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【メンバーインタビュー・後編】山口竜さん その方の人生はまだ続く。どうして知らなかったんだろう

今回は、前回ご紹介した山口竜さん・前編の続きです。

前編は、山口さんの幼少期から福祉業界にキャリアチェンジするまでをお届けしました。本当に素敵な方に入社してもらったと思ってます。ここまで徳を積んでる人が他にいるのか?ってくらい、記事を書きながら感動してます。
前編はこちら!!



福祉で学ぶことが多かった。学校で何を学んできたんだろう?

――新聞配達とピザ屋さんで優しさをもらえたから福祉を選んだってすごくイメージが湧いたんですけど、福祉以外に「この仕事いいかもな」って思った仕事はありましたか?

山口
なかったですね。一番最初から福祉を選んだんですよ。当時は福祉ってかわいそうで、できない人たちを助ける仕事ってイメージだったんですけど、本当に学ぶことの方が多かったですね。

まずこういった障がいを持った人たちがたくさんいるんだ。で、支援を受けて生活をする必要があるんだって。そこに気づかされた、学校で何を学んできたんだろうって。ちょっとした支援があると社会には出ていける、買い物もできる。一緒に出かけるとやっぱ周りから異様な目で見られるんですけど、全然自分とっては異様でもなんでもなくて、むしろ日常。

80人障がいを持った方が生活している東京都の施設で働いていて、そこが入居待ちで入ってこれない人たちがたくさんいる。で、その後ですよね。障がい福祉だけでなくてベネッセで高齢福祉を学んだのは。

(気がついたかのように)知らないことを学びたいのかもしれない。ずっと知らないことを学んで、仕事にしてこれたんで、障がい福祉やって、高齢福祉やって介護のお仕事やって。人が老いていく死に向かってというところも経験したし、介護も知らなかったことも多いし学べて良かったなと。

(当時を振り返り)「知らないことを学びたい」欲求を伝えてくれた山口さん

ベネッセで障がい者を採用する部門の募集があって「ここやりたい」と思って希望しました。今までの介護とはまた違って障がいを持った方を採用していく仕事でした。

そこでまずやったことは、社内にどれぐらいの障がいのレベルの方がいて、どれくらい作業ができているのかていうのを分析しましたね。

ベネッセホールディングス全体だと障がい者を300人ぐらい当時雇用していて、自分のいたベネッセスタイルケアで160人ぐらいいたんです。全国に300か所ぐらい高齢者施設があってそこに大体1人ずつ配置されて、そういった高齢者施設に配置して清掃とかうリネンの交換やってもらっているっていうのがある。

特例子会社とかベネッセみたいな会社ってレベルが高い人たちがたくさん来るんだけれど、10%ぐらいの人たちが辞めていくんですよ。離職率が高い訳ではないんですが、30人辞めるのも相当労力いるんですよ。「これができる・できない」「できないことが◯日までにできないと、このまま雇用するのは難しいですね」みたいな話を何度も繰り返していく必要があって、雇ったはいいけど、来てもらったら困るっていう施設も出てくるんですよ。まだ障がい者雇用とか法定雇用率とかが浸透してなかったので、なんで障がい者雇用やるの?とか、押し付けられた感も出てくる。

障がい者は評価されないとできてたこともできなくなっていくんですよ。なのでその評価の部分を全部調査して、課題のある施設・人たちが相当数あって。このままだとお互い良くないなと思って。

しかも今後雇用率が増えていく中で、このままのやり方だと絶対無理だなっていうのがあったので、早速それをベネッセホールディングス全体に今抱えてる課題を報告しました。スワンベーカリー方式のパンを焼いていくということを提案して、焼きたてのパンを高齢者施設の入居者さんに食べてもらおうと。

だけど、当時提供してるパンは本当に原価が低くて、焼きたてのパンは美味しいかもしれないけどこれを提供するとなると今の入居費だけでは無理だと。もちろんプラスアルファで焼きたてのパンを食べれる場所を作ってもいいかもしれないけれど、パン屋さん一箇所作っても雇用できる障がい者って10人ぐらいなんですよ。障がい者雇用できるまでにはならないよねって。当時の特例子会社の社長と、その後作るベネッセソシアスっていう会社の社長と私と3人で「じゃあ何をやる?」ってところからもう1回話して。

で、介護施設には大量の洗濯があるぞと。洗濯物を洗って、乾燥させて畳んでお返しするのを職員がやっていることがわかった。洗濯があったので、直接利用者さんと対応する時間も減って。これを引き受けられないかなっていうことで考えて、洗濯センターを作って障がい者を40人雇用できた。これがうまくいったんですよね、。その後2箇所作ったので、120人は雇用さんできるようになった。障がいの研修を受けた知識のある職員を配置するから 安定的に障がい者の支援ができて離職率もほぼ0になりましたね

目の前に支援員がいて、いつも評価できるようになったのが一番よかった。素直な人ばっかりなので、評価にしっかり反応してくれる。逆に評価がないと素直に悪くなっていくんですね。シンプルですよ。ちゃんとできたことを認めてもらえたかどうか、そこが1番大事。私たちも一緒ですよね。自分も褒めてもらもらうと嬉しいしね。

利用者がどう自分らしく自立できるのか?を追求している山口さん

その方の人生はまだ続く。どうして知らなかったんだろう

――ありがとうございます。20代の前半から福祉の業界に携わって、全部のカテゴリーをご経験されたってことですか?

山口
そうね。障がいの重い方から就職できる方の支援まで。

次のステップに進むきっかけがあってね。
お弁当代を月一で回収するんですけど、親からもらったお金を全部使っちゃった人がいて。1回注意すれば直るのが普通だけれどその方は続くんですよね。やっぱり食欲が抑えられないんですよ。で、親のお金までだったらね、お家でちゃんと指導してください、で終わるかもしれないけど、職員のお金を取ってしまったことがあったんですよ。このままだと盗難事件なので、これは本当にあのまずいよねってことで、結果やめてもらうって形で。

どこかに相談もしくは病院に通院してるのかなて気になって聞いたんだけれど、親もそんなつもりはないし厳しくするだけ。辞めてもらう形になるんですけどその先がすごく心配になったんですよ。本人はその状態を変えられないし、今後も可能性があると。何か支援できないかなと思って、そこで初めて辞めた人たちの支援って必要だなと思って、結果ベネッセをやめて、B型の支援をしている医療法人に転職するんですよね。その医療法人なのでドクターもいて精神家の先生もいて、医療面からこういった人たちの支援ってできるんだろうなと思って。

そこで「プラダー・ウィリ症候群」っていう難病指定の病気を知ったんですよ。この病気は知的障がいを持ってると人もかなり多いんですけど、プラダー・ウィリ症候群の方たち接することができて、もしかしたらベネッセにいた人がそうかもと。これ血液検査でわかるんですよ。血液検査で分かるのにベネッセにいた時にどうして進めなかったんだろうと。そのままベネッセにいたらこの病気を知らずに、問題があるから辞めてもらうってことを繰り返していかもしれない。

その方の人生はまだ続くわけじゃないですか。病気を抱えたまま厳しく指導されると他害行為とか自傷行為につながっていく可能性もあるなって。

その人の価値は1/15なのか?

――なるほどですね。IGNITIONの話になっちゃうんですけど、僕と最初に会った時に既にアクアポニックスのこと知ってたじゃないですか?アクアポニックスを調べたのも同じようなきっかけがあったんですか?

山口
やっぱりB型の工賃が低かったんですよね。ベネッセの時は最低賃金なので、150,000円ぐらいもらえるんです。けど、B型の方々は10,000円ももらえてなかった。価値的には1/15なのか?って。そうじゃないと思ったんです。なので、工賃を上げる方法ってなにかないかなって探してたんです。

障がいが重い方々は年金も高くなるので、年金をもらいながらB型に通って自立するという方法もあるんだけど、10,000円とか15,000円ぐらいだと自立まではほど遠いんですよね。という時にアクアポニックスいいなと。

――アクアポニックスは最初何で知ったんですか?

山口
ニュースでしたね。障がい者施設でも活用されていますってことをニュースで見ました。農福連携って言葉も議題に上がることが多くて、そこの利用者さんはやりがいも持てて、ある程度の工賃ももらえてって話を聞いてましたね。そういった事業者さんが時々ニュースになるんですよ。

例えば北海道のじゃがいもやってるところとか。でもじゃがいもって北海道みたいな広い土地がないとできないよねってことになるんですよね。あとはトマトを作ってトマトジュースを作っている事業者さんは高い工賃を出してるなって。でもこれも知識と経験がないとだめだし、しかもジュース作るって、大手企業さんと対抗できるのか?っていったらそれも難しいだろうなって。加工までやるとしたら工場も販売ルートも作らないといけないし。

水耕栽培やってるところも1億円ぐらいのね設備投資が必要で、葉物野菜も単価も低くて、これ何年で償却できんだろうって。燃料費も上がってるし、本当に工賃に反映できるのかなって調べていくとやっぱできてなかったんですよね。というところにちょうどアクアポニックスの情報が入ってきてね。

私たちは考え続けるために生まれてきたのかもしれない

――山口さんって福祉に関わる色んなお仕事されて、何かしら業界の構造に疑問を感じてキャリアチェンジされてるじゃないですか。福祉の全体の構造を良くするためのキーになるポイントって見えてたりするんですか?

山口
これねー。ずっとそれを考えてるような気がしますねー。もしかしたら何も ないかもしれない。それを考え続けるために自分たちが生まれてきてんのかもしれない気がしますよね。それを考え続けることが大事なのかなっていう気がします。

世の中、完璧なものって存在しないじゃないですか。どうすればもっと良くなるとか、これでいいのかっていうのをずっと考え続けるのがいいのかもしれないと思いますね。本当にできたの?それでいいの?思い描いてたものと違うよね?だったら考え続けなって自分に言い聞かせてる気がします

――障がいを持たれた人が100人いればサポートの仕方は100通りあって、「工賃」という観点で見た時に、アクアポニックスと高麗人参で解決できるんじゃないか?って仮説のもとでIGNITIONに入社してくれたって訳なんですね。仮にアクアポニックスと高麗人参で工賃の問題を解決したとしても、また問題が出てきそうですよね!

山口
うん、絶対出てくると思う。
作業所に通って、もらった工賃が全部お父さんのお酒代になるって子もいるんですよ。そういう扱いを受けてる人たちもいるし本当に工賃を上げるだけを目的にしていいのかなって思いますよね。その人が自立した生活ができるために何ができるっていうところも含め支援していく必要はあるのかなと。

支援学校を18歳で卒業して、50年間勤めた会社を辞めてB型に通ってる70歳の方もいるんですけど、楽しいです、働きたいって人もいるんです。働くってやっぱり社会と繋がってるってところもあって、彼らも自分たちもそうですけど、認められた感が強いですよね。社会に求められている仕事をやるって大事ですよね。

――今日のお話で自分の福祉に対しての理解が深まりました。まさか自分たち(IGNITION)が福祉の業界に参入するとは全く思ってなくて、山口さんがいらっしゃるから踏み込んだって部分はありますけど、全く福祉の業界に接してこなかったので、どこまで突っ込んでいいのか分からなくなる時があるんですよね。

山口
そうですよね。大きいですよね、会社の方針が変わったので。
福祉にはどんどん踏み込んだ方がいいと思いますよ。障がいっていつでも隣り合わせなんですよね。天井の電球変えようと思って転落して障がい持つこともあるし、病気で脳梗塞になることもあるし、一生障がいゼロで生きていく方が難しいのかなっていうぐらい身近にあると思いますよ。

できたことができなくなるってスポーツ選手だと、今まで100mこのスピードで走れてたのに走れなくなる、大会出ると優勝してたけど優勝できなくなる気持ちと似てるんですよね。その時どう感じるか、受け入れるのか受け入れられないのか。スポーツ人生から行くとそこで障がいを持ったってことと同じですよね。

――なるほど。僕たちがよく言うキャリアが閉ざされたっていうのも色んな意味で障がいですもんね。

山口
そうね。常に起きるべきことだと心に持ってた方がいいよね。僕たちもいでも障がいを持つだろうし。

長く続けていくためにはしっかりと収益を確保していく必要があるんですよね。その仕組みをちゃんと作んなきゃと思ってます。1回きりでは何もできないので。なくなっていく事業所もありますからね、やったことでなんかぬか喜びじゃないですけど続ける必要があるかなと思いますね。会社経営ってそういうもんじゃないですか。学んだことを生かして続けられるし作っていくとは大事かなと思いますよね。


取材後記(大坂)

まさか、元アスリートの自分たちが福祉業界に参入するとは全く思ってもみませんでした。僕たちは福祉の知識なんて全く持ってないけど、
IGNITION→アクアポニックスと高麗人参のノウハウを持ってる
山口さん →福祉業界のノウハウを持ってる
ので、二つのノウハウを合わせることで、「障がい者の工賃問題を解決できる」可能性があるのに、やらない理由なんてないですよね。

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