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デンマークが全面規制解除に移行できる理由、スウェーデンがそうできない理由

(写真は、スウェーデンのロンマから撮影したデンマークにつながる橋Øresundと夕陽)

 隣国デンマークまで、ここスウェーデンのルンドから電車でわずか30分ほど。かつてはルンドもデンマーク領だったのですが、海が隔てる両国にはコロナ対策ではかなりの違いがあります。

 規制内容はともかく、デンマークは感染者数が伸びているのに既に規制全面解除へ踏み出しました。スウェーデンはまだその時期ではないと判断、いましばらく規制が続きそうです。

 この違いはどこから来るのか?医療体制の充実度、学校制度の違いなど社会システム上の違いもさることながら、コロナ規制を解除できるかどうかに直接関係する部分だけ見ても、そこに大きな違いがあるとスウェーデンの感染症の専門家や新聞が報道しています。

実は、両国とも感染者数の推移には大きな違いはありません。デンマークでも感染者は未だ急進中・・・。

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(図は両国の感染者数の推移、デンマーク(赤)とスウェーデン(青)Dagens Nyheter,2022/2/2)

 (デンマークは最初から検査を徹底しているのでスウェーデンより感染者数が多く見えますが、実際にはスウェーデンでも検査を徹底していたら最初からデンマークより多かったかもしれませんね。)

では、なぜデンマークは規制解除に踏み出すことができるのか?それは・・・。

 第1に検査数の圧倒的な違い。デンマークではとにかく検査検査、そして徹底した感染追跡を行うという点で世界のリーダー格になっています。

 一方、スウェーデンでは検査は希望者、医師が必要と判断したものなど限られており、感染追跡も行っていません。小中学校で児童生徒が罹患した時も報告は親の任意、どこで誰が感染しているのか、濃厚接触の心配をすべきか否か、情報がなかなか個人に伝わってきません。となれば、どれくらいの感染者が今いるのかを徹底して把握できるデンマークでは判断材料もしっかりしているので見通しを立てることが可能ですが、スウェーデンでは実際は今以上の感染者がいてもわからないわけで、はっきりした方針を出すには根拠がいまいち。

 第2に、ワクチン接種の進展度の違いです。

 スウェーデンでは3回目のワクチン接種率が45%程度、デンマークではそろそろ6割に達する見込み。ワクチン接種率の高さがデンマークのIVA(集中治療室)利用率や死者数の低さにつながっています。確かにスウェーデンでも同じで、ワクチン接種が進んだことで感染者数が増えている割にはIVA利用者は非常に少ないし、死者数も抑えられています。それでもやはり、ワクチン接種がすでに5割を超え5歳から11歳までのこどもたちへの接種も進むデンマークと、まだ5割に届かないうえに子供たちへの接種を原則行わないと宣言するスウェーデンでは規制解除に時間差が生じるのも無理はありません。

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(図は「デンマーク(赤)とスウェーデン(青)の3回目のワクチン接種率の推移、Dagens Nyheter,2022/2/2)

 この比較は、日本のコロナ対策を考える際に大事な視点を提供してくれていると思います。

 日本の検査体制はスウェーデンにさえも遅れをとっています。忘れもしません。「検査をすると感染者がわかってしまうので、病床が逼迫する。だから検査するな」という、馬鹿馬鹿しい主張がテレビでネットでも、政治家の口からも流されていたあの頃。どう考えても検査ー追跡ー隔離でしょう。と考える自分の方が異常に思えるほど、検査するな論が罷り通っていたあの頃。

 ワクチン接種にしても、3回目までのインターバルを平気で8ヶ月なんて言ってしまう日本、欧州ではすでに5ヶ月、4ヶ月、そして今は3ヶ月が主流なのに。

 コロナ対策の検証作業が公的機関で、しかも独立して忖度なしに行われる欧州の国々、日本は未だに「コロナは風邪」論がまことしやかに語られる・・・不安だらけです。

 

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