。

・痴漢は性暴力であり、性差別の問題である。
痴漢をはじめとする性暴力は長い間軽視され、「男の娯楽」とされた時代までありました。被害者が圧倒的に女性に偏っているからこそ男性中心の社会の中でその被害は軽視され本質的な対策もとられませんでした。痴漢問題の根本には女性差別がある、ということに社会が正面から向き合わなければ本気の痴漢対策はできないでしょう。

・痴漢は性暴力なのだから、暴力事件と同じ対処を当たり前に。
もし同じ電車内で複数の人が後遺症が残るほどの暴力を受けたら、連続暴行事件としてニュースになるでしょう。もちろん周りの目撃者によってすぐに110番通報され、加害者が逃げても警察はちゃんと証拠を集めて捜査をして、被害者が責められることはありません。本来は痴漢でも同じように対処されるべきだと思います。「痴漢は犯罪です」などとわざわざ掲示しなけれないけない社会が異常なのです。

・「女性専用車両」は本質的な痴漢対策ではない。
女性専用車両は痴漢被害に遭う女性のための緊急避難所として作られました。それは「仮設住宅」のようなもので、被災直後は確かに必要ですが、被災者からすれば不便な生活には違いなく本質的な対策がとられればできるだけ早くなくなった方がいいものです。仮設住宅を作るだけで災害対策にならないのと同様に、本質的な対策を怠って女性専用車両を作って被害を恐れる女性を押し込めるだけでは痴漢を放置しているのと変わりません。
また「女性専用車両は女性優遇(男性差別)」と言う声が一部にありますが、それは「被災者だけ仮設住宅に住めるなんてずるい」というようなもので、被害に遭っているという前提を無視したものです。加えて、もし男性専用車両を作ったとしても男性の痴漢被害を防ぐことはできません。

・痴漢冤罪は被害者ではなく、捜査機関や裁判所の責任。
痴漢対策の話になると必ず「痴漢冤罪」を心配する人が現れ、被害を訴える人を責めるということが起こっていますが、完全に見当違いです。冤罪の主な原因は、もちろん被害者ではなく、杜撰な捜査です。痴漢対策と痴漢冤罪対策は実はほぼ同じで、まともな捜査が行われて痴漢をした加害者が間違いなく捕まることのはずです。痴漢冤罪が心配な人は、まず被害者を責めるセカンドレイプ(二次加害)や疑われたら逃げるしかないといったデマを信じるのをやめて、根本的な原因である痴漢をなくすよう訴えていきましょう。



3.本質的な痴漢対策とは

では本質的な痴漢対策とはどのようなものか。そのポイントとなりそうなものを書いておきます。

・性教育の充実させる。
性暴力が軽視される社会を変えるためには包括的な性教育が必要です。子どもたちを加害者にも被害者にもしないために、プライベートゾーンや同意は特に重要です。また警察官や教師、メディア関係者が性教育を受けることでセカンドレイプの防止にもつながるでしょう。

・被害者を社会としてサポートする。
警察での取り調べ、職場や学校での被害者対応を見直すことは急務でしょう。

・警察や鉄道会社から通報の呼びかけ。

数日前に素晴らしい報告がありました。「痴漢に遭ったら、見たら迷わず110番!」というポスターは全国のすべての電車内に貼るべきだと思います。「通報の壁」を壊す大きな一歩です。
今後の課題として、通報が増えることで当然「痴漢件数」が増えます。これは実際の痴漢被害が増えたわけではなく、これまで通報されず暗数になっていたものが明らかになったということです。しかしこれを理解しない人が見かけの「痴漢件数」の増加だけを見て見当違いの批判をすることがないよう、「痴漢認知(通報)件数」の増加を目指すという目標を警察や鉄道会社がはっきりと示す必要があると思います。

・条例や法の改正。
現在、痴漢は迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪になります。迷惑防止条例は地域によって対応がバラバラな上罰則が軽く、どのような場合に強制わいせつ罪になるのかという基準も曖昧です。痴漢被害の実態にあった法律に改正すべきではないでしょうか。

・新たな被害者を生まないために、加害者に更生プログラムを義務付ける。
この点は斉藤章佳さんの『男が痴漢になる理由』が参考になると思います。

・男性の性被害者について。
男性の性被害者は「誰にも相談できない」が7割います。これは「男なのに」という偏見が邪魔をする面もあり、痴漢をはじめとする性暴力は男性でも被害に遭うし、誰にとっても重大な被害だという性教育が男性の性被害者も救うことになると思っています。この点は太田啓子さん『これからの男の子たちへ』が参考になると思います。



4.おわりに

いろいろと書いてきましたが、とにかく痴漢ゼロしゃべり場3をとても楽しみにしています。痴漢をはじめとする性暴力のない社会を。

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